富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

香港街道地方指南

農暦正月二十日。小雨残り朝の気温は摂氏13.8度と随分下がる。昨日やつと香港街道地方指南の2019年版を入手。

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昔は年末のうちに次年度版発行されてゐたが、それが年明けとなり1月下旬となり今回はついに2月も、それも春節明け。かつては「これがないと」で配達のスタッフや運転手など必需品だつたが地図がネット化され更に須磨帆アプリでGoogle Mapなどお手軽な時代となり、この地図本の需要がいつたいどれだけあるか。今ではアタシのやうな蒐集家アイテムかも。それにしても集合住宅の一軒/\から精緻なこと、地図としての色彩も美しく毎年新しい宅地や道路、公共施設などできて、この地図本は進化する。ちなみに2019年度版には高速鉄道香港西九龍站、港珠澳大橋香港口岸、中環湾仔隧道と蓮塘口岸などアップデート。

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昔の地図と比べるのが面白いが西九龍站など30年前は佐敦碼頭手前の海の中で比べやうもない。

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さう思ふと香港空港東側の港珠澳大橋香港口岸どころか中環湾仔隧道の中環側出入口とて海の中なのだつた。晩に自家製croquetteと書くと資生堂パーラーみたいだがコロッケだが、それをいくつも頬張り赤葡萄酒飲む。

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Ch. Mouton CadetのVin de tableは日本で1,650円くらゐでワイン高値の香港でもほゞ同額でありがたい。本日、半蔵門の芝居小屋での天皇在位三十年記念式典の中継をネットで見る。

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晋三の式辞は早口で着座も起立と礼もだらしない。式辞読み終はつての所作の粗さに言葉もなし。国歌「君が代」斉唱は当然、天皇皇后は歌はない。謳はれるお立場。陛下の表情はどこか恍惚、皇后は表情にあふれ相手の言葉に厳しさや優しさが伺へる。晋三式辞の淡泊で緊張もせぬ開き直りに対して大島衆議院議長の祝辞は緊張の極み。文節の切り方が変。「国と国、民のため」とか「苦難の道のり、をたどって」とか。読み終りで二月を十二月と読む。途中「いやすかで」と聞こえた意味不明、これは後になつてテキストを読んだら「幾久しく心穏やかで」のあたり。気のない晋三、緊張の大島衆院議長に続く伊達参院議長の祝辞は三人の中ではいちばん普通に収まつてはゐるが田沢湖の観光船で録音されてゐる観光案内のテープのやう。天皇御製、御歌の朗読は波乃久里子。あの低音の少し擦れた声はかうした朗読に合ふかしら。着物も着付けが後ろ襟が何だかとんでもなく開いてゐるのが気になる。この朗読には大竹しのぶを推したかつた。この式典の極みは三浦大知君による御製で皇后さま作曲の琉歌「歌声の響」の歌唱。


千住兄のピアノで妹のヴァイオリン伴奏。これを聴く皇后陛下の表情、陛下への語らひ、終はつた時の拍手……沖縄のことを思ふ両陛下。

本日は奇しくも沖縄で在日米軍基地巡る県民投票。両陛下退場でも晋三ら三権の長の前はさらりと通りすぎ舞台袖の久里子、大知らのところでは親しげにお言葉かけ振り返り客席にお礼。

「ついに日本文学の終焉」と言つたら大げさかしら。1938年に16歳で!コロンビア大学文学部入学し中国語、漢字に魅了されるが18歳のときにアーサー=ウェイリー訳の源氏から日本文学へ。ウェイリーは終ぞ日本の地を踏まなかつたがキーン先生は太平洋先生で日本人捕虜の通訳として従軍、戦後はコロンビア大学に復学し修士、哈佛を経て渡英し剣橋へ。日本に来たのは昭和28年で30余歳。京大大学院で永井道雄と出会ふ。荷風から谷崎、川端、三島、大江、安部公房、夷斎先生そして吉田健一と戦後の誰彼の半生にもキーン先生は登場するから、どこか親しみすら感じる。東日本大震災のあと日本国籍取得して浄瑠璃三味線の上原誠己を養子にしての老後。

対談もよくしたが、最晩年はいつも養子になった誠己さんが隣に座っていて、対談をなめらかにしていた。誠己さんは若くて、一見キーンさんの孫のようにも感じられたが、優しく、よく気がつき、キーンさんの隅々まで気を遣っていた。キーンさんが誠己さんを心から愛していることが、言葉や態度に表れていて、キーンさんがこの人の故郷に最後の棲家(すみか)を定め、日本人としての国籍を取ったこともうなずけた。

と寂聴先生。寂聴さん「私を呼びに来る日が待ち遠しい」 ドナルド・キーンさん死去でコメント - 毎日新聞

国立公文書館で来年度から首相の口述収集 - 毎日新聞 https://t.co/b6J8HjcyqF つまり晋三の口述は残さない、と。