富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

映画『怪物』クィアをめぐる批判と是枝監督の応答

辰年二月初十。気温摂氏▲0.4/12.4度。晴。

荻上チキのラヂオ番組(TBS)で「技能実習制度」を政府が「育成就労制度」に見直す方針について(ゲストは鈴木絵里子さんだつたか)。この待遇条件「改善」につき、その一方で納税や社会保険料等の滞納があつた場合に定住/永住権の取消しなど規制強化もあること(当然だが日本人に同じ滞納があつても国外退去にはならない)。社会保険料の徴収については地方自治体がそのデータ管理してゐるが今後は外国籍については自治体のそのデータを入管が共有できるといふことに懸念もあり。政府は自民党の裏金には甘く外国籍には納税など極めて厳しい対処、と荻上さんの(だったか)コメント。

朝日新聞デジタル版で突然、是枝裕和監督の映画〈怪物〉に関しての長い対談が掲載された(15日)。あの映画の少年の描き方について“Queer”とか“LGBTQ”に関する表現や理解に問題があるといふ批評があり是枝監督がそれに応じての鼎談になつたのださう。2度ほどこの対談を読んでみたが何だかよくわからない。アタシは是枝監督といへば『誰も知らない』や『万引き家族』でも少年へのまなざし、そのビジュアルも含め描き方にかなり特質が感じられるから『怪物』も見てゐてストーリーが展開するなかで、その特質がちらり/\と性質を見せるなかで「あゝやはりこれか」と思つた程度だつた。どこが問題点なのか。

映画「怪物」のあらすじと公開までの経緯:朝日新聞

カンヌでの記者会見の席上「日本では性的少数者を扱つた作品は少ないと思ふが」という記者からの問ひかけ(この映画はLGBTQの映画である前提)に対して「テーマは他にもあると伝えるため」に「特化してゐない」と是枝監督がコメントしたことも物議をかもす契機となつたさう。また上映公開までメディアがそのクィア的なストーリーに言及することに所謂「ネタバレ」懸念する事務所側から箝口令が敷かれてゐた状況(なのださう)。

『怪物』は加害側の気づきに重きを置いているのもあって、クィアが受けている/過去受けていたであろう加害描写がいくつもあります。そうした映画を前情報なく観られること自体がマジョリティー側であるし、特権ではないでしょうか。まさに「今」、同様のアグレッション(無意識に行われた攻撃のこと)を受けている子ども──あるいは過去強烈な加害を受けてトラウマを抱えながらも生き残ってきたクィアが、何の情報も無く映画館で『怪物』を観たらフラッシュバックを起こすかもしれませんし、強い言い方をすると命の危険もあります。これは日本映画全体の問題として、観た者の痛みがあまりに軽んじられているように思います。自死や性暴力のシーンがあるのであれば、事前にアナウンスするべきです。送り手は受け手が必要な情報によって観るかどうかを選べて、受け取る準備ができるようにしてほしい。(坪井里緒)

なるほど(是枝監督も反省的に理解を示してゐるが)かういふ点に配慮が欠けてゐたといふことになる。たゞアタシの理解は、あのくらゐの年齢の子どもたちは「性に関心が目覚める」それが以前なら「異性に」とされてゐたわけだけれど、その時期は相手が異性だらうが同性だらうが子どもから大人になる段階で自分の心や身体の異変が何らかの形でアンバランスな感情や行為に表れ始めるわけだから、それをあまり好奇なる大人のまなざしでとやかくいふ必要もない、さらにいへば大人がそれを映画とか作品にすることすら危ふいことなのではないか、といふこと。それが是枝監督も二人の対談相手を前に

ゲイという具体的な言葉でまだ名付けられていない子どもたちとして描くことは坂元さん(脚本)とも話していた。まだ自分でも名付けられないからこそ「怪物」という言葉が外から入ってきてしまうことにしようと。

と何だかネタバレ以上に「性根バレ」とでもいはうかコメントもしてゐて、だからもうこの対談じたい何だかわからなくなつてしまつた。

映画を撮ることが社会参加である、という意識が、自分も含めて日本ではまだ希薄だと思います。そこも今後、変えていかないといけないところかもしれないですね。(是枝)

一度カンヌにいる間に僕自身は何かしら声明を出すべきだと思って自分の考えを文章にまとめていたんですが、結局自分の判断で引っ込めました。公開から長い時間が経ってしまいましたが、自分が何を考えたのかということはまとめて表に出したいと思っていたので、こういう機会をいただけて、改めてありがとうございました。(是枝)

朝日新聞もいつたいどういふ経緯でこの対談を編集もせず、そのまゝデジタル版に掲載したのかしら。ちなみにこの記事の「構成」はこの鼎談にも出てゐる映画文筆家の児玉美月さん自身である……となると朝日新聞は議論の場の提供だけなのかしら。

Re:Ron(リロン)- 朝日新聞社の言論サイト

何だかいろんなことがよくわからない時代になつてきた。「よくわからない」といへば河野太郎大臣おとゞがライドシェア推進の立場での発言で「日本国民の移動の自由が制限されている地域」だとか言つてゐた。これって「公共交通機関が十分ではない地域」のことか?それを「国民の移動の自由が制限」って表現できる、ってやはり小泉進次郎並みにかなり特異なOS搭載なのかしら。