富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Krystian Zimerman Recital fortepianowy

癸卯年十月廿廿四日。気温摂氏5.9/15.0度。雨(4mm)のち晴。明日からのG7関連末端会合で市中に警官、パトカー多し。夕方(といつても真っ暗だが)県立図書館に還書に出向いたら図書館のロビーで中学同級のHさんがご亭主と一緒にゐて「今日はツィメルマン?」と声をかけられた。今は龍ヶ崎にお住まひで今日はご尊父の墓参りを兼ねコンサートに来られたのださう。

2年前の11月以来の水戸芸術館でのツィメルマン。あの時は座席数半減だつたので今日の満席がやたら混雑して見える六百余席。

ショパン夜想曲 第2番 変ホ長調 作品9の2 
     夜想曲 第5番 嬰へ長調 作品15の2 
     夜想曲 第16番 変ホ長調 作品55の2 
     夜想曲 第18番 ホ長調 作品62の2 
ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 作品35 〈葬送〉
ドビュッシー:版画              
シマノフスキポーランド民謡の主題による変奏曲 作品10

(アンコール)ラフマニノフ:10の前奏曲 第4番 ニ長調 作品23の4

ショパンノクターンは2番から始まつても16番、18番と進むにつれ夜に誰かを思ふやうな曲調から夜の静寂のなかっでの深慮へとなる。そしてピアノソナタ2番での〈葬送〉はツィメルマンがこれを選曲するときの状況を考へざるを得ない。最初にそれを認識したのは(久が原T君から報せもらつたのだが)2006年6月(サントリーホール)のリサイタルでツィメルマンは演奏途中に「日本語で」日本の海外派兵に反対の意を表明の反戦スピーチをした由。「良心を守る日本の友のために」演奏された葬送ソナタの名演だったといふ。これを報せてくれた久が原T君が「こうしたメッセージの籠もる演奏を聴いて真に拍手喝采する資格ある日本人がどれほどいるか」と。香港でもツィメルマンはその時は米国によるポーランドへのミサイル防衛システム配置の時だつたか〈葬送〉を選んでゐる。今回は当然、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルパレスチナ攻撃など不穏な世界でツィメルマンの今日の彼らしくっもないかなり感情的な、激しい情緒表現はさうした時代にあつて、とても静かに安定した表現などしてゐられないのだらう。「感情的にならずにはゐられない」といふ状況でツィメルマンらしい「生真面目な」ドビュッシー(版画)シマノフスキまで続く。なんて熱情的なツィメルマン。ご本人も自分のメッセージは伝へきつた!と言はんばかりの表情。かうしたピアノ演奏会に、この水戸芸術館のホールは大きさ、距離感ともに最適だらう。ピアノ独奏にこのホールの音響も最良といふ人もゐるがアタシはそれには疑問あり。低音に比べ高音が響きすぎて音も硬い。低音の音が一音ずつ認識できないのはツィメルマンの奏法もあるのかステージ上でかなり奥にピアノ配置されてゐることも影響があるのか。

施設情報|コンサートホール|水戸芸術館

このホールで最悪の設計だと思へる中央の大理石柱の影響もあるのかは知らないが一度もしできることならピアノの位置を変えて音響の変化を確かめてみたい。それにしても何度訪れても慣れない三本の柱に支配された不思議な客席配置なのだ。