富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

甘耀明『真の人間になる』(白水社)

癸卯年七月廿七日。気温摂氏24.5/30.8度。晴。掃墓。我覺得這對於墳墓來說可能有點太花哨了,但我種了一棵藍色丹參。我種苗的地方陽光太強,它開始焦枯枯萎,所以我趕緊把它移到稍微陰涼的地方。 然後他就復活了。藍花盛開。

夕方、水戸八幡宮。出入りの某所に陽暦の七夕で飾られた笹にあつた願ひ事の短冊を、何うせ陽暦で七夕が終はれば処分してしまふと思つたので譲り受け旧暦の七夕が済んだらどこか神社に、と思つてゐたが遅れてしまひ八幡宮のお札の返納所に預かつてゐたゞく。散歩の道すがらの馴染みの猫を愛でる。陋宅の近所にインド/ネパールのレストラン(JIYA)が先月末に開業してゐて今晩はそちらへ(食べログ)。おそらくネパール系。お酒もいろ/\充実で給仕のお作法、礼儀には頭が下がる。当面休みもないのださう。

真の人間になる(上) (エクス・リブリス) 真の人間になる(下) (エクス・リブリス)

甘耀明『真の人間になる』(上)(下)白水社)読了。1940年代の台湾。日本は戦争への時代を進むなか花蓮に近い山中に暮らすブヌン族の若者の物語。花蓮の中学で野球を始め甲子園(春の選抜)への出場権を得るが太平洋戦争で甲子園への夢も途絶える。主人公の少年・ハルムトは同じ部族で幼い頃から野球も一緒にしてきたハイヌナンは幼馴染みであるばかりか恋焦がれる相手でもあつて、そのハイヌナンは米軍の空襲で命を失ひ、ハルムトは絶望のなか戦後を迎へ三叉山事件に遭遇する。

忘れられた歴史、標高3,300mの湖畔に眠る無縁塚 : Taiwan Today

少年を主人公にした物語で、マルタンデュガール『チボー家の人々』のジャックだとか、サリンジャーの『キャッチャーインザライ』のホールデンのやうな、美しい夢と希望をもちながら何か大きな力で挫折を余儀なくされる、その悲劇に感動することは嫌らしいのかもしれない。それでもやはり彼らが強く印象に残るから。その時代を過ぎて薄ぼんやりと年を経ることは老醜でしかないのかも。ハルムトは子や孫に自分の半生を正確に物語ること、それだけに余生を送るのだけれど。さういへば『チボー』も『キャッチャー』も白水社だつた。

甜耀明は『神秘列車』や『鬼殺し』など台湾の長編小説では抜きん出た才能を披露してきてゐる。作品がどれほど欧米系の言語に翻訳されて、それが評価されてゐるのかは知らないけれどアタシは甘耀明は台湾初のノーベル文学賞作家になつてもおかしくないと信じてゐる。台湾の経た時代を我々の記憶に残すために。