富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

門井慶喜『文豪、社長になる』

癸卯年七月廿一日。気温摂氏25.3/34.2度。晴。

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クモは酷暑でも水分補給もなくとも熱中症にならないのかしら。

文豪、社長になる

門井慶喜文豪、社長になる』読む。「2023年最高の県道歴史長篇」ださうで菊池寛大正11年に「雑誌をやらう」といふことで「作家志望の若手の同人誌ではなく」に集まつたのは芥川龍之介直木三十五川端康成今東光らで編集者に古川緑波、出入りするのは石井桃子……ばかりか小5の向田邦子まで登場するとは。実在の人物が登場するフィクションで次から次へと話題が面白い。なんだか『オール讀物』でも読んでゐるやうだ、と思つたらホントに『オール』に連載されたものだつた。菊池寛が他人思ひの温情溢れるリベラルな人物だつたとは。荷風散人がこれを読んだらさぞやあばらかべっそんでせう。

教材工房(世界史の窓)より借用

昭和12年の「支那事変」 盧溝橋 「満州国国境に近い一触即発の地域」とあるが実際に「国境」から遠くはないものの、この距離(約70km)でいへば北京(北平)も「国境」から同距離にある。この事変が起きた永定河のあたりにはすでに支那駐屯歩兵第1連隊が駐屯してゐて中国軍との衝突となつたのだから北京がすでに日本軍の半占領地だつたことを思ふと今更「満州国に近い」はあまり関係のないことのはず。まぁいずれにせよ『オール讀物』の他愛のない読み物なわけで重箱の隅を突いてあれこれいふ必要もないのかも。それにしても文藝春秋の創刊100年で謂はゞ企画モノでかうした菊池寛を「盛つた」読み物を出してネタにできるところが、やはり荷風散人の嫌つた菊池寛的な文藝春秋の嫌らしさなのだらう。さうとはいへジャニーズ醜聞もさうだが「文藝砲」と云はれるほど日本の為体なマスコミに於いて文藝春秋しかできない「放言」や権力にも媚びぬスキャンダルもあるのは事実。それが実ハ直木三十五の始めた当時の方針から何も変はつてゐないのは事実のなのでせう。

一昨日、内山書店(神保町)で甘耀明成為真正的人(minBunun)』入手したが、その邦訳は8月中旬の出版。朝日新聞でも先週土曜日に書評が出たもの。

一度読むのに公立図書館で蔵書を探して見たら市立、県立いずれにもなく〈カーリル〉で調べたら県内で唯一、那珂市水戸市の北隣)の私立図書館に在庫あり。8月15日に出版の書籍が半月ほどで貸出になつてゐるとは。すぐに貸出中になるか、と思つたが週末も借り出されておらず。本日燈刻に家人と那珂のこの図書館を訪れる。

那珂市の人口は5.3万人。平成26年竣工の市立図書館(株式会社桂設計)は水戸市の中央図書館(1980年)に比べたら図書館施設として十分に見事。開放的で明るく図書閲覧のためのソファなども座り心地良し。

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利用者手続き済ませ当該図書(真の人間になる)上下巻借り出し。那珂市居住の御人に図書館利用カード不要で指紋認証システムもあると言はれたが、それは非接触型の掌静脈認証技術で富士通の生体認証のこのシステムを図書館で利用した最初の例だつたのださう(こちら)。