富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

房総鉄道の旅①

癸卯年四月廿四日。気温摂氏19.8/21.5度。雨。千葉は鉄道網もかなり複雑で房総半島だけでもきちんと乗り潰さうと思ふと2日はほしい。そこで今回は今日と明日、水戸から鹿島に出て香取に入り、銚子へ。銚子電鉄に乗つたあと銚子から総武本線、東金千、外房線で4本の列車乗り継ぎ大原へ。そこからいすみ鉄道小湊鉄道内房線の五井に出て今晩は木更津に宿す予定。

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折からの雨模様で鹿島神宮駅で少し時間をとる予定が大洗鹿島線のすぐの継続列車で香取に行つてしまつたら香取神宮の駅だから駅前に何かしらあるかと思つたら香取は「駅前にコンビニもない無人駅」で、いっそのこと次の佐原まで行つてしまへば良かった。そこで銚子行きを47分待ち。あとは成東駅での乗換へ時間1分も含め順調だつたが大原駅でいずみ鉄道の上總中山行きは15時10分発で9分の待合せのはずが、それは平日の時刻表で休日ダイヤで次の列車は16時35分で1時間34分待ち。雨も本降りで駅を出る気にもならず(出たところで何があるわけではないが)駅舎のベンチでビールでも飲みながらうとうとしたり読書してゐるには飽きない。

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ロラン=バルトだと旅先でのメモが作品になるのだが私ではさういふわけにはいかない。それでもメモをとる。
朝6時すぎの水戸駅付近。土曜晩の飲んだくれたちがまだ通夜営業の飲み屋で朝酒中。その一軒から出てきたお兄さんが店に居残る連中に「それじゃぁ」と別れを告げ大通りをふらふらと渡つたら水戸東照宮下の駐車場の愛車に乗つて走り去る。彼は朝までノンアルコールで友だちに付き合つたのだらう。
大洗鹿島線で最初の目的地、鹿島神宮までの乗車券買はうと大洗鹿島線の乗車券も売るJRと共用の券売機にタッチすると鹿島の手前の駅(荒野台)までしか表示がない。それ以上の金額が出てこず(交通系ICも使へないので)駅の改札窓口で尋ねると鹿島神宮までの切符は4番の券売機でといふ。発車まであと2分で乗車証明をくれと請ふと駅員はふてぶてしい表情で「次からはもっと時間に余裕をもって駅に来てください」。余計なお世話である。あとで確かめると大洗鹿島線(第3セクターの鹿島臨海鉄道大洗鹿島線)は水戸から荒野台駅の次の鹿島サッカースタジアム駅まででスタジアム駅はサッカー試合開催のときだけ使はれるがスタジアム駅から先は鹿島神宮駅までJR東日本鹿島線(スタジアム駅~香取)に「乗り入れ」となる。だから大洗鹿島線の券売機では鹿島神宮までの乗車券は買へない不便。どこだか貼り紙もあるやうだが、それに気づかないといけないのだから不親切。鹿島神宮駅で同じホームで待機してゐる成田線の列車で北浦、利根川を渡り香取へ。上述の通り「駅前にコンビニもない」成田線香取駅。下り列車で香取神社参拝客なのだらう数名が駅舎で呆然としてゐる。そりゃ香取駅からはバスどころかタクシーもなく徒歩30分。アクセスは佐原駅から(アクセス | 香取神宮)。それでもタクシーがお勧めとは。久が原T君と香取、鹿島の両社を参拝と話してゐたが時間を考へると佐原駅からレンタカーでも借りるのが無難か。
初代松本幸四郎が香取の小見川の出で地元の寺(善光寺)に初代松本幸四郎の墓もある。

鉄ちゃんではあるが乗り鉄ではあるものゝ飲み鉄でぼんやりと列車に乗つてゐるだけなのでE131系だとか209系だとか車両のウンチクはよくわからない。209系の黄色と(だいぶ剥げてはゐるが)青色のツートンカラーで上下が逆だつたらウクライナの国旗カラーか。成田線で銚子に辿り着く。

今回の房総の旅は銚子電鉄いすみ鉄道小湊鉄道に乗ること。銚子電鉄は雨模様でも日曜日で乗客少なからず。銚子電鉄に乗ることが旅の目的となつてゐるから大したもの。職員も給与や待遇より銚電ラヴな方々で途中駅での職員の会話も友だちのやう。

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とにかく全てが観光資源。「まずい棒」や「ぬれ煎餅」もよく売れる。売るものがなくなつてきたので、と銚子電鉄の列車が走る音まで音源として売り出すとは。

運転士も外川での折返しの休憩は駅舎の事務室でタバコ一服っして、ってのが何とも昭和レトロで良い。観光客も多いが銚電は地元民の足であつて「あれ、今日は一人?彼氏と一緒ぢゃないの」「あれ、彼女は?」と挨拶代はりに「彼氏、彼女」ネタを繰り出すのが還暦オーバーの顔見知りたちで、どうやらこれが銚子の流儀。強烈な銚子弁が1/3くらゐ何を話してゐるのかわからない。

復路は外川から一駅目の「犬吠」で下車。次の列車までの小一時間、犬吠埼灯台まで歩く。今回の旅行で唯一、観光名所らしいところを訪れた。かつてはどれだけの数の人が訪れたのかしら。ホテルや水族館などの施設、たこやきやとか廃墟が並んでゐる。

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雨空で(銚子の今日の雨量は19mm)霧が濃くて霧のなかでかろうじて灯台が見えた。灯台に直近の観光施設はリノベーションして、そこだけ集客力あり。その隣の食堂と、いま営業してゐたのはこの2軒のみ。犬吠駅から銚子電鉄で銚子に戻る。昼食。駅近くの定食屋(吉原食堂)けっこうな繁盛。イワシのフライが美味しい。タンメン好きの家人の頼んだタンメンは醤油味。千葉は銚子、野田と醤油の名産地でタンメンも塩味ではなく醤油味なのかしら。

銚子駅から総武本線の千葉行きの電車で成東へ。成東での東金線への乗換へは1分しか時間がないがホーム反対側の列車に飛び乗るだけ。大網で外房線の上総一ノ宮行きに接続。3分の乗換へ時間で、こちらの駅は東金線外房線がYの字で離れてゐるので少し慌てないと乗り遅れ。外房線は大網から東京まで1時間で通勤圏。大網から下りで上総一ノ宮まで田んぼや畑の農村地帯のなかに高層マンションが点在する不思議な風景。上総一ノ宮から東京まで15分間隔で電車があり東京から90分で自然に恵まれて、このあたりに住んで東京で働く人も多いのだらう。常磐線総武線横須賀線だと各停の普通列車も2階だてグリーン車は連結だが外房線京葉線グリーン車がない。

銚子からの成田線の列車は千葉行き。総武本線の列車も千葉行き。外房線からの東京行きの列車も千葉を通り、外房線の下りも内房線に乗換へると木更津経由で千葉へ。とにかく房総の列車はすべて千葉へ。慣れてゐないから何だかさすがに方向感覚がおかしくなる。
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上総一ノ宮まではさういふわけで首都圏の鉄道網なわけだが上総一ノ宮からは列車も2両編成でローカル線の旅。大原へ。9分の乗換へ時間でいすみ鉄道に乗るはずが見てゐたのは平日の時刻表といふミス。次の列車まで1時間半もあつたが、それでも上総中野で小湊鉄道に接続して今日のうちに木更津に行ければ問題ない。

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いすみ鉄道(かつての国鉄木原線)もいつ廃線になるかの困難な状況。小湊鉄道と提携して房総半島横断で鉄道ファンの集客があつて房総王道記念乗車券も発売。それでも気になつたのが、この乗車券の番号(3924)で、これがいすみ鉄道大多喜駅小湊鉄道の上総舞鶴駅が「関東の駅百選認定記念」とあるが大多喜駅の認定は1998年だと思ふと、それから今までで記念乗車券の発売が4千枚弱では……?と心配になる。だがネットで見たかぎり2012年にも6千番台の乗車券があつたので何うやら5桁までいつた上での一巡か二巡なのかしら。そんなことばかりがやけに気になるから。

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鉄道ファンにとつては垂涎のあらゆる鉄道車両の宝庫である。キハ何とかとかクハ何とかとか列車の峻別ができないので、いつも列車を一瞥すると「あ、気動車の何型だ!」とか叫ぶ小学校低学年の鉄ちゃんは本当に大したものだと感心するばかり。

上総中山駅小湊鉄道に乗換へ。乗客は6人ほどだが皆、鉄ちゃん。日曜日の夕方こんな房総の山中でいすみ鉄道から小湊鉄道に乗換へる酔狂な連中。

上総中野駅小湊鉄道に乗換へ。5人ほど乗客はゐたかしら。みんな鉄ちゃん。

小湊鉄道の駅舎はできれば一つ一つ列車を降りて眺めたいほど風情あり。本当に昭和そのもの。

アタシも幼いころに遊んでゐた駅舎がそこにある。森のトンネルを抜けて列車はガタンゴトンと房総の山を越え内房へ向けて進む。

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五井に出て本来の予定は内房線を一旦、蘇我まで上り、そこから下りでまた五井を抜けて木更津に向かふ予定であつた。さうしないと蘇我〜五井の区間内房線で乗り残しとなる。何うでも良いことのやうだが、やはりきちんと乗つておきたい。しかし本日は大原でいすみ鉄道への接続が上手くいかず家人も体調が今一つだつたため五井から内房線でそのまゝ木更津へ。木更津はもつと賑やかなのかと思つたが人口も13万人ほどで常磐線でいふと土浦くらゐの感じ。駅前に家族や友人お迎への自家用車がロータリーで何といふのだらう「千葉システム?」自家用車が歩道に向け頭から突っ込んで、たしかに多くの自家用車が駐停車できるのだけれど。何だか皆さんイカつい感じにも見えて。木更津駅前のワシントンホテルに素泊まり。家人を客室に残して一人で駅前の吉野家で牛麦とろ丼を頬張つて本日の房総鉄道の旅はお了ひ。