富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

澤瀉屋惨事

癸卯年三月晦日。気温15.1/33.3度。快晴。五月の二日続けて夏日は観測史上初なのだとか。暑さだけでもアタマ朦朧としさうななか築地H君から

「歌舞伎俳優の市川猿之助さんとその両親が」って、なにその両親は一般人みたいな扱い……

とLINEあり。一体何だかわからないが急に澤瀉屋が婚約発表?といふ気もせず事故か?と思つてネット見たら澤瀉屋の惨事凶報に言葉もない。確かに段四郎丈が(いくら舞台からは十年以上離れてゐるとはいへ)「猿之助の父」扱ひ。今日発売の女性誌猿之助君のセクハラ、パワハラ記事があつたやうだが「芸能界でこれしきのこと」としてしまふのがいけないのだが澤瀉屋ならこれくらゐ破廉恥なことをしてゐるだらうと驚きもせぬ内容。


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それにしても驚くのは現場で段四郎夫人はすでに死亡で段四郎は意識不明の重体で病院に搬送されて死亡。猿之助本人は意識朦朧としてゐるが命取り止めたといふ。折から明治座では猿之助奮闘公演で昼夜の舞台あり本日も出勤のところのこの惨事。週刊誌の醜聞記事が原因で何か?といふ憶測も流れるが梨園で親も倅の日々のお遊びを全く知らぬはずもなし、この程度の記事で家族巻き込んでの「生きるの死ぬの」になるかしら。段四郎夫妻は居間に並べて布団掛けてあつたとか猿之助は首括り死なうとしたところ未遂で発見され遺書や「М」宛の書置きもあつたさう。SMSではあれこれ具体的な死因の予想まで流れ大賑はひ。いずれにせよ歌舞伎界にとつては昭和21年の十二代目仁左衛門一家殺害以来の事件になるやうな惧れあり。今日の朝日新聞夕刊には畏友・村上湛君の明治座猿之助奮闘公演の劇評*1で紙面は予定通り掲載となつたがデジタル版は掲載中止といふ判断なされたやう。それにしても原因もわからぬが九代目團十郎の高弟となつた初代、名優らに並んだ二代目(初代猿翁)そして我々のよく知る三代目(現・猿翁)その弟・段四郎と着実に築き上げた澤瀉屋の家が今回のこの惨事で名声も瓦解するのかと思ふと今日な何だか何も手につかず何も考へられず。

*1:村上湛君はこの澤瀉屋の公演の頑張りを評価したうえで「古典歌舞伎の深い素養あっての新作・新案。コロナ禍を経て役者たちのそれが空洞化していないか。寒心に堪えない瞬間もあった。」ときちんと申されてゐる。