富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

柳家三三独演会@水戸芸術館

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陰暦九月廿六日。気温摂氏7.3/22.3度。朝は冷えるが秋のきれいな朝空で昼間は暖かい。毎年秋になると水府での楽しみは鉢の木(南町4)の栗蒸し羊羹。今年はもう出てゐたのに買ひそびれ一昨日予約して(昨日は定休)今日受け取り。母が友人と鰻やで会食してゐたのでそちらに届ける。やはり鉢の木のこの栗蒸し羊羹は美味。タキタ画材店でねずみ色のアクリル絵の具を買ひ先日入手した携帯用の伸縮杖のメタル地のダサいペイントを塗つてしまふ。福岡の古書店より大成版観世謡曲続百番集届く。表紙皮の劣化、傷み目立ち裏地に木綿布を貼り補修。布は貼り付けてから仕上げに墨を沁みさせれば補修跡もそれなりに美観。我ながらかういふ作業が好き。

毎年秋の楽しみはといへば柳家三三師匠の水戸芸術館での独演会。アタシも今年で三年目。前座も置かず文字通りの独演会で15分の途中休憩1度入れただけでたつぷり2時間半。お見事。いつも最初、高座に上がつた時は陰鬱さうでさて今日は何うしようかしらと呟き始めるが少しずつ乗つてくると本当にアドレナリンの分泌がかなりのやうでもう三三の世界。ウォーミングアップか前奏曲のやうに〈牛ほめ〉をやつて、そのまままたマクラの話を挟んで〈お若伊之助〉に。後者は柏木の師匠が得意にした話で圓生師匠のこれをいまできる噺家は三三師匠くらゐかしら(って他を聞いてゐないアタシなのだけれど)。三三師匠は話のなかで「根岸」と出てくるとH家の悪口になるから馴染みの客はもう根岸と出てきて師匠の表情がちょっと変はつた瞬間にもう笑つてゐる。談志への生理的嫌悪もよくわかるところ。〈牛〉と〈お若〉ならアタシでもマクラのなかであゝこれかと想像がつくが〈お血脈〉はどこから何う入つたのか上手いもの。高座が跳ねてロビーに出ると師匠のさらりと書いた本日の演目の筆もまた風流なもの。

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