富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

焦桐『味の台湾』

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陰暦正月初二。気温摂氏▲1.8/9.9度。晴。
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JR東日本Suicaのカレンダー、須磨帆用の壁紙と同じデザインで実際の紙のカレンダーも出てゐて何れも愛らしい。須磨帆用壁紙は翌月から先のものが見えないのが楽しみだがカレンダーで全貌が見えてしまつたのはちと残念。
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デュボネとゴードンジンのカクテルはやはりシェイクするよりもステアの方が断然美味しいものだと納得。黄昏時はevening timeなので昼と夜がevenな安定のやうな不安定のやうな時刻なので酒でも飲んだ方が良いと昔、香港のFCCのバーで英国人の酔客にいはれてなるほどと妙に納得したが朝酒、昼酒、晩酌やナイトキャップよりも黄昏時のevening cocktailほど美味い酒は他にない。昔から陋宅でこの独酌が好きだつたが古呂奈で出歩かない習慣がついてしまつて、さらに出かけるときは自動車運転で飲めないことが多くevening cocktailが多くなつたが我ながら幸ひは夕食の時に少し飲む程度で、それ以上一切アトをひかないので酒量が多くないことか。

味の台湾

焦桐『味の台湾』(みすゞ書房)読む。台湾の地元飲食本で評判の『味道福爾摩莎*1。』から60の短編が厳選された川浩二による邦訳。

〈一〉担仔麵 肉臊飯 白斬鶏 肉円 虱目魚 米粉湯 木瓜牛奶 焼肉粽 芒果牛奶氷 沏仔麵
〈二〉四臣湯 鱔魚麵 白湯猪脚 鹹粥 緑豆椪 蚵仔煎 羊肉爐 客家小炒 封肉 鹹湯円
〈三〉棺材板 甜不辣 炸排骨 紅糟焼肉 紅蟳米糕 爆肉 烏魚子 台湾珈琲
〈四〉小籠包 臭豆腐 川味紅焼牛肉麵 永和豆漿 米干 蚵嗲 猪血湯 貢糖
〈五〉仏跳牆 麻油鶏 牛舌餅 魚丸湯 阿給 鴨賞 米篩目 排骨湯 茶葉蛋 文山包種茶 焼酒螺 貢丸湯 桜桃鴨 豆花
〈六〉鳳梨苦瓜鶏 生炒花枝 菜脯蛋 黒白切 冬瓜茶 橘醬 麵線 葱抓餅 枝仔氷 刈包

かうした台湾の地元料理を語りながら著者の半生、亡くなつた妻との日々の回想がじつに見事に織り交ぜられた文章集。
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今となっては、かつての外省人の故郷の味はすでに内面化されて、むしろ濃厚なまでの台湾の味となっている。私は大陸のどの地域にも台湾の客飯の滋味に迫るものを見出していない。

蒋介石国府来台によつて生まれた不思議な食の世界。雲南菜がもたらされたのはミャンマー国境にまで追い込まれ孤立した国民党軍の残党が1954年になつて台湾に渡つたことで、そのときに伝へられたもの。今でこそ「南京牛肉麺」が当たり前にあるが台湾では元々牛肉食の習慣はなく、これも「南京」とある通り国民党がもちこんだ食習慣。さまざまな料理が語られるなか、やはり極みはシンプルでしかし滋味の奥深さで〈白切鶏〉であらう。香港でもずいぶんと美味い白切鶏を食したが昔の北京で画家の張大千もその味に頻繁に訪れたといふ北京飯店にあつた〈譚家菜〉など本当に想像しただけで浦山しいかぎりである。

*1:福爾摩莎はFelmosaで台湾の古称