富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

衆院選明け震度4

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昨晩は25時くらゐまで選挙特番を見てゐた。早朝に目覚めiPadで開票結果を見る。自民は議席減少は見込まれてゐたが過半数どころか(緊急事態宣言下に銀座のクラブ豪遊の離党議員など追加公認も含め)単独で絶対安定多数とは。ωなんてこった……と思つたら激震が走り部屋が大きく揺れた。震度4。維新は11議席が善戦どころか41議席もとつたが大阪万博太陽の塔は洗面所で倒れてゐた。茨城は地震が多く震度4もけして珍しくないが今回は震源地が近くM5.2で揺れがドスンと1回強烈で置物とかがいくつも倒れ実質的な被害は食器棚で湯呑みが一つ割れてゐた。金継ぎの練習になるか。

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それにしても、である。ポスト晋三+俄かスガでコロナ失策、自民党の醜聞続出、伸びぬ所得で少しは「自民党に灸を据ゑてやらう」があるかと思つたが投票率は56%で戦後3番目に低い*1とは、やはり国民がダメなのだらう。倒れても自民を藁しべと握るしかない、或ひは維新に好奇心抱く民草の哀れ(今回、維新に一票投じた民草でかつて民主党への政権交代にも一票投じた同調率を調べたらかなり高いのではないかしら)立憲と共産の候補者一本化に成果がなかつたとされるが選挙区では自公との接戦のなか立憲が「共産のこれまでの死に票を積んで」9議席増(共産は沖縄の1で±0)で甘利や石原長男を落選させ(茨城で1区の無所属福島君当選も間接的に立憲&共産の立候補見送りの成果である)成果はあつたとするべきであらう。問題は比例区で立憲が22議席減と共産の2議席減。前回までの晋三選挙で立憲は小選挙区では完敗でも比例区で自民(66)に対してわずか5議席少ない61も維持できたのだが今回は22議席!も減らすとは。前回は小池に梯子外され孤立無援で立憲立ち上げた枝野君の男気に惚れ「晋三一強はダメ!」といふ民意があつたのだが今回は反自民の候補者一本化で「負けないだらう」の議席増感や連合など「反共」感は立憲の方針に反発もあり「維新、国民といふ「溜まり場」に票が落ちていつた」*2。共産もコアなシンパは党執行部の立憲寄りの姿勢に反発もあらう。結果的に自民劣勢といはれてゐたが自民党の幹部何某が全国で選挙応援に回れば「追ひ風も逆風も感じなかつた」(朝日)。もう本当に「お終ひ」だらう。本当に驚いたのは自民絶対安定多数でも立憲の失墜でもなく56%といふ投票率の低さ。

BBCが繰り返し論じていたように、日本は賃金は低いものの失業者は少なく海外に出稼ぎするほどでないし、亡命するほどの圧政ではないし、要するに世界に出なければ、さほど痛みはない社会なんです。医療のあれこれの問題も同様ですね。超スローに没落していくタイプ。(岩田健太郎

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香港で本日より須磨帆の「安心」アプリで公共施設は出入り管制開始。強制。すでに市街は監視カメラがあちこちにあり顔認証で個人の行動などどれだけでもトレースできるのだから今更なんで、こんなアプリで?と思ふところだが今後ともやつてくる感染社会のなかでは公共施設をむしろ感染者から守らなければいけないのかもしれない。これまで須磨帆もたず暮らしてきた高齢者や自分の須磨帆に、この行動追跡アプリ入れたくない疑念派なケータイの二手機購入で格安手機入手に走る。宿無の路上生活者なども収容施設にも入れず。

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衆院選の衝撃から気分転換に家人と市中散歩に出る。

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八幡宮で先づはお祓ひ。祇園寺。水府に住んで1年の家人にこの辺は水府でも珍しい猫町だと教へられる。八幡宮から廿三夜尊(桂岸寺)にかけて家猫、野良も多いのださう。この辺りは水戸市街でも大空襲での爆撃と火災を免れてゐて道路も細く土地の高低で曲がりくねり住宅密集で今でこそ空き家も少なくないが未だ生活感のある、散歩にはよいところ。アタシにとつては高校時代に学校をサボつて路地がトンズラの抜け道だつたが、こんなに猫が多い印象なかつた。廿三夜尊のある谷中は昔は水戸の「浅草」のやうな賑はひあつて参道には仲見世のやうに店が並んでパチンコ屋や宴会のできる料理屋などまぁ景気が良かつた。保和苑の庭園には小さな動物園もあり遊具もあつて水戸で唯一の遊園地の役割を果たしてゐたら子どもから大人まで休日には遊べる場所が谷中。谷中芸者もゐて小さな花街もあつた。かういふところで遊んでゐたのはアタシの祖父の代まで。今でも当時の割烹旅館の建物が残つてゐて記憶に留めておくしかないだらう。

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谷中から愛宕山古墳(愛宕神社)を抜け曝井へ。

三栗(みつくり)の中に向へる曝井の絶えず通はむ彼所に妻もが 高橋連虫麻呂『万葉集

と謳はれ『常陸風土記』に

郡より東北のかた粟河を挟みて駅家を置く。其より南にあたりて泉、坂の中に出づ。多に流れて尤清く、曝井と請ふ。泉に縁りて居める村落の婦女、夏の月に会集ひて布を浣ひ、曝し乾せり。

とある。小学校のとき「郷土クラブ」で水戸では郷土史では若き研究者であつたG先生に連れられ愛宕山古墳から曝井に来た。G先生には「水戸より東は水域が多く、この街道がかなり沿海で、この道を北へ北へと進むと蝦夷の地があつて、といふ時代を想像してごらんなさい」といはれたが当時は曝井は湧水こそ枯れてはゐなかつたが細い坂道からフェンス越しでしかも雑木林の中にありあまり良く窺ひ知ることもできずフェンスのあたりには不当廃棄のゴミなど散乱してゐた。それが今では曝井の公園地に整備されてゐる。万葉の時代の人々がこの公園を見たらさぞや驚くことだらう。ところで、この湧水の場所が万葉集常陸風土記にある「曝井」か、何か場所を断定できる具体的な史料であるとか古来ずつとこの地が曝井といふ地名であつたとかなら良いが、それがない。といふのも江戸時代に藤田幽谷(藤田東湖の父である水戸学者)らが古典にある曝井はこゝであると示して、それが史跡となつてゐる。

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*1:ちなみに全国で最も投票率が低かつたのは自民全勝たる山口県の49%である。自民党の得票率も当然のやうに73.3%と全国でダントツに高い。さすが長州と呆れるばかり。

*2:朝日新聞「野党誤算、振るわぬ共闘 217選挙区一本化、上積み小幅」(記事)。前回、立憲と国民の比例区の2,000万票が今回は1,400票である。