富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

こまつ座〈化粧二題〉

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この8月に紀伊國屋サザンシアターでも上演あつた「こまつ座」の〈化粧二題〉水戸芸術館公演を見る。井上ひさしの名作で演出は鵜山仁。アタシは何うも役者の顔と名前が一致してゐなくて内野聖陽といふ役者が朝何となく眺めてゐる〈おかえりモネ〉のお父さんと結びついてをらず。突然、モネの父親が座長役者役で舞台に現れ驚いた。舞台は有森也実扮する五月座の女座長の楽屋での化粧から始まつたが、この一人芝居の井上ひさしのセリフまわしも巧妙さが面白く、この役者に役が憑依してくる態が実に面白い。それに比べ市川座の座長の方は内野聖陽も芝居は上手いが一人芝居なのに座長を訪ねてくる彼が育つた孤児院の神父様と一座の若手役者との三人芝居で、それを声色まで真似てやるので、それぢゃ一人芝居ぢゃないし噺家のやうに向きを互い違ひにでもないから一寸まとまりがつかなくなつてしまつてゐる感あり。今日の水戸芸術館はこの芝居は午後2時からで4時からは1ヶ月前に急きょ開催決定した内田光子のピアノリサイタルもあつてロビーも昨年春からこんな賑はつたこともない。芸術館のスタッフの方々の表情も晴々しい。劇場やコンサートホールはかうでなければいけない。今日は母と一緒だつたので母はコンサートに集まつた知己の方々や芸術館の昔からの職員の方など顔見知りでご挨拶にご挨拶。

▼芝居といへばもう師走で南座の顔見世。昨年はGoToトラベルの恩恵で松嶋屋さんの〈陣屋〉を見せていたゞいた。3部制で第1部は鴈治郎扇雀曽根崎心中、第2部が松嶋屋の身替座禅で第3部が硬弛露迂と愛之助。それにしても顔見世といふには随分と寂しい。 

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平成元年12月の南座顔見世は昼の部で〈将軍江戸を去る〉で播磨屋慶喜山岡鉄舟富十郎、〈鬼一法眼〉は仁左衛門XIIIに澤瀉屋の四の切りがあつて夜の部が圧巻で改装前の南座の桟敷でこれは本当にもう、あなた、後にも前にもない番組で〈摂州合邦辻〉は大成駒の玉手御前に羽左衛門の同心、神谷町の俊徳丸に扇雀Ⅱの浅香姫で奴入平は播磨屋!で吉弥Ⅴのおとく。澤瀉屋の〈酔奴〉で〈勧進帳〉は成田屋の弁慶、富十郎の冨樫で義経福助。そして〈恋飛脚大和往来〉は松嶋屋三兄弟で孝夫の忠兵衛、秀太郎の梅川に我當の八右衛門。これこそ顔見世ですよ。芝居が終はつてから夜行の急行〈銀河〉の寝台でぐっすり寝て翌朝、東京ですもの。


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▲陋宅のお手洗ひが無駄に広いので小さな棚を置いてゐて岩波書店の『図書』と新潮社『波』、それに鉄道時刻表と何となく「今日は何の日」で一見に重宝で易断はあまり気にもしないが高島暦がある。
▲昨日、石下の山中酒造から送つた清酒が宅配便で届いた。それにしてもまるで神輿のやうでこれなら立てゝ置くしかないわけでひっくり返りもしないか。
◀︎先日、茨城町の小澤栗園で買つた大粒の栗。今年はかなり豊作でいたゞきものの多い柿を家人が黒酢と少しのハチミツに漬けてくれて、これが好物になつてしまつた。いくら食べても飽きない。これで白ワインでむしゃむしゃと無性に美味しいのでした。

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