富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

007 "No Time To Die"


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リンテイ市長が本日、施政方針演説。党紙・大公報によればリンテイが民意に応へる、それは内地との「通関」なのだといふ。健康データのICT管理によつて内地との通関手続きをスムーズに!が香港市民の民意なのか。香港市民の民意は政治の民主化と人権と自由の保障だつたはずなのだが。(明報)国安法裁判官が疾病で急きょ休暇。国安法施行で国安法違反での犯罪者裁判は政府が指名した国安法専門の裁判官が裁くわけで民主派に温情的な裁判官は最初から排除され国安法に誠実な裁判が行われるシナリオ。連日のいくつもの裁判の中で体調を崩したと聞いても驚かない。その上、国安法といふ法治を超越した悪法での裁判では裁判官には法治への理念、良心の呵責はあれば精神的にもかなりのストレスにならないはずもない。この急きょ休暇の裁判官は国安法裁判の中で40数名の民主党関係者をまとめて裁くケースで一連の裁判で保釈が認められぬなか15名だかの被告の保釈認め、それに対して保釈不満とする司法長官から司法審査を求められたのだから、とんでもない心理的圧力のなかにあるはず。

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映画「007」“No Time To Die”を見る。水戸駅前の映画館で平日の夜とはいへ460人収容で観客は16人。007シリーズは昭和46年の「ダイヤモンドは永遠に」を父に連れられて見に行つてから習慣で新作のたびにずつと見てゐる。あまり映画を見に行かない父だつたが007は昭和42年の、日本を舞台にした「007は二度死ぬ」が最高だつただらう。先考は元警視庁で自分の親ながら武芸にも優れ二枚目で特殊工作員役などニンだつただらう。自分が007のつもりで007を見てゐた。「二度死ぬ」は東京オリンピック後の東京の景観が印象的だが(何よりもタイガー(丹波哲郎)が丸の内線に専用列車は凄かつたが)冒頭の舞台は香港で、それも見て楽しい。007シリーズはいつも楽しみだが最近のダニエル=クレイグの007は何だか深刻すぎて見てゐて肩が凝る。やはりちょっとふざけたショーン=コネリーがホテルにチェックインして着替えてホテルのバーに出向いてウオツカのマティーニを注文して飲むか飲まぬのうちに……美女を連れてのカーチェイスで危機一髪のところ現地のエージェントに助けられ連れて行かれた先にQの出先の秘密基地があつて……。最近の007は登場人物の過去だとか背景だとか因果関係が複雑すぎる。(ネタバレになることへの言及は避けたいが)この映画公開は古呂奈の影響で1年遅れたさうだが「昔なら敵の悪党をやつければ良かつたが今は敵がどこにゐるのか、見えないところで敵がうようよしてゐる」で特殊な細菌兵器への感染が最大の危機といふ、まさに今の時代の恐怖を反映。ところで最後、本当の敵が危険な商取引をしてゐた「国家」が、007でかつての敵は共産ソ連であつたが、今回の高速艇の船団は「国籍不明」としてゐるが想定は明らかにあの強国だらう。さうなると気になるのはあの強国がこの映画の上映を許可するのか、世界的に話題の映画だが一部、けしからん!とカットでもされないものかが気になる。


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外国映画は世界同時開幕の香港では〈生死有時〉上映中。さすが一国両制。それに対して内地はこの〈无暇赴死〉は話題になつてゐて上映は?と確認したら10月29日上映開始だとか(丹尼尔·克雷格最后一部007电影,终于中国定档了!)。

ジェームス=ボンドの秘密兵器に日本製はないが(スマホNokiaであつた)この映画に出てくる大敵の日本趣味も日本ではウケることだらう。能面。秘密基地の全趣味。枯山水。畳に正座。日本が注目されることがほんと好きな日本、といへばノーベル物理学賞真鍋博士の受賞フィーバーも凄かつた。一昨晩、この受賞のニュースがNHKの夜7時のニュースでトップなのはまだ理解できるが(10分も時間を割いたが)その前の地方局のニュース番組の途中でも速報でテロップが流れるどころか神南のスタジオに切り替へてまでしての速報。日本出身の日本人であることは事実だが米国に渡り研究を続け米国籍をとり永住。アゼルバイジャン出身の科学者が米国でこのやうな実績でノーベル賞のときアゼルバイジャンではどの程度の騒ぎになるのかしら。有識者が「この受賞で日本の科学技術も、これに触発され、これが発展に向けた大きな勇気を与えてくれることを……」なんてコメントしてゐたが「日本出身者が受賞」は日本に科学技術立国としての復興よりも「やはり研究成功させるなら米国へ」になりはせぬか。それにしても若いときから米国暮らしなので日本語よりもう米語の方が堪能なのかと思つてゐたがセイジオザワ先生並みの、所謂ブロークンなジャパニーズイングリッシュで十分やつていけてゐるのだから大したもの。

真鍋さんが言葉を濁す「日本へのメッセージ」(朝日新聞)

日本で人びとは常に、お互いの心をわずらわせまいと気にかけています。とても調和の取れた関係性です。これが日本の人びとが簡単に仲良くなる理由の一つです。
何かを質問するとイエスかノーで答えを得ますが日本人が「イエス」と言っても、それは必ずしも「イエス」を意味せず「ノー」かもしれません。
なぜなら誰かの感情を傷つけたくないからです。(日本人が)なによりもしたくないこと、それは「誰かの心をわずらわせること」なのです。アメリカではやりたいことができる。他人がどう感じているか、それほど気にしなくていい。
なぜか。実際のところ、私は他人の感情を傷つけたくはないのですが、彼らが何を考えているのか、それを把握するほど、彼らのことを観察しているわけではないんです。
米国で暮らすって、素晴らしいことですよ。私のような科学者が研究でやりたいことを何でもやることができる。上司が本当に寛大で、やりたいことを何でもやらせてくれた。コンピューターなどの支出を全てまかなってくれた。私は人生で一度も研究計画書を書いたことがありません。
私は調和の中で生きることができません。それが「日本に帰りたくない理由」の一つなんです。