富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

吉田健一ふたたび

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港島、九龍に続き新界東でも区議会議員の宣誓で16人の議員資格剥奪かと大公報。逃亡犯条例反対で暴力行為、その反政府世論の勢ひで不当に区議会選挙で票獲得で当選……と、もうインネンをつけるにも無茶苦茶。
f:id:fookpaktsuen:20211005074054j:image(明報)「民主党にはどれだけ政治的空間があり、何をできるか、だ」と参選回避すら思案する民主党にエール送る仙人風の男性(明報)……韓東方さんではないか。あの好青年が仙人に。

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内地で労使問題に取組み天安門での民主化運動にあつて北京労働自治連合なる組織をつくり民主化運動支援。当局から指名手配、逮捕で収監されたが肺結核で治療理由に渡米。中国に戻つた際に広州空港だつたかで当局に身柄拘束され、それでも海外の関心高く強制出境させられ香港へ。それが1993年のこと。内地に戻れぬまゝ香港に居残り永住権取得して1997年返還後も香港で中国民主化運動に携はつた方。「内地でも民主化要求はけして放棄されたわけではないのだから香港は内地に比べたら発言の自由など空間はまだあるわけで運動を断念してはいけない」。

▼川本直/樫原達郎編『吉田健一ふたたび冨山房インターナショナル

吉田健一ふたたび

吉田健一がブームなのだといふ。随筆は洒脱で英国文学と英国社会を語らせれば一流。死後40年以上経つて現在、新刊で読める著作が32もあるのだといふから恐れ入る。この『ふたたび』は川本直といふ若い文芸評論家が仲間の健一好きを集めて「吉田健一友の会」なるものを結成して彼らの吉田健一に関する評論などを集めたもので昔から健坊を読んできてゐると今更で新しいこともないのだが一つだけ興味津々なることは彼らが吉田健一の娘で回想録など書いてゐた暁子さんがひっそりと家守をする新宿払方町にある吉田健一邸を訪れる出来事。暁子さんに手紙を出すと暁子さんはは高齢で体調もすぐれず彼女の母方の従兄にあたる方から「吉田邸の土地は近々処分され家屋も取り壊される予定で吉田の遺品や蔵書など鎌倉の近代文学館に寄贈するのに、その整理や土地の処分のあれこれをしてゐる」と連絡があり折角であるから取り壊し前に訪問を打診されるのだ。吉田健一には一男一女あり兄(健介)はすでに他界して妻はイタリア人で海外にお住まひか健一邸で暁子さんの面倒を見ることもできず、この従兄氏がすべて取り計らつてゐるのだといふ。周囲から隔絶されたやうに樹木が茂りひっそりとした健一邸は、この文人の生前のまゝ書斎の灰皿のタバコの吸い殻と灰まで当時のまゝ保存されてゐて川本直らはそれを映像に残せただけでも大した出来事である。ところで麻生太郎は健一の甥にあたり健一なら甥の傲慢と横柄ぶりを何う不愉快に思つたところか。

▼2日の能<伯母捨>について。姥捨て山伝説といふと映画の強烈な印象で晩秋に冬を迎へるにあたりで姥捨山はきびしい雪嵐なのだが能<伯母捨>では秋の月で丁度この季節にあたる。この日の日剰でアタシも<序の舞>について、これを理解するにはまだ勉強不足と書いたが畏友・村上湛君による当日のパンフレットの解説に興味深い記述あり。

(秘曲であり芸の蘊奥を極めんとする特別の演者にのみ許されることから)多くの能役者たちから「俗情を脱した浄化の能」との思い入れを寄せられやすいが、それはちょっと違うようだ。後シテは「返せや返せ昔の秋を、思ひ出たり妄執の心」と煩悩の自覚のまま、「独り捨てられて」終わる。前シテの言うように「秋ごとに執心の闇を晴らさん」、言い換えれば、永遠に捨てられ続ける業苦が<伯母捨>のドラマなのだ。その意味では、永遠に業火の水桶を汲み続ける<檜垣>の劇世界とごく近いところにある能だと言えよう。

安部公房の『砂の女』にも通じる不条理だが、この舞ひを「永遠に捨てられ続ける業苦」の表現としてこれから機会があれば何度か見てみたいと思ふ。

▼スガ動静(4日)07:56 官邸。最後の敷地内の朝の散歩。09:04 最後の閣議(臨時)以降、午前は用事なし。官邸で最後の昼食。12:32 官邸玄関ホールで職員らから見送り。さようなら、スガ。その後、自民党の一兵卒として衆議院本会議。

▼(毎日新聞世論調査)岸田君の内閣支持率は49%と5割に届かず(昨年9月のスガで64%)。不支持率が40%とは。閣僚の顔ぶれに「期待感が持てる」は21%で「持てない」が51%に。晋三はさぞやほくそ笑んでゐることだらう。日経は支持が59%で朝日は毎日より低く45%だが不支持は20%に留まる。かなりブレはあるが従前からの「ご祝儀支持」がないのは事実。だがその分の20~30%なんて小泉郵政改革、民主党政権交代、晋三コールと節操なく何でも新しけりゃで支持する連中なので、それが差っ引かれてゐると思へばむしろ着実な政策での政府運営に努めれば良いのかもしれない。岸田君の記者会見を聞いたがスガに比べ言葉こそはつきりと淀みなく出てはくるが内容に関しては抽象的だからと記者に質されても回答も漠然として宏池会にしては政策が具体的ではない印象もたざるを得ず。

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首相指名選挙でこの人⇧に1票。野党かららしい。誰だい、ふざけた冗談は。