富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦十一月初六


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(大公報)陽性の叔父さんが伊院(Queen Elizabeth Hospital)の隔離施設から逃げてしまつて全城通緝(広域指名手配)なのださう。(蘋果日報)Zoomで開催予定の天安門事件に関する香港の抗争会議の通信を邪魔したとしてZoom社で親北京?の中国系職員をFBIが指名手配の由。世の中さまざまなことがテレビ三面記事のやうに起きる。

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水戸の駅前で日蓮宗の布教活動がだいぶ盛んなのだが熱心な信者さんらの主張を聞くと布教といふより創価学会批判が強く日蓮宗で何が?と思へば冨士大石寺顕正会の社中。南無妙法蓮華経日蓮さんも賑やかな宗門で日蓮宗があつて日蓮正宗があつて、その信徒団体に創価学会や、この冨士大石寺顕正会があつて学会や顕正会の規模はその宗家を凌駕する。先日、顕正新聞をいたゞいたので一読すると兎に角、元学会員で学会を辞めて顕正会に入りどれだけ安堵したか、の声多数。それもそれかもしれないし巨大な創価学会あつて顕正会の位置は五五体制でかつての自民党社会党のやうだが社会党の失敗を反省材料とすれば反学会よりももつとピュアに日蓮さんの教への原理主義で信者さん増やすのはあかんのやろか。

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水府で茨城基督教大学教授・志賀市子先生の講演〈疫病と中国の宗教文化 - 19世紀のペスト流行を中心に〉拝聴。志賀先生は今から30年近く前に香港暴大がまだ長閑な時代に院宿で不味い食堂の同じ釜の飯を喰つた同志。19世紀のペスト感染流行のときと世の中は全く変はつてゐないどころか当時の『救刧経』が嘆くのは聖書のバベルの塔の時と同じわけで人間の往来の過多、エゴや欲、煩悩に神の鉄鎚がこれ。刧である。談志師匠もそんな話をしてゐたな。

ペストの流行が中国全土に及び、その恐怖が階層や地域を超へて共有され「大刧が我々の中華を侵襲してゐる」といふ共通の危機意識が醸成された。

これが「わが中華」といふ大中華のアイデンティティ形成になつたといふ。当時の民間宗教が非科学的かといふと「神鉗で瘟鼠(おんそ)を拿捕」「瘟鼠退治に猫を飼ふ」や「水源を清潔に」など実に合理的な観音。ところで台湾での感染制御の見事さ。これもプラグマティックな現状処理なのだが、もしかすると台湾社会の道教など民間宗教の温床があつてのことかもしれない。防疫はまさに「善行」であつて、その善行を一人ではなく集団で行ふことが大事で、その徳の勧進で善行が社会に広まる。老若男女頻繁に近くの、遠くの廟に参拝し熱心にあれこれ祈願する台湾社会である。その下地あつてのマスク供給の安定であり感染者数百人で抑へられた大吉であらう。さらにところでこの世に人間への仕打ちとしてペストを流行らせた五皇大帝をしてこの世に關聖帝君(關羽)が遣はされたのは旧暦の三月五日なのだといふ。これが来年なら新暦の4月16日なわけで、そこまで待てば何か少しでも吉兆があるのかしら。

このところ三島だらけ。由紀夫さんの死後半百ぢゃそれも当然か。アタシもつい由紀夫さん関連のものを読んでゐる。今日ちらりと頁を捲つたのは芸術新潮。さすがに新潮社で芸術新潮だからビジュアルも面白く拝見。

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そのなかで由紀夫さんに可愛がられた高橋睦郎が興味深いことを書いてゐる。自衛隊の市ヶ谷大本営での一世一代の晴れ舞台で森田必勝を道連れにしたのはよくなかつたと睦郎さん。

森田の方が三島の背中を押したのだと言う人もいますが、そうなることを含めて三島の台本通りだったのだと思います。呪われた詩人はやはり独りで死ぬべきで、森田を巻き込んだために不純になってしまった。

由紀夫さんがゐて必勝君に対する睦郎のまるで嫉妬のやうなこの言葉。さらに睦郎によれば睦郎が最近しりあつた霊能者によれば、あの世で森田の霊は三島からかなり遠いところにゐるのだといふ。もはやかなりの好事家の世界で着いてゆけぬ人の方が圧倒的に多からう。だが三島の嘆いた日本の亡国の具合は見事にその通りになつてゐるのは確かかもしれない。