富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

「ラピュタ化」する都市


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今日の蘋果日報が騒ぐのは警察が伸縮性の警棒を私服、非番の警官用に調達で警方の言ひ分は暴力活動が各地で頻繁で単独の警官が襲はれる場合もあり最低限の装備。警察は八月五日に始まつた夕方四時の定例記者会見を本日急きょ取消し。警方は抗議活動取締り等がある程度落ち着き連日の簡報必要なしと判断したか今後は必要に応じてとしたい意向。これに対して反対派は警察暴力への記者の容赦なき質問を警察糾弾と捉へ開催に非積極的なのでは?と懐疑。本日はこの時間に「香港本土」の立法会議員・毛孟靜(Claudia Mo)が831の太子站事件につき消防の内部記録入手として記者会見開催。怪我人の人数についての齟齬、現場に駆けつけた救急隊員に対して警察が「負傷者なし」で救助活動不要としたこと一件等を公表。この毛孟靜の暴露に何か出るので警察が定例会見見送つたのでは?といふ見方も陋巷に流れる。陋巷といへば、といふかネット上でだが本日これもまた午後4時だが林鄭が緊急記者会見とSCMPが特報と流れ「撤回」に加へ五大訴求の何かに応じるのではないか?と憶測呼んだがSCMPは数碼版にそのやうな記事掲載なしと否定。また811の右目負傷女子が弁護士を通じて医管局が本人の医療報告を警察が本人の意向無視して渡したことについて司法審査要求を提出。……何もないやうな日にも何かが起きる毎日。

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本日の朝日新聞(夕刊)に藤嶋亮大「ラピュタ化する都市」掲載あり。香港の大規模の歴史的意味を論じたもの。

  • 欧米流のリベラリズムと中国流の権威主義との争いで「価値観の衝突」の最前線
  • 都市と国家の対立:自由や多元性重視する都市の価値観が国家の圧力=中国化に脅かされることへの地下鉄や空港といつた〈都市の生態系〉を舞台とした抗議
  • 都市と国家それぞれの「願ひ」の不一致、都市の「ラピュタ化」=鈍重な国家からの都市の離陸(乖離)

といつた点を香港の抗議活動の意義として見出し多数のラピュタ化した都市の相互結びつきによりかつての〈東アジア共同体〉が今後〈都市的アジア主義〉に展開といふイメージを膨らませる。反送中に見られる、この都市的な雑多さ。この「価値観の衝突」はこゝでは都市(香港)と国家(中共)といふパラダイムで語られてゐるが先日の明報にあつた沈旭睴の「文明衝突與香港秩序的重建」はかなり同一の視点からの思考。

文明衝突與香港秩序的重建(沈旭暉) - 富柏村香港日剩

この「ラピュタ化する都市」を読み陳雲の〈香港城邦論〉をも、さうした視点ありと彷彿。

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まことに偶然なのだが、その香港の評論家・陳雲、今日の蘋果日報に彼の探訪記事掲載あり。陳雲がかうして新聞で大きく取り上げられることなど久々。

陳雲の独自の視点で評論は常に好評、信報の連載は本当に面白かつたが2010年9月に信報が陳雲の連載随筆が内容敏感として差し止め本人は連載断念。内容は当時、香港の官商勾結(癒着)問題で陳雲は香港の財閥系地産企業非難。信報は当時すでに李嘉誠次男・李澤楷が社主。その後、2011年に『香港城邦論』上梓。中共に対して香港が自治権のある都市国家としての未来図を思想展開したもので脚光浴びる。今の本土派や港独派にとつての思想的源流のやうな発想で「國師」と当時、呼ばれるほどであつた。だが陳雲は泛民主派の発想やスタンスが西洋寄りで漢心に欠けたものとしてグローバリズム世界市民、多元文化を中共同様として一蹴。香港の今後のあり方については中共からの思想的独立を掲げながら自治のために本来の〈華夏〉の見直しと復興を掲げるといふ複雑さ。その姿勢が泛民主からも厭はれ孤高であつた。この拙い日剩で「ほとんど香港で本居宣長の如し」と記述にあり(㷫回歸 - 富柏村香港日剩 )。余談ではあるが、この日(2013年7月1日)の日剩の題「㷫回歸」は当日の畏兄・鄧達智の当日の蘋果日報の記述の題で、こちらも今日の反送中を予見するかのやうな思考で一読に値する。更に陳雲が泛民主派、反中派から決定的に離れることになつたのは2014年の雨傘運動。陳雲は〈佔領中環〉といふ平和裡の路上占拠など運動として全く意味がないとして批判、本当にやるのであれば正義としての武力的行為も辞さぬ徹底した運動の展開を提唱。極論で支持を得ることもなく、それでも独自の思考は、かうなつては今になつて思ふと西部邁的である。その陳雲がこの〈反送中〉の中でまるで前線に復帰。確かに今回の運動は2014年の雨傘とは違ひ陳雲が提唱した暴力性を伴ひ思想的にも当時は異端であつた本土派どころか「独立」すら標榜もあり。そこで香港城邦論も再考されるところか。繰り返しになるが、まさに上述の「ラピュタ化する都市」とこの香港城邦論はかなり発想の重要なリンクをしてゐるのだ。

《願栄光帰香港》が反送中の象徴曲、港独派にとっては国歌化してゐることは昨日この日剩に綴つたが、その《願栄光帰香港》の完成版のやうな黒蟻社中の合唱団とオーケストラによるヴィデオが出回る。かなりのレベルなのは音楽制作現場のプロが自弁で監修してゐるから。

「香港之歌」誕生?《願榮光歸香港》創作人:音樂是凝聚人心最強武器 | 立場新聞

それにしても、である、思わずイスラム国 国歌(日本語字幕付)  のことを考へてしまつたが国歌であるとか政治の象徴性とは、まさにこの世界。


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体調悪くなると陋宅に近いC医師の診療所か病状によつては養和病院としてきたが昨年、C医師急逝で北角の歐陽英傑(Jeff Au Yeung)医師の診療所を訪れる。歐陽英傑医生は〈星屑醫生〉の別名で著述やラジオ出演などで著名。そしてRTHKのヴィクトリア公園での日曜市民論壇の場で建制派や維園阿伯に対して泛民主派として雄弁奮ふ維園阿哥の一人として名を馳せ政治団体〈人民力量〉の中核成員もであり。


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診療の前に現金下ろさうと銀行のATMに寄るとATMも最早、カード不要で手元のスマホでAMT機のQRコード読めば、それで出金可となつてゐた。確かにATM機前で暗証番号盗まれるといつたリスクはないか。