富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦五月初九

曇。昨日日曜仏誕にて本日代休。今日までMTRは半額措置だが家人と路線バスで海峡隧道潜り九龍に渡つたところで307系統のバスに乗り換へ大埔へ。高速道路走り大老山隧道潜り最初のバス停がもう大埔郊外の廣福邨。その距離25kmである。バス二階最前列に(一般的には精神に異常来たした)やたら道路とバスに詳しいヘビー級オタクの青年坐し目につく指標あれこれと読み上げ物語る。二列目の夫婦がそれに「あゝさうなんだ、それぢゃ斯々然々……」と受け答へ。多少精神的に病んではゐても愛息を休日に連れ出し大好きなバスの旅とは微笑ましい……と思つたらバスが大埔墟に入ると「それぢゃね」と青年下車の支度。赤の他人だつたとは……夫婦は何事もないやうに「それぢゃ」と。世の中これくらゐの余裕はすてき。

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バス降りて場外馬券場の前を通ると「越洋轉播日本超級競馬🇯🇵」とポスターあり「えっ、もう安田記念のPR?」と驚いたらオークス(19日)……へぇ。日本ダービー(26日)は香港のサイマルなし、で6月2日が安田記念で次が今期最後で宝塚記念。今まであまり意識してゐなかつたが調べてみると日本競馬の中継は
9月 スプリンターズステークス
10月 秋華賞天皇賞(秋)
11月 エリザベス女王杯ジャパンカップ
12月 有馬記念
3月 高松宮記念大阪杯
5月 オークス
6月 安田記念宝塚記念
……と年11レースあり。日本G1のうち香港サイマルキャストないのは
菊花賞、マイルチャンピョンシップ、チャンピョンズC、阪神ジュベナイルF、朝日杯ニューチュリティS、中山大障害ホープフルS、フェブラリーS桜花賞中山グランドジャンプ皐月賞天皇賞(春)NHKマイルC、ビクトリアマイル、日本ダービー
となる。秋華賞があるなら菊花賞桜花賞天皇賞(秋)があるなら天皇賞(春)皐月賞日本ダービーくらゐ、せめて(大阪杯抜いても)入れてくれないかしら。廣福道のパブ、Bobby Londonの筋向かひ、白鷺?が多く巣づくり親鳥に餌強請る幼鳥が賑やかな樹木の間を抜け運頭角里の坂を上り大埔の崗へ。大埔墟は百年以上前の鉄道開通で蒸気機関車の火の粉による火事厭ひ鉄道が市街外れを抜けたことで今になつてみると不便。この「大埔の崗」は坂の上り下りはあるが市街への短途で今まで何度こゝを通つたか、それでも崗の頂上に上がるのは初めて。

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頂上には舊「理民府」で1907年建立のいかにも植民地建築の建物が残り現在は香港童軍(ボーイスカウト)施設。1899年に英国が清朝より新界租借で当時、新界の一漁村であつた大埔に、この理民府置き管轄。理民府から少し降ると舊大埔警察署。

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現在はカードリー農場の緑化活動施設。理民府も警察署も当時は小高い山の上から大埔墟見下ろすやうに陋巷を監治。崗を下りて市街へ。

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午後二時近いが飲食店並ぶ大明里あたりかなりの人混みで、そのなかでも群記清湯腩は香港でも清湯牛腩が一番美味いと評判で行列はいつものこと。アタシはいつも「行列に並んでまで食事する気が知れない」と宣つてゐるが、ちゃっかり列に並び15分ほど待つて店内へ。

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画像は清湯牛腩伊麺で普通の麺粉の価格HK$55に伊麺は$5加算でHK$63となる。この食肆の牛腩の中でも一番評判なのは清湯爽牛腩となるが店内に貼られた過去の紹介記事見てみれば2007年はこれがHK$24である。

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今はHK$63なのだから2.6倍……香港のこゝ十年の物価上昇の凄まじさ。

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これほどのオレンヂが今日一日で売れるのか……大埔墟の青果店はどこも陳列が見事だが、この肆は殊に驚くやうなディスプレイで目を楽しませてくれる。折角久々に大埔墟に来たので家人が大埔墟街市に往く前に張記国際洋酒(大埔店)に寄る。以前に比べ日本始めモルトのビンテージウヰスキーが高値でずらりと並びワインもHK$300からの厳選。家飲みで気軽な感じじゃないし大埔の街内で、と思ふが大埔も半山区には郊外高級マンション多く高級洋酒の消費層が厚いのかしら。今日は店猫がゐないな?と思つたら酒箱の裏で一匹熟睡中で起こしてはいけない。

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さて一通り酒も眺めたので帰らうかと思つたら入口の隅にもう一匹ゐて、さっと出てきて家人が遊び始めたら寝てゐた黒猫もさっと起きて近寄り店猫にこゝまで接待されたら「こりゃ手ぶらでは出られん」と安値のワイン1本選んで帳場に持つていく時には更に奥からもう一匹出てきてしまひ散々三匹を愛でる。向かひのデカすぎる大埔墟街市へ。

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入口に「ペット連れ禁止」と張り紙あり「さすがにこのなかは店猫はゐないだらうね」と家人と話し家人が食材買ひ物する間、外のベンチで本読みながら家人から次々と街市内の店猫の画像がLINEで送られてくる。

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規則は規則、か。街市管理側が「建物内でのペット飼育禁止」と言つても「その前にネズミの駆除を」とかでの膠着か。大埔からの戻り、往路と同じでも何うかと思つたら観塘碼頭行きの路線バスが頻繁で、これに乗り観塘へ。

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桟橋にはホームレス市民の堅牢なる苫屋いくつか並ぶ。観塘公衆碼頭はさながら観塘公衆碼頭房屋区の如し。観塘碼頭から西湾河に渡る船で海風浴びつ香港島に還る。

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晩に昨日荃湾で求めた民豐の餃子頬張る。ちくま文庫山口瞳ベストエッセイ』読み始める。昔は『男性自身』の連載とか「ずいぶんとオッサン臭い文章だ」と思つてゐたが気がつけば当時の山口瞳の年齢をアタシも疾うに超へてゐた。