農暦三月初五。曇。家出の時はiPhoneでKindleや青空文庫のアプリで読書してゐる。折角、Kindleの新製品も手許にあるのだがiPadでも同じやうに読めるしiPhoneで迄となると純正のKindle持ち歩かない。iPhoneを横にして１行18字くらゐが実に読みやすいのだ。
これで今読んでゐるのは内田百閒の『御馳走帖』といふ百鬼園の拘る食に纏る随筆集。
「序に代へて」は昭和20年の七月から終戦にかけての食料難の時代の話で身につまされる思ひ。本章は百鬼園らしい飲食に関する勝手な、他愛ない話も多く、それが小説では独特の奇譚に読者を誘なふ百鬼園世界とのコントラストも面白いわけだが「こんなもの、よく随筆でカネになるな」レベルと思はれるのは今では素人でもちょいと筆が立てば勝手にネット上にでも綴れる内容が当時は「活字になる」ことがどれだけ大したことで今とは随分と事情が違ふ。今のやうな飽食の時代に比べ当時はまだ食料難で、殊更に貧窮で糊口を凌ぐ生活してゐた百閒先生にとつては澤庵から蒲鉾まで一つ一つの食材に思ひ入れが強い。数の子一切れを口にしても今とは随分と違ふ旨味を感じてゐただらう。それにしても百鬼園も吉田健一もさうだが酒飲みといふのは入手し難き銘酒よりも日常酒を好む。今どきの大吟醸や獺祭磨き二割三分なんて酒は「美味すぎて美味しくない」で百鬼園は月桂冠、健一は菊正宗と決まつてゐる。蕎麦屋も淡路町ではまつやも薮も、赤坂の砂場の並木の薮も確か菊正宗だつたか。普通の酒がいちばん飽きが来ず毎日さらっと飲むにはうってつけなのだ。同じ酒好きでも百鬼園と健一の違ひは、健一が朝からでもお酒なのに対して百鬼園は「燈刻からの酒をいかに美味く飲むか」への拘りから昼酒は懸命に我慢するところ。アタシも酒は菊正宗で他のお酒も洋の東西問はず美味しくいたゞくクチだが昼酒は酔ひが早く飲んだら使ひものにならぬので、できるだけ昼酒は慎む。午後も昼寝してゐてもいゝとか列車に乗つてゐればいゝといふ時は、それゆゑ昼酒が嬉しい。先週から陋宅で水道管修理の工事が始まり、狭い廊下角に据ゑてゐた酒棚を動かすことになり取り敢へず酒瓶を書室の床に並べてみたが棚といふのは実に機能的に収納してゐたもので床に並べると、こんなに邪魔になるのかと驚かされる。
よつて中途半端に残つてゐた酒を務めて片っ端から空けてゐる。我ながらバーでもやつてゐるわけぢゃないのに一時つい買ひ込んでしまつたのがリキュール酒。ペルノにリカールは水割りだが気狂ひ酒とはよく言つたもの、ペパーミントのジェット、ベルモットは白はドライマティーニに使ふから別として赤のマティーニ、カンパリ、柘榴の銘柄は何といつたか、それは変質して酢が出てしまつてゐた。ベイリーズや柑橘系のドランブイやアマレット、グランマルニエなどエスプレッソに加へても美味いが一瓶あれば十分なのに。そんなリキュールを続けて飲んでゐるとかなり血糖値が上がるのではないか、と心配だが兎に角、安いウヰスキーやウオツカに混ぜるなどしてグランマルニエ一瓶残してリキュールはだうにかなくなつた。そしてウヰスキーである。何だか貰ひもので貯まつてゐる日本のやたら高値になつたウヰスキーやバランタインの30年もの、台湾の噶瑪蘭などは一先ず飲まずに飾つておくとして、日本酒は手ごろな日常酒が美味いと書いたが如何せんウヰスキーだけはオールドパーであるとかバランタインでもせめて17年もの等、バランスの良いブレンデッドウヰスキーを飲んでしまふと常飲はフェイマスグラウスなのだが、これがけして美味いと感じられない。何だか一寸酔ふために、で飲むのが虚しい。そこで気付けで一寸呷るには烈酒にかぎる。中途半端なウヰスキーは置かずジンとウオツカが一瓶ずつあれば、それで良いと思ふに至つた……なんてことを綴つて「酒棚」なんて題をつけて、で百閒気取りで燈刻に御酒をいたゞくのである。
酒を飲んでいゝ加減酔ひが回つたところで、あつさりと啜る汁ご飯が美味い。鶏肉の湯飯。汁でも湯でもいゝのだが中国語では泡飯（pàofàn）と呼ばれ、この泡飯のほうが何だか美味そうに思へないかしら。
香港「雨傘運動」提唱者有罪 地裁判決 - 毎日新聞 https://t.co/1EGy5vYkKN
— 富柏村 (@fookpaktsuen) 2019年4月9日
もう４年半も前になる雨傘運動。これの首謀者と支援した民主派議員らに地裁で有罪判決。当初から首謀者は収監も辞せずとした実力行使で主義主張は別として数ヶ月に渡る幹線道路占拠が無罪放免とならぬのは当然。それでも、この実力行使の発端は行政長官選挙での普選実現せぬばかりか2013年選挙での事実上の民主派候補排除。これが実行された場合に民主派は占中（中環地区の実力占拠）公言してをり、それが現実になつたことで元々は政府の普選拒絶が原因といへるものなのだが。
