富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦三月初四

農暦三月初四。晴。鰂魚涌のKing’s Rd、香港島東の主幹であるこの道路は元々は筲箕湾道であつたが1935年にKing George Vの銀婚を祝し、この名(英皇道)となり、再開発で古いビルが取り壊されてゆくなか三角地に威容を誇る雑居ビルあり。瑞士樓(Swiss House)といふ。

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元々のビルの名前は建物に「≡章記樓字≡」と見事に残つてゐるが物業買収の主が名前に「瑞」の字があるのか「瑞士」として、これが漢語ではスイスなので英語名がスイスハウスとなつたのかしら。「瑞士」は香港でよく見かけるのだが一番可笑しいのが「瑞士鶏翼」といふ鶏翼を揚げて甘辛のソースをかけた地場の西洋料理。これは当然のやうにスイスにはない。1950、60年代にこれを食した西洋人に料理の名を訪ねられた伙記(給仕)が英語に不慣れで「甜雞翼」を“sweet” chicken wingと言つたところ発音悪く“Swiss” Chicken Wing,と聞き取られた……といふ話もある。新潮文庫『日本文学100年の名作』5巻(1954〜1963)の続きを読む。『贅澤貧乏』の森茉莉は高校生のときに『恋人たちの森』読んで以来。山川方夫(1930〜1965)は『待っている女』で、こんな短編の名手がゐたことすら知らず。この短編集は寂聴『霊柩車』で〆る。親の死と自らの半生記をこの短編に見事に収める、それを曝け出して更に文学に高める尼僧の覚悟。