富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

仰光に遊ぶ その④

fookpaktsuen2018-03-26

農暦二月初十。休暇の旅行はかうあるべきで何も予定なしで朝ぼんやりとのんびりと朝食で、かうしてゐたら昼になつてしまふから、とまだあまり暑くならぬうちにと出街。といつても旧市街を17丁目の方まで西に歩き25丁目あたりの市場を漫ろ歩く。日本から来れば、この迷宮に嘸ぞやぞくぞくするのだらうがアジア的混沌のなかに何十年も住んでゐると今更感動もないが、この密集感は他の市場より格別。ホテルに戻る途中、その地場の市場とは対局となるジャンクションシティの商場に寄つてみる。香港や新加坡と全く同じやうな今様の商店が並んでゐて実に面白くない風景だが実は混沌とした地場の市場も、それがインドでもジャカルタでもラングーンやチェンマイでも実は同じやうな店舗が並び同じやうに布や香辛料、生鮮食料品を売つてゐることでは違ひはないのだ。たゞそれを伝統的(良い)と近代的な消費(悪い)と見るかの違ひだけであつて……と今更ながら気づく。ホテル裏の路地で昼食済ませやうと思つたが平和(な)の経営する(のだらう)食材店隣接のレストラン「東京ラブストーリー」(なんて名前だ!)はチキンカレーが8,000ကျပもして同じ路地の「わびさび」といふ渋い名前の日本食堂も親子丼が5,500ကျပ也。そろそろ単調な緬甸料理にも飽きてゐたが普通の食堂に入り豚肉炒めとご飯注文すると(2,000ကျပ)その店に日本人の企業駐在員4人が入つてきて「ヤンゴンに住んでゐると倹約家になって」と昼飯も節約してタクシー料金も格安なのに500ကျပの違ひが気になる自分がゐる、市内も路線バスで異動がなれると楽と話してゐるのが聞こえる。社会主義体制の崩壊から軍政、民主化運動、アウンサンスーチーらの度重なる自由剥奪が続き反体制運動取材してゐた日本人ジャーナリスト・長井健司氏が軍兵士に銃撃されてからまだ10年。さう思ふと日本人がかうして普通にビジネスして路地の食堂で昼飯してゐられるのだから状況はかなり安定したといへば安定した。明日三月二十七日は国軍記念日。ホテルに戻りラウンジで珈琲飲みプールサイドで午睡。三島由紀夫の演劇論読んでゐたら面白い話あり。『鹿鳴館』の稽古中でのこと。杉村先生演じる朝子が二十年会はずの子・久雄(仲谷昇)に再会し「あなたの左の膝の傷あとを私は知っている、あなたが這い/\していてハサミで怪我をしたものだ」と母子の関係をいふ場面、中谷昇が自分の膝も見ず手も触れず一心に朝子の話を聞いてゐるのが「新派の演技としては当然」だが、それを見てゐた中村伸郎が「もし、これが先代鴈治郎だったら」と「からだをギクシャクさせてハッとなり、手を膝に当てて大げさに辷らせて床に手をつく大芝居を真似てみせた」のだといふ。想像しただけで思はずプールサイドで大笑ひしてしまひファランに連れられてゐた若い男娼に怪訝な顔をされてしまつた。夕方、ホテルと隣のスールスクエアの商場地下にあるスーパーMarket Placeに行き残つた現金で珈琲豆など買ふ。4日前に空港でUS$100両替して、まだ1/4ほど30,000ကျပあるのだから物価も安い上にカネを使はず。ラウンジで4日目のハッピーアワー。軽く夕食もそこで済ませ客室に戻りチェックアウトまで2時間半ほどあるので転寝して風呂に入り荷造り。晩十時にホテルをチェックアウト。ホテルのアルファードで空港まで送つてもらふ。風呂の栓が不良なだけで申し訳ないが助かつた。ヤンゴンに限らないがアジアの都市で旧市街はインフラも整はぬまゝ郊外の開発区の発展続き問題は交通網が追ひつかず今日ヤンゴンでわかつたことは道路沿ひは開発進み清潔なのに対して鉄道沿線は開発進まずバラックが立ち並びゴミに溢れてゐること。深夜11時前にヤンゴン空港に来ると、このあとのフライトはソウル行きの大韓航空、北京行きの中国国際航空、香港行きのキャセイドラゴンと最後は26:25のドバイ行きのエミレーツのみ。ラウンジに寛ぐがさすがに眠い。
朝日新聞が一面トップで「改憲発議 年内困難に」と森友での晋三支持率急落、総裁三選も不透明によるもの。晋三の傲慢に対して潮目変はつたのはやはり一昨年夏の天皇退位発言からで、それでまず改憲日程が微妙になり昨秋の解散総選挙は小池希望の騒ぎで晋三に勝ち札与へたものゝ森友が思はぬ展開見せ今日に至る。政治は面白い。だが、このレベルとは恥ずかしい話だが自民党の党是たる自主憲法制定も結局のところ森友レベルの問題で左右されるのだから。昨日は自民党の党大会。本来であれば安倍三選で改憲の総決起集会のはずが思はぬ晋三失速で晋三の総裁挨拶はお詫びからだつた由。さらに毒饅頭のやうな「お土産」話題に。参加者に配られたのが晋三の似顔絵の描かれた「書いて消せる!マグネットシート」ださうで自民党の公式アイテム。この時期に「書いて消せる!」は洒落にもならぬが党大会で司会者が更に「お土産は書いて消せるマグネットシートです。何回書いても消せますので、どうぞ何回でも書いて消してください」と「連呼」してゐたといふ。
毎日新聞(風知草)で山田孝男も厳しい(こちら)首相夫人や政治家にも頼ったが<産廃の上に小学校を建てる非常識>に財務省が加担した記録が一番効いた。首相答弁に合わせた公文書改竄はさらに深刻な問題に違いないがまずは森友の原点であり財務省が文書の存在すら認めない交渉の経緯について証人に聞いてみたい。