富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

憲法70年

fookpaktsuen2017-05-03

農暦四月初八。灌佛會(くわんぶつゑ)で祝日。長洲島では長洲太平清醮(饅頭祭り)に数万の人出。譚公寶誕でもある。さすがに疲れて今日は休暇。だが書室の整理をして夏の帽子を出し椿油で食箸や薩摩柘植の櫛の手入れ。箸はミサイルより剛し!、一度、トランプのあのフェイクな前髪を櫛でオールバックにしてみたい。掃除などしてゐると昼。午後5kmほど久々にジョギング。摂氏31.3度はさすがに暑い。家人が筲箕灣にあるドイツ料理屋に行かうか、と。筲箕灣には香港でも最も有名な譚公廟あり。第二次世界大戦の末期、戦闘機からの爆弾攻撃で譚公廟の前におちた爆弾は不発で、その時も譚公廟のご加護とされたといふ。譚公廟の参道のやうな東大道は獅子舞など賑はひニュースでは朝からかなりの混雑と報じるが遉がに未だ明るいが譚公廟も閉まり龍舞も終はれば、と思つて晩六時ころ出向くと獅子舞も片付けで通りに三角旗がずらりと並ぶ以外は普段とおり。そのSchneeといふドイツ料理屋も大東街で相変はらずいくつかの飲食店はブームで長蛇の列。アイスバインを揚げたナントカといふ肉料理が名物でずいぶんと注文入る。これを食すと脂も抜かれ塩加減がかなり抑へられ美味。それでも食べ残し持ち帰り。
憲法記念日憲法改正は2020年!と読売新聞は自民党党紙といふより最早「晋三ファンクラブ」の機関紙で晋三のインタビューが一面トップ(こちら)。9条につき自衛隊合憲化と強く踏み込む。これまで改憲は環境権など当たり障りなきお試し改憲路線だつたものが「自らが首相のうちに」といふこの意欲。それにしても「合憲化」ということは自衛隊違憲だといふのか?と共産党の志位委員長。確かに共産党ですら9条でも自衛隊の現状での存在は解釈で容認なのに。それを敢へて9条に「自衛隊」書き込めば「単に存在を追認するに止まらない」と。御意。折角の憲法記念日なので産経も見てみると「憲法70歳、何がめでたい」と(笑)一面トップからはちゃめちゃに産経らしいが反面、電子版で憲法特集トップは最高裁長官「改憲、国民的議論に委ねるべきだ」と朝日のやう。それに対して朝日はこのところ現行憲法ぢたい米国……といふより進駐軍謹製だが、それに至る過程として何故さうなつたのか、に力点を置き、その欽定憲法が70年も変はらず維持される意義を説く。今日の一面トップもGHQ憲法草案に昭和天皇が「いゝんぢゃないか」と宣はれ幣原首相が腹を決めたといふ宮澤俊義博士の忘備録の記述取り上げ(こちら)。それにしても俊義先生ともなると走り書きも達筆。ついでゝ触れておくと日経是々非々新聞は「身近なところから憲法を考えよう」といふ社説(こちら)の通り改憲するのかしないのかも曖昧ではあるが「形式よりも中身。国民が憲法を軽んじれば何が起きるか。憲法の書きぶりは大切だが、それを日々の暮らしにどう生かしていくのか」と立憲主義に基づくぎりぎりの矜持みせる。
朝日新聞憲法記念日に敢へて護憲派に厳しい長尾龍一・東大名誉教授に「日本国憲法の運命」インタビュー(こちら)は興味深い。長尾先生も指摘する戦後憲法70年の安定性。9条の解釈改憲も(晋三以前に)解釈改憲の限界など「とっくの昔に超えている」での今更どこが限界なのか?とした上で「条文を存置しておくことの政治的意味もそれなりにあって」「条文と現実を接近させる価値の方が大きいという判断がなかなか主流にならない」と。それに対して国民の意識伴はぬ晋三の「保守暴走」での改憲は看板倒れに終はるのでは?と(朝日的には落とし所はこゝか)。冷戦後にフランシス=フクヤマ的「世界の終わり」は訪れず「宗教戦争期の狂信と古風なマキャベリアリズムが復活」で「人間はえらくならないことを実証」と長尾先生はニヒリズムを見せるが、それでも「政治的英知と聡明さの価値がなくなるわけではない」として北朝鮮だテロだの(狼が来た的な)時代に老齢期に入つた日本は「おちつき」を失はないやうに、と。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12920951.html