富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

弾道ミサイルの脅威、マンセイ!

fookpaktsuen2017-05-01

農暦四月初六。晴。陽暦五月初日で労働節。立て万国の労働者〜♪と歌ひたいが当世、労働者が立ち上がるとトランプやルペンを支持するから怖い。おかしな世の中。休日出勤で官邸で残務整理。昨年春に廃業のOMASの万年筆、このインクボトル壺のデザインも好きでインクは他社のものを入れ替へて長年愛用してきたがプラスチックの蓋が劣化してしまひインクが漏れる。 新聞紙の上に置いたら、まるで禅宗の坊さんの一筆書き*1のように新聞の裏面の広告がとてもいいデザインになつてゐた。早晩に銅羅湾で家人と待ち合はせIKEAへ行く。連休中でとんでもない人混み。この連休中ずつとIKEAに住んでゐるのか?と思ふほどソファやベッド、狭いショールーム(香港の狭い居室模した空間に家具を見事に組み立て見せるのだから、これがホントのショールーム)に普段の生活のやうに寛ぐ人々。そんな中を浴室のランプ、安い額縁、踏み台など贖ふのに歩くのも難儀だが家人はビルの横の人気のない地下に降りるエレベーターからIKEAの迷路の抜け道まで忍びの者の如く熟知ですんなりと。お見事。昨年8月の岩波『図書』読む。

この日剩のカウンターを見てゐると平日の朝や昼が一番多く周末は減り休日、とくに大型連休になるとぐっと目減りするのは、いかに皆さんがプライベートの時間は有意義に過ごされ仕事に行つてもまだ仕事気分にならない朝や昼すぎの気怠い時間に仕事場でネットを見てゐるか、の証左。それこそ健全。不健全はありもしない北朝鮮の脅威(あるとしても朝鮮戦争以降マンセイ!ぢゃなかつた慢性的なもので昨日今日の話ではないのだが)それで風が吹けば桶屋が儲かるで何か自己都合のいゝことをしたい人たち。だがその人たちは少なくとも悪意があるだけ真っ当なわけで、それがあることも気づかず悪意に翻弄され悪い方向に靡いてしまふ市井の人たちこそ実は他意がないからこそ扱ひが難しい。それが高校の1時間目と下校前のHRで弾道ミサイル警戒を生徒に指導してしまふ茨城県進学校であつたり建物の中に避難してとしか言へない山形のS市役所であつたりする。さういふ市民が多数ゐるから晋三や国軍派は海上自衛隊初の米艦防護なんて破廉恥なことが堂々とできる。国が威勢ならぬ虚勢を張るのは北朝鮮ばかりか日本も同様、少なくとも北朝鮮の方が独裁体制維持といふ名目のための国民に向けての虚勢であるから理解しやすいが北朝鮮のそんな自慰行為に反応して自衛隊を動かしてみたり、韓国も驚いたその極みが東京メトロの全線運転見合せなど北のお坊っちゃまは抱腹絶倒だらう。戦争の怖さより寧ろ人間がこれほど劣化すると戦争を起こしてしまふのでは?といふ人間が怖いと思ふ。日本も日本だが香港もインドネシア大統領の二日間の来港で超級警護体制。滞在先等で警備の徹底どころか空港からの移動も最高レベルの警察による監視下で無線による爆弾操作など防止に電波妨害するための特殊車両(なんでそんなものまで香港のやうな「一都市」に必要なのか)まで配置して空港ではこの車両による妨害無線で空港管制塔が飛行機を結ぶ無線も一時、音声に雑音が入るなど被害があつたといふ。インドネシアの大統領がテロで狙はれるリスクは低く印尼政府がこんな厳重警備を香港に求めるとは大統領の人格からして考へられず当然だが香港側の過剰措置。その目的は7月の香港返還20周年で習近平国家首席来港に万全な警備体制敷くため。自国の元首が一地方都市訪問に対して、その警備演習で隣国の元首を借りるとは失礼極まりなし。香港政府のバカ官僚が北京の顔色見てする判断だからここまでキチガイ沙汰となる。いくら口で香港独立叫ぶ若者たちはゐても彼らが習近平の車列に爆弾しかけることはあり得ない。少なくとも20年前の江沢民来港の際は彼らの車列が花園道を走行する際に道路は全て車払ひさせられた中を高速で走り去つたが道路沿ひに「歓迎する市民」も動員されてをらずポツンと歩道を歩いてゐた私は警察の規制もなく江沢民の隊列を見送り後続のミニバスの窓を開け金鐘の高層ビルを物珍しさうに眺めてゐる男が「あれ、見た顔だ」と思つたら中国外交部の報道官の王毅(現・外相)だつた。それくらゐのんびりしたもの。それを20年でこゝまで警備機敏にしたのは中共なのか、といふとさうではない。世間が自意識でさうしてゐる。晋三など怖くもないが、この世間が怖い。

*1:久ヶ原の粋人T君に「禅宗の坊さんの一筆書き」は圓相といふのだと教へてもらつた。