富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

yellow-crested cockatoos

fookpaktsuen2017-01-05

農暦十二月初八。暦では小寒といふが今日も摂氏20度超。昨年12月の平均気温は摂氏19.6度で平年より1.7度高く12月としては1968年、1994年に続く暑さの由。晩に家人とHappy Valleyで待ち合わせ佳餚美饌(Gastronomic Passion)に飰す。奕蔭街の向かひの料理屋はミシュラン香港に載つてゐるらしく慌たゞしさう。
▼「黄紋付きオウム」といふのださう、yellow-crested cockatoosといふ鳥を香港で初めて意識したのは1990年代始めに今はなきTom Turk's Fitness Ctr(Citibank Tower→中国工商银行大厦)で室内のジムなのにガラス窓の向かふ=香港公園の方から耳障りなけたゝましい鳥の鳴き声聞こえ、だが眺めてもそれらしき鳥はをらず不思議に思ふこと何度かあり、それでも樹木に数羽止まる白い鸚鵡の姿あり。まさか、あのオウムが?と驚いたが南アジア原産のオウムがペットとして香港で飼はれ、それが放たれ野生化したら香港に適合したさうで繁殖。まぁ兎に角、耳障り。これが絶滅危惧種で下手に捕獲したり育てたりは不可。香港での繁殖数は200羽ほどで世界では(インドネシア筆頭で)第10位の生息数なんださう(SCMP)。誰が愛玩のため連れてきて野に放つてしまつたのか。
芝翫襲名の橋之助が大成駒についての思ひ出話が面白い(朝日新聞)。

まだ小学1年生のときだ。自分は「重の井子別れ」の三吉役、歌右衛門は生き別れた実母の役を演じていた。三吉は歌舞伎の子役としては最もセリフの多い大役だ。何日か無難に役をつとめたある日、楽屋にあいさつにいくと歌右衛門から「いい加減にしろよ。何をしているんだい」と一喝された。わけがわからず涙をこらえていると、歌右衛門は「役者は舞台に慣れてはいけない。行儀の悪いことだ」と諭した。「人間は楽な方にいく動物。どこか流れ作業で演じるようなそぶりが出ていたんでしょうね」
型を守ることが大切になる歌舞伎だが、毎日の芝居を同じにやらなくてはいけないというわけではない。もっと自由なものだというが、しかし「それは付け焼き刃ではダメです。山ほど稽古して、本を読み込んで、役が自分の血となり肉となることで、ようやく芸を究められる」。逆に、演じていても自分の中で「おい、これでいいのか」「そうじゃないだろう」と5人、6人の声がすることがある。「そんな時は芝居もつまらなくなる。一つに重なった時、役になりきれるんです」。忠臣蔵の七段目で歌右衛門が演じたおかるをビデオで何度も見返しているが「そこにはおかる一人がいるだけです。天才、いや天才以上の人でした」と大おじへの尊崇を隠さない。
歌右衛門が亡くなったとき、自身はまだ30代半ば。「今、会いたいですねえ。楽屋や稽古場でいろんなことを言われましたが、耳に残っていないこともあるはず。今ならきっと、それもわかると思うんです」

と岡本町の叔父さん……おっと、違ふ/\、先代の芝翫の父(5代目福助)の弟が大成駒なんだから橋之助から見たら大叔父といふことになるが、それにしても「役者は舞台に慣れてはいけない、行儀の悪いことだ」は格言。それの「いい加減にしろよ、何をしているんだい」も大檀那の声色でやると何とも。この記事、おそらく書いてゐる記者が芝居のこと、そして何より大成駒のことをわかつてゐる感じあり橋之助もさぞかし話し易かつただらう。ところで、この記事の読者プレゼントが新・芝翫のサイン入り写真集なのだが応募の宛題が「中村芝翫プレゼント」。芝翫プレゼントといはれると何だか神谷町(亡くなつた父芝翫)が当選者の自宅にサプライズで現れ傾城か何か素踊りで披露しさうだわ。