富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

上皇といふ思し召し

fookpaktsuen2016-10-13

農暦九月十三日。昨日に続き早晩にFCCで軽く夕食を済ませ市大会堂。昨晩に続き香港蕭邦社主催の香港国際ピアノコンクールの千穐楽ギャラ。今晩は陪審役のピアノ大家が地元オケと組んでのピアノ協奏曲尽くし。José Serebrier指揮。Peter Donohoeでベートーベン5番。続きPeter Frankl先生がシューマンイ短調Op.54のはずが体調不良で休演でDonohoe先生が続けてピアノ。最後はパスカル=ロジェ師のサン=サーンス5番。ベートーベン5番はオケがついてゆけずシューマンは可もなく不可もなく最後のロジェ先生は素晴らしかつた。3年後のこのコンテストでまたピーター=フランクル先生、ゲーリー=グラフマン先生らのご尊顔を拝することはできるのかしら。貝多芬が終はり幕間に白ワインを飲まうとカフェに出てくると携帯の速報ニュースでプミポン国王逝去の報らせ。クラシック通A氏によれば新華社が本夕一旦流したが消してゐたさうな。タイの情勢不安定の可能性高いなか対タイの中国の力が気になるところ。A氏から「ノーベル文学賞誰だか知ってる?」と尋ねられ一瞬「ついにハルキムラカミか」と思つたらボブ=ディランだといふ。はぁ?……でも詩人か。中学の時にボブディランの“Blowin’ in the Wind”の歌詞がストンとアタシの中で落ち着いたこと思ひ出す。英語の歌詞ではジョンレノンのイマジンの次が、これだつた。文学賞がディランでもいゝんですけどね、この路線でゆくと芥川賞みたいに年少化とか突飛な受賞者選ぶことになりゃしないか、と。
天皇生前退位に関する論説は有識者会議を前に最早出揃つたかと思つてゐたが今日の日経で始まつた連載の内容には驚いた(こちら)。

2010年7月22日夜。皇居・御所の応接室で、天皇陛下が自らの考えを切り出された。天皇・皇后両陛下と相談役である参与、宮内庁幹部による参与会議で、生前退位が初めて議題に上った。
天皇陛下が明かされたのは「80歳をめどに譲位し、上皇になる」との考えだった。出席者は「大正期のように摂政を置かれるのが適切では」などと述べたが、陛下は当時の摂政設置が大正天皇の意向に反していたなどとして「摂政では駄目だ」と否定された。
会議は長引いた。ひと区切りついた深夜、両陛下がいったん席を立たれたところで再び話が始まり、全員が立ったままなお数十分間議論を続けた。両陛下を除く全員が生前退位に反対し、結論は出なかった。

有識者会議が始まるといふタイミングで、また随分と具体的なことが日経に宮内庁から漏れたこと。聖上が上皇といふ提案を自らされてゐたとは。父君が大正帝の摂政となつたことが当時のどれだけ政治に翻弄された結果だつたか、昭和の戦争での政治家不信。それでもかうした天皇の考へ、発言ぢたいどれだけ象徴たる天皇の政治的発言と見られるか。憲法遵守を誓はれる天皇自ら憲法にある天皇の立場から逸脱と受け止められるリスクかなり高し。
▼昨日、立法会選挙後初の議会開催。最初、議員の就任専制だが本土派の若手議員数名が所定の宣誓文に加筆訂正加へ宣誓不履行と扱はれ予定通りの混乱(こちら)。「Hong Kong is not China」といふ布を羽織つて登壇、宣誓で「為香港可持續發展服務」といふくらゐならぎりぎり許容範囲かも知れぬが、普通選挙実現はダメで英語での宣誓で“China”を「支那」だとか“People's Republic of China”のRepublicを“re-facking”と発音したりのしたい放題。少なくとも中共政権下の香港特区の立法会に立候補し議員になつたのだから「悪法も法なり」ならぬ「悪政も政治なり」で立法会のルールとマナーには従ふべきで、その中で具体的な審議で「為香港可持續發展服務」すれば良いのでは。あまりに稚拙すぎ。彼らから見ると梁“長毛”國雄君らですら穏健派に映るから。
▼アタシも酒をよく飲むわけで酒瓶が陋宅マンションのフロアでゴミ置場に並ぶのは隣近所から見ると誰か客が来るでもなく、いつも静かなのに、まるで蟒蛇(うわばみ)でも棲んでゐると思はれていやせぬか、ちと心配。だが立派な方はゐるもので緒方貞子刀自(94)。朝日新聞(人生の贈りもの)わたしの半生より(こちら)。

1人で飲むとき私はやっぱりスコッチですよ。ご飯前に水割りでちょっと飲む。それから台所へ行ってあるものをかき集めて食べ物を作る。夕飯の時に飲むのはワインか日本酒ですね。何か飲まないと食事にならないもの。ジントニックも飲みます。米国の影響ですよ。二日酔いみたいなものはあまりないですね。眠くなるから11時前には寝ています。酔っ払ってから本を読んだり、物を書いたりはしません。そんなことをしたら効果が上がらないもの。朝は8時には起きています。毎朝、新聞がどさっと来ます。日本の主要紙に加えて、英紙FTや米紙のインターナショナル・ニューヨーク・タイムズも取っています。時差ボケの時もワインでもコアントローでも何でもいいから飲んで寝ちゃいます。

……この緒方刀自の生活のリズム。かなり似たところあり「これじゃまるで私だよ」と思つたが晩11時に寝て朝8時まで9時間睡眠できるとは、同じ老人としてこれは本当に浦山しいかぎり。