富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

夏の東都

fookpaktsuen2016-08-19

農暦七月十七日。朝、最近は朝イチの出発ばかりだが家人と空港。ラウンジで朝食。CX548便で一路、羽田。B777-300のプレミアムYだが斜め窮屈Cよりは座り心地良し。午後の東京は快晴。気温も摂氏30度くらゐで暑くない。モノレールで浜松町。タクシーで麻布鳥居坂国際文化会館。下榻。早晩に家人と麻布十番。香雅堂で白檀のお香贖ひ居酒屋山忠。二度満席で入れず今晩は予約。東麻布の魚屋が始めた居酒屋で良い魚を手頃な価格で供す。奥麻布のバーHの口開け。マティーニのあと「これを飲んでみてください」といたゞいたのがマティーニ&ロッシの白のベルモットで、ご亭主曰く当時でもビンテージ物を10数年前に仕入れ他の保存用のブランデー等に紛れたまゝで最近この存在に気づいたら茶濁に変色してをり「こりゃダメだ」と思つて抜栓したら、これがまぁ風味円やかなお酒になつてゐたといふ。暗闇の麻布の路地で虫語を聞く。

永六輔氏逝去で矢崎泰久氏の追悼がない、と思つてゐたら週間読書人8月5日号にあつた。

遊び心を忘れずに楽しくやるのが私たちのモットーでもあった。しかし目標とするものは反権力、反体制、反権威だった。(略)永六輔は昭和ヒトケタの星でもあった。やがて誰もいなくなる。二度と戦争を許してはならないと誓いあった仲間たちがポツリポツリと去って行く。今の日本の現実を見れば永さんの死がどれほど重いものであるかをわかっていただけると思う。

この号に『薔薇刑』の第4次新刊にあたり細江英公浅葉克己、松本徹の鼎談掲載あり。三島の写真といへば細江英公のこの写真集だが撮影されたのは三島自決の8年前で市ヶ谷のあの日、細江英公は香港に仕事で来ていたさうな。
この号の論調(8月)大野光明より抜粋

いま、日本社会ではマスメディアに中立性や公平性を求める空気が強くなっている。だが現政権がマスメディアに圧力をかけ自主規制が行われているという単純な話ではない。問題は日本社会のありようそのものだ。「偏っている」という表現が地域社会、学校、職場などで日々使われているように読者や視聴者である私たち一人一人が中立性や公平性の必要性を内面化し欲している。

中立性がそもそもご誤解されてゐる、として挙げるのが国連の派遣で4月に来日したデイビッド=ケイの発言。中立性は賛否両論をバランスよく扱う姿勢ではなくジャーナリストが国家や資本から独立・自立しなければならないという理念」だとして、これがジャーナリズムの戦争加担の反省に基づくもの、その歴史じたい忘れ去られやうとしてゐる。このやうな状況のなかにあるのは特定の対象に対するバッシング、リンチのやうな報道のポルノ化だ、と。