富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2016-07-05

農暦六月二日。不安定な天気。夕方には落雷で大雨。夜はまた晴れる。
バングラディシュでのテロ実行犯「エリートがなぜ過激思想に」とマスコミは騒ぐ。エリートが過激思想に走るのは、日本の戦前のアカ思想でも浅沼暗殺の山口二矢日本赤軍でも一緒。「頭良すぎて狂しくなった」で済ませりゃいゝだけのこと。最初からバカなら過激「思想」に走るわけもない。

イスラム過激派は根絶できない。政府が米国やイスラエルと距離を置いても日本人が狙われない保証はない。だが余計な恨みをかわずに済む分、狙われる可能性は減る。政治の最優先課題は国民の生活保護であり、結果が全てだ。虚構の抑止力に頼るべきではない。

東京新聞「こち特」で田原牧記者のデスクメモ。
▼不安定な世相で半藤一利さんのかういふ主張(毎日新聞こちら)をまさに「保守」と呼ぶのだろう。納得。

長く歴史を学んだ者として「歴史は繰り返す」とは必ずしも思っていない。「9条を変え、徴兵制を復活させる」といったプロセス抜きの政権批判に、人々はうんでいる。
むしろ中国や北朝鮮を念頭に安倍首相が「せまりくる危機」を繰り返し訴えれば、人々はその言葉に大きく動かされる。歴史は繰り返さないが、歴史をつくる人間に大きな進歩はない。

晋三の影にゐる岸信介の亡霊のやうな(それほど大物ではないが)日本をかうしたい、と願ふ所謂「革新官僚」たちによる憲法空洞化=立憲政治の危機は憂ふところ。
▼戦前の治安維持法と國體について築地H君より興味深い話を聞く。治安維持法は「国体を変革し又は私有財産制度を否認すること」が取り締まり対象なのは学んだ通りだが、この「國體」とは何か。一般には万世一系天皇奉戴したる帝国の謂であるとされてゐるが法制定時の若槻内相は国会での答弁は
即チ我ガ日本ニ於イテ今日日本ノ政體ガ如何ナルモノデアルカト申セバ、即チ立憲政體デアリマス、代議政體デアリマス。之ヲ破壞セントスル者ガアルナラバ、此法律ニ依ツテ取リ締マルト云ウノデアリマス。
続けて憲法の中身を変へることは立憲政体の否定にはならないが政体そのものを改変することは「國體の変革」であって許されないと。H君曰く
若槻内相の解釈にしたがうなら「憲法改正」を訴えることそのものは問題ないが、自民党の今次の改憲草案は立憲政治という国体を変革せんとする企図を持つもので治安維持法の取り締まり対象となる。
と。御意。また若槻内相は「鉄道を国有にしよう、鉱山を国有にしよう、水力電気を国有にしよう、農耕地を国有にしよう、是は私は決して私有財産制度を否認するものではないと思ひます」とも答弁。これは「日本の社会発展の次の段階での生産手段の社会化」かゝげる現在の日本共産党綱領もセーフのやうだ、と。これほどの見識が昭和に入ると大政翼賛や国家総動員になるわけで、これこそ若槻のいふ「治安維持法違反の国体の変革」そのもの。
フジロックフェスティバルにSEALDs参加で「音楽に政治を持ち込むな」といふ意見について(毎日新聞こちら)。

  • 音楽に政治を持ち込むことの是非?そんなのアーティストの自由です。聴く側は嫌ならフジロックに行かないとか、行ってもそのステージに近寄らなければいい。なぜ問題になるのかが分からないし、問題になる日本社会にむしろ問題を感じます。(坂本龍一
  • 今までもフジロックのアトミックカフェにはミュージシャンではない文化人や著名人が出演してきたけど、今回のような騒動にはなっていない。奥田君は「出るくい」だからたたかれた。ある意味、シールズでの頑張りが評価されたとも言える。政治に積極的に利用されているEXILE(2013年、安倍首相がライブに出現)やAKB(自衛隊のCMに出演)は今回騒いだ者たちからは批判されない。結局「権力にたて突く」行為自体を快く思わない、この国の精神風土がここには大きく横たわっているのです。(中川敬Soul Flower Union

新聞のさうなのだがマスコミに中立求めることでのぎくしゃく。

  • 「偏り」の反意語は「中立」より「多様性」であってほしい。多少、違和感を覚えるくらい音楽も言論も多様で自由な方がいい。

The Economist誌の先週末号の巻頭 “Liberalism after Brexit” The politics of anger - The triumph of the Brexit campaign is a warning to the liberal international order (こちら)の和訳記事(日経、こちら)より。英国のEU離脱派はEUの柵みからの自由を楽観的に志望したら結果、離脱を決定したのは所得格差など感じる市民の怒りだつた、として潔く

本誌エコノミストを含むグローバル化の支持者らは「官僚が間違いを犯し市民がそのツケを払ったこと」を認めなければならない。欠陥を抱えた欧州単一通貨の導入は、典型的なエリート官僚によるプロジェクトで経済の停滞と失業、EU加盟国間の分裂を招いた。複雑に作られた金融商品は規制の抜け穴を突き世界金融危機の引き金を引いた。それは経済を混乱させ税金による銀行救済とその後の緊縮財政につながった。

と語る。グローバル化の弊害などアタシですらわかってゐたことなのだが。政治家はグローバル化の恩恵を広く配分する代はりに、右派は実力主義に基づき自ら道を切り開くやう説いたが、その機会を全員には与へられず、左派は人種や環境、人権、性を巡る様々な権利の確立といつた問題に力を入れる。結局、恩恵の得られぬ人々は疎外感を味はふばかり、それがトランプやルペンといつた支持となり英国のEU離脱といふ決定を生む。それでも自由主義でやるしかない、と力説するのがThe Economistらしいところ。