富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2016-06-14

農暦五月初十。何時に寝ようが朝三時にきっぱりと目が覚めてしまふのは老いたからとはいへ、どうにかならぬものか。それでも目覚めれば頭も明晰で読書したり日記を認ためるには絶好なのだが。で数時間すると夜明け。今日は二つお気に入りを入手。一つはRiedel社製のワインタンブラー。通常のワイングラスからすると普通のタンブラーだが芳香も楽しめるデザインで今春の旧正月にWilliam訒達智兄の訒氏氏祠での盆菜宴にお招き預かつた際に同卓の方(香港の或るワイン協会の代表)が持参されたグラスがこれでワイングラスほど畏まつた場でなく気軽にワインには最適。宴会の卓で倒して溢れることもなければ手掴みでムシャムシャの食事で手が脂だらけでも握れるデザインはよく考へたもの。もう一つはパナソニックの卓上照明器具。湾仔の照明屋街に陳列してあるのを何度かバスで通りかゝり眺めてゐた。居間でラウンジチェアに寛ぐと本や新聞読むのに暗めのフロアランプではもう明るさが足りず。かといつて照度じたい高くしたくない。サイドテーブルに置く、センスの良い照明を探してゐたらこれを見つけた。晩に肉骨茶。

▼日経の連載(私の履歴書)で東宝名誉会長・松岡功氏(13)で香港についての記述あり(こちら)。

バンコクシンガポールを経て香港に行った。香港には「香港東宝」という現地法人があり、地元の映画館に東宝作品を1本1本売りに行っていた。香港では怪獣ものや文芸色の強い作品は喜ばれず、買ってくれるのはもっぱらアクション映画で「用心棒」とか三橋達也主演の「暗黒街」シリーズなどがスクリーンにかかった。
香港は東南アジアへの売り込み拠点でもあったから、会社も力が入っていた。地元資本との合作で、人気女優、尤敏と宝田明のコンビで「香港の夜」「香港の星」「ホノルル・東京・香港」の3本を制作した。

この尤敏と宝田明で「香港の夜」と「香港の星」は10 年前に見たが(しかも宝田明氏本人が来港での記念上映、こちら「ホノルル・東京・香港」は見てゐなかつた。ネットでチョイ見してみたが三部作の中では香港の実写ロケは一番少ない。
自民党も舛添の都知事辞職要求へ。所詮どうでもいゝことなのだらうが舛添庇ふと単に参院選で不利だから。それも「共産党の出した不信任には賛成できない、参院選に影響が出ないようにするには自民が不信任案を出すしかないだろう」(官邸幹部)てな発想。参院選は自民圧倒的有利といふがアベノミクス崩壊(って最初から発想からして崩壊してゐるが)、晋三の「反共」しか叫べぬ焦り、改憲の困難……の中で、とにかくシッチャカメッチャカ。野中広務先生の自民復党決定にも驚いた。5年前に全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長職にあつた広務さんは、この団体の長として政党色嫌ひ自民を離党してゐたさうだが今更齢九十で復党もないだらう。農協や医師会、生長の家などかつては有数の支持団体もつた自民党だが、この土地団体など藁にも縋るほどの背水の陣は本当は圧倒的有利じゃないのか、こゝで公明党と踏ん張れば2/3といふ衆参圧倒的多数で改憲までもつていけるといふ意欲なのか……たゞ選挙も「ソフトは電通、ハードは株式会社ムサシ」の掌上。それにしても広務先生には九旬で、このまゝ自民の党籍なしのまゝでゐてほしかつたところ。やはり骨の髄まで自民党なのかしら。
▼自分がイスラムについて本当に知識がないと思ふ。伊朗に拠点置くISIL系の「アルバヤン」といふラジオ局がフロリダのゲイクラブ乱射事件について

神の助けによつてカリフ国家の戦士であるオマル=マティーンは預言者ルトの信奉者が集まるナイトクラブで汚れた十字軍兵士ら100人以上を死傷させた。

と報じてゐるといふ。キリスト教ならルカとかマタイとかユダといつた名前や背景を知つてゐるがイスラムになると「ルト」といはれても何も知らない。この言説では預言者ルトは同性愛者で、そのクラブで週末に遊んでゐたゲイたちは十字軍兵士とは。凄い。だが、この「アルバヤン」なるラジオ局も本当にISIL系なのか、そも/\ISILとは何なのか、も全くわからないのだから。そんな「やっぱりテロか」の言説に対してテロどころか実はこの実行犯はホモ嫌悪どころか実は本人がさうだつたといふ、つまりホモのホモフォビア的が高じてゲイクラブでの乱射となつたやうな経緯が出てきてゐる(朝日新聞こちら)。これについて三橋順子先生が冷静に分析されてゐる(こちら)。

結局、アメリカの同性愛社会にも受け入れられなかった移民系ゲイ青年の屈折した心情による同性愛憎悪の蓄積・暴発という個人的な事情で片づけられるようだ。宗教も移民も関係ない、犯人の親子関係と個人的資質(ゲイとして非モテ)が原因という説。犯人がゲイとしてモテていたら、こんな悲惨な事件は起きなかった、のだそうだ。単に犯人がアホだったという説。
皆さん、ほんとうに矮小化が上手で、ほとほと感心してしまう。
なぜ、そうした同性愛憎悪が喚起され特定の人の心に蓄積されるのか?という社会・文化構造的分析こそが必要なはずなのに、そうした分析の試みは寄ってたかって無効化されてしまう。そして、同性愛憎悪の構造は揺らぐことなく温存され、また「ヘイトクライム」が繰り返される。

御意。それにしてもフロリダの銃乱射事件でゲイ、同性愛といふ言葉がかなり罷り通る。オネエキャラのタレントも珍しくないのは今に始まつたことではなし。それでもまだ「性的マイノリティ」なのか。LGBTだの社会的に立場を認められたいといふ人はそれが性的嗜好に限らず主張して基本的事件と平等を求めればいゝし、逆にゲイでも「そんなことどうでもいい」「かまはないで」といふ人も明らかに一定数あるいは半数以上?ゐるはず。陰翳禮讃。今度はむしろさういふ逆の意味での〈拒み〉が出てくるのではないかしら、けしてLGBTみたいな〈運動〉にはならないだらうが。