富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2016-04-03

農暦二月廿六日。朝はスモッグの向かうに太陽が昇つたが曇。午前中はホテルでのんびり。昼に退房。路線バス乗り継ぎ台北101南の四四南村(信義公民會館)。元々は台北郊外で外省人村だつた眷村、台北市街が東に拡大し眷村の北側に市役所、世界貿易中心や台北101ができて信義路挟んだこの村も再開発されるか、といふところ旧村の建物そのまゝ残し文化エリアに。台北には華山1914や松山文創などこのテの文化地区点在し若者がそこでロハスなカフェや小物屋を営んで何か良い雰囲気醸し出してゐる。それくらゐ生活や生活感が充実したのか、充足したのかと理解できるが現実的には製造業の大陸への進出、長引く不況で大学は出たけれど、で就業先もパッとしなければ所得水準が10年以上まったく上昇しない、といふ状況で下手に給与取りになるなら自分で好きなことをして……と考へる若者少なからず。今晩8時すぎのフライトで香港に戻る予定だつたが昨晩遅くから家人体調今ひとつで夜までふらふらする元気もない。ホテルへの復路のバスは信義路から乗り換へなしでホテルに戻れたので荷物受け取り午後2時すぎに松江路&行天宮から桃園空港行きの「飛狗」リムジンバスに乗る。5日前に空港で見た大有バスと同じシートは2-1のデラックス仕様だつたが座席のリクライニングもほとんど故障。空港で出発が直近の16:20発に変更できたが(預け荷物もあつたのに)40分後でゲートに急ぐと搭乗最終案内で滑り込み。FTの週末版読み終はると香港着。FTにはZaha Hadidの追悼記事。そして彼女が設計の紐育チェルシーのマンション物件広告。現役の建築家の急逝とは、こういうことか。19時すぎには帰宅。台北で購入の雑誌『pen+』の台湾特集本を台湾から香港に戻つて読む。


▼笹沼弘志(静岡大学教育学部教授・憲法専攻)の「国旗国歌の強制と自立し自律する創造的人間の教育」こちら。論理的思考といふのはかういふものか、と敬服の思考。

国旗掲揚・国歌斉唱を求める「お願い」というのは、学生への教育内容についてのお願い、このような内容の教育をしなさいということにほかならない。学校での国旗掲揚、国歌斉唱要請が教育内容についての要請であることを、文部科学省は十分認識している。だから、学習指導要領で定めているのだ。ただし、学習指導要領はただの行政命令に過ぎないので、これが憲法や法律に違反するのであれば当然違法となる。しかし、これについては、敢えてここで論じない。ともかく文科省は学習指導要領を根拠に学校を指導しているのは事実である。
これに対して、大学に文科省が特定の教育内容を教えるように指導する権限は法的に存在しないし、だから大学の学習指導要領も存在しない。
学校教育法施行規則により小中学校、高校等の教育課程は学習指導要領によるものと定められているが、大学については学習指導要領がなく、大学設置基準の定めるところによるとのみ規定されている。大学設置基準19条は「大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする」と教育内容については大学が自主的に定めるものとされており、国が教育内容を左右する権限は排除されている。それはなぜか。日本国憲法23条が学問の自由を保障しているからである。
安倍総理は昨年の国会答弁で国旗掲揚・国歌斉唱が「新教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべき」だと主張した。確かに第1次安倍政権が戦後レジームの総決算の第1弾として制定した2006年新教育基本法は、2条5号で「我が国と郷土を愛する……態度を養うこと」を教育の目標として定めている。しかしそれは、「学問の自由を尊重」するという条件つきである。また、7条2項は「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と定めている。安倍総理肝いりの教育基本法をもってしても、大学の教育内容に国が介入することは許されず、政府が大学に国旗掲揚・国歌斉唱を求めることはできないのである。

朝日新聞では比較的晋三政権に近いと思はれてゐる曽我豪記者、この人は民主党政権交代の時も鳩山に近いところにゐたが、いつもその立ち位置なのだらう。

  • 安倍政権は、選択肢の拡幅期と絞り込み期を繰り返す。その緩急のつけ方と、最後まで決めず真意を明かさないやり方が、おそらく首相の政局運営の勘所であって、それを見誤ると首相の術中に陥るのだから厄介である。

と4月から書き手に加はつた「日曜に想う」での指摘(こちら)。