富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

牛池灣村

fookpaktsuen2016-03-28

農暦二月二十日。耶蘇復活祭。晴。こゝ数日少しGastroenteritisのやうで悪寒あり。天気もいゝので家人と昼前に路線バスで海底潜り彩虹へ。牛池湾。地産獣による開発を未だ免れてゐる市場街。新志興至尊燒鵝大王で燒鵝飯を飰す。「至尊燒鵝大王」なんて尊大な名前だがなか/\何うして実に美味い焼鵝喰はせるから大したもの。それで早茶の點心から人夫らの昼餉のがっつり飯まで供すから食肆は商売繁盛で露天ばかりか対面の空き店舗や倉庫まで借上げ店舗増殖中。牛池湾村徘徊。トタン張り付けの苫屋ばかりのやうだが、よく見ると石造の頑強な家屋もいくつかあり。路線バスで観塘碼頭。船で北角に渡る。一旦帰宅して一ヶ月ぶりにジョギング。晩は温かい蕎麦を啜る。早寝。

▼長谷部恭男&杉田淳の時事放談(今日の朝日)が痛快に面白い。長谷部先生が図を書いて語るに

争点になり得る政策上の論点ABCがある。真央さんはそれぞれについて、Aは▲1、Bも▲1、Cについては+3と評価。樹里さん、結衣さんも同様に+と−がある。さて、「△党」がABCを全部やると言いました。△党への支持は3人とも+1になります。ところがABCについて個別に賛否を問う国民投票にかけると、すべて2対1で負けます。それなのに、ABCをパッケージにして選挙を戦い、政権をとった後でそのうちの一つだけを取り出し、これが争点だったのだ、有権者は「イエス」と言ったではないかという論法が、いったいどこまで通用するのか。

と小学生でもわかるやうに晋三の安保や改憲での詭弁を揶揄。長谷部先生の「頭の体操」はもう一つ、小選挙区制について。

9つの小選挙区があり、有権者数は各9人だとします。全人口は81人です。ある政策について国民投票をやると41人がまとまらないと過半数が取れない。ところが小選挙区制では、各選挙区で5人を獲得すれば勝てる。全体では五つの選挙区で勝てば議会の過半数を獲得できるので、5×5=25、81人中25人をまとめればいいわけです。(しかもそれは投票率100%の場合で)投票率が6割を切り、各選挙区で5人しか投票しないとしましょう。すると、各選挙区で3人まとめれば勝てる。3×5=15、81人中15人をまとめれば議会の過半数を確保できてしまう。これで、ひとつの争点に対して明確な民意が示されたと言えるかは、考えどころです。

自民党「圧勝」の実際がこれ。それを赦すのが国民。選挙制度小選挙区制にしてしまつたのは細川殿や河野洋平らの誤謬だが、先づは投票率を上げないことには何しやうもない。
梅原猛大内兵衛回顧(今日の東京新聞夕刊より)。

大内氏は東大で経済学を講義したが、その経済学は明らかにマルクス主義の経済学であった。ユーモアのセンスをもつ彼の講義は名講義であったという。おそらくそのような講義を聴いた学生の多くが大内氏マルクス主義解釈を肯定する模範的な試験答案を書いて優秀な成績で卒業し、あるいは官庁に、あるいは大企業に入り、戦後の日本資本主義の発展に大きく貢献したのである。学生たちはマルクスの語る革命など全く実現不可能であるばかりか、甚だ悪しきこととし、大内氏の講義をただ単位を取るために聴く漫談とでも考えたのであろう。秀才の誉れ高き学生たちが少なくても経済学において思想あるいは学問を全く尊重しなかったがゆえに日本は見事に高度に発達した資本主義国になり得たといえようか。

何だか兵衛先生にも甚だ失礼な内容だが当時の優秀な学生はそこまで打算的に兵衛経済を受講したとも思へず。寧ろマル経でも卒業すればさっさと転向どころか忘れられるくらゐ単なる若き情熱にすぎなかつたのでせう。