富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

本土派いふなれば「尊港攘共」か

fookpaktsuen2016-02-10

正月初三。曇。午後遅く家人と散歩がてら西湾河に食料品買ひ出しに出た程度でだらだらと無聊を託つ。この5日間の連休でかなり本を読む。今日手にしたのは磯崎新の『建築における「日本的なもの」』だつたが、とても余暇の片手間に読める内容に非ず断念。晩に餃子茹で飰す。九龍城の新三陽が当店オリジナル、といつても樽買ひの酒を新三陽が瓶詰めしてゐるだけだが、これが安くて美味かつたが売つてをらず陋宅にあつた最後の一本を空ける。テレビの旧正月特番で三日連続でVS嵐といふ娯楽番組惚けつ眺める。明日から日常復帰だと思ふとうんざり。仕事用の鞄の中身を整理して(これは毎週日曜晩のルーティンだが)睡眠導入剤服し何度読み返しか相政さんの『侍従とパイプ』読みながら寝入る。
▼旺角の魚蛋騒動は「暴徒」たる本土派の若者諸君の検挙相次ぎ実際に暴力行為に関はつてゐない本土派組織の幹部も扇動等いくらでも付けられる容疑で逮捕続出。世間はもはやこれを警察の過剰措置とは取らず。香港に言論の自由も思想信条の自由もなければ暴力行為に出ざるを得ぬところだが少なくとも香港には政治的自由があるのだから「小販の権益を守る」と警察相手に戦つたところで暴徒と見なされても致し方あるまひ。財政司司長の曾俊華が「絕對唔係本土行為」(これは本土行為に非ず)ときっぱり。本土派なら香港と香港的価値を愛おしむべきで小販擁護名目の暴力行為はそれに当たらず、と。「本土派」という言葉が日本語でピンとくる説明がなかなかない。尊王攘夷を捩れば〈尊港攘共〉か。
財政司司長曾俊華昨主動回應事件,稱當日警民衝突是由一小撮無理性的人挑戰警方而觸發,批評行為超越法治底線,又指「絕對唔係本土行為」,他相信本土人士會珍惜香港及愛護香港價值。被問到是因小販受阻而引發衝突,曾認為是「攞嚟做藉口掩護唔理智嘅行為」。(蘋果日報
▼岩波『世界』1月号で長谷部先生が「日本国憲法に緊急事態条項は不要」と書いてゐて日本で一つ困る点は司法が「統治行為論」で以て日米安保自衛隊の合憲性、天皇制といつたものについて司法判断下さず政治にこの判断を担わせる点があるのだが「統治行為論をとり」と言つてしまへばそれまでだが「国家統治の基本に関する高度な政治性」有する国家の行為については法律上の争訟として裁判所による法律判断が可能であっても、これ(国家統治の基本に関する高度な政治性)ゆゑに司法審査の対象から除外すべきとする理論」(ヰキペディア)といはれても禅問答。かういふ時はこの法認識を外国では何としてゐるか?で調べてみると“Political question”で日本語のニュアンスともちと違ひフランス語では“Acte de gouvernement en droit français”とヰキでも言語によりこゝまで説明内容の違ふ概念も珍しい。その「統治行為論」に代はるものとして少なくても日本では内閣法制局が良質の行政判断を下すことで最高権力たる内閣も下部組織の判断に従ふことで良識を維持。杉田敦先生が立憲デモクラシーの定義を「民主的に選出された権力であっても、それを抑制する、いったん立ち止まって考えることを求める、そういう民主主義のあり方」と説明してゐるが、まさにこれ。この杉田先生の説明は小学生でもわかるくらゐ易しいが晋三だと「民主的に選出された権力なのだから、どうして抑制されなきゃいけないのか?」で何ら疑問もないのが怖い。お祖父さんなら「目的のために悪い手段もとってゐる」と思へる知性があつたでせうけど。「選挙で選ばれた以上は白紙委任を受けたもの」といふ橋下流の「暴言」を暴言と感じなくなつてゐる社会。
▼昨日の東京で長期金利が史上初のマイナスに。日銀に預金すれば損する金融機関が国債買ふ動き見せ世界的株安で株価急落、円高。「日銀が導入を決めたマイナス金利は投資家の不安心理を抑える効果がが期待された。金利低下で貸し出しが増えマネーの流れが増えるとみられるためだが現状では運用難になる金融機関の経営悪化や消費者が受け取る利息の減少の方が強く意識され市場の動揺は収まらずマネーの流れはむしろ安全資産に収縮している格好だ」(毎日新聞)。銀行は国債運用の安定収入見失ひ収益維持に預金金利引き下げ更なる利息収入減は個人消費にも負の影響で景気回復に水を差すどころか景気悪化かよ。アベノミクスももはや終焉。