富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2015-10-12

農暦八月晦日。曇。昨晩から喉痛甚だし。気温下がる=風邪をひく、と我ながら本当に単純に出来てゐると思ふ。
▼新聞週間。日経のその特集頁で論説委員長・芹山洋一君の「極論中和し世論創る」読んだが、内容は今回の安保法制で新聞が賛成と反対に分かれ、お互い論が交はらず身贔屓の読者相手で如何なものか、と。日本のマスコミが中立装ふことが海外の左右の立場、読者の階層まで明らかなマスコミに慣れてゐる身には逆に不思議だが、この書き手は湛山翁の「言論の任務は極端なる議論に対し……」引用し、大切は新聞の中和性、健全なる輿論形成を目指すべき、と指摘。日経は(今回の安保法制では読売、産経ほど極論ではないが賛成をとつたが)かうした真っ当さ目指したいのか、それにしても湛山のその昭和初期は、この「極端なる論議」の意味するところ、それは国粋右翼と共産主義の対立であつて、そのなかで石橋湛山は自由闊達な議論を説いたもの。それと今は時代が違うだろ。まぁ読売と産経がもはや国粋右翼的だとしても朝日とてせいぜい中立左派的ブルジョア紙。日経は論説委員長がこんなレベルで真っ当な主張だと思つてゐるやうでは一流の経済紙としては失格。
▼核禍。福島民友紙の記事「5年ぶり「清掃ボランティア」国道6号で1400人が汗流す」と中学生含め311震災のあと初めての避難区域を含む路上清掃(こちら)。これが微笑ましいニュアンスで報道されてゐる。核禍はもはや過去、放射線量も安全なレベルで問題ない、といふ前提か。事実以上に放射能汚染を指摘する過剰反応こそ異常といふ論調もあるが(それもかなりリベラルな層に)、この記事と同じ日にAP電で福島の子どもたちの癌発生率が高いといふ記事が流れてゐる(こちら)。福島の県民すら蔑視するやうな差別はいけないが、公表される放射線量が低いという前提でも「なぜ市民が国道6号の清掃ボランティアしなければいけないのか」それが報道されることで必要以上に国策的な「核禍はもう過去のこと、もう安全」のPRに加担することになるのではないか、と思ふ。文藝春秋(11月号)のグラビア連載「同級生交歓」でも土佐中→土佐高の第36回卒業生で、いつもの「卓球で全国大会出場の○○は……」のノリで「新聞部で真面目を演じていた理系の森本は関西電力で副社長、日本原子力発電社長の時、東日本大震災に遭い未曾有の経験」とさらりと書き流してゐるが、この核禍下で原子力発電の国策会社の社長の責任を「未曾有の経験」で済ませていゝのか。あれだけの核禍が起きてゐながら巷間の感覚はもはや国と財界の願ふ通り核禍も喉元過ぎれば……なのかしら。
▼先の参院安保特別委での混乱の中での自民党強行採決の議事録公開される。

○理事(佐藤正久君) これより採決に入ります。我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員長鴻池祥肇君不信任の動議に賛成の方の起立を願います。
   〔賛成者起立〕
○理事(佐藤正久君) 起立少数と認めます。よって、本動議は賛成少数により否決されました。鴻池委員長の復席を願います。速記を止めてください。
   〔速記中止〕
   〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕
○委員長(鴻池祥肇君) ……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能
   〔委員長退席〕 午後四時三十六分
     ────・────
本日の本委員会における委員長(鴻池祥肇君)復席の後の議事経過は、次のとおりである。速記を開始し、
○我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(閣法第七二号)
○国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(閣法第七三号)
○武力攻撃危機事態に対処するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(参第一六号)
○在外邦人の警護等を実施するための自衛隊法の一部を改正する法律案(参第一七号)
○合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供の拡充等のための自衛隊法の一部を改正する法律案(参第一八号)
○国外犯の処罰規定を整備するための自衛隊法の一部を改正する法律案(参第一九号)
○国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案(参第二〇号)
国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(参第二三号)
○周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律及び周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律の一部を改正する法律案(参第二四号)
右九案を議題とし、
○我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(閣法第七二号)
○国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(閣法第七三号)
右両案の質疑を終局した後、いずれも可決すべきものと決定した。
なお、両案について附帯決議を行った。

あらためてこれを読んでも、こんな議事があるか、と呆れるばかり。気になるのは後から書き加へられた部分で、しかも最後の「両案についての附帯決議」が何か、といふこと。これについては神保&宮台の時事談義がよくまとめてゐる。