富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2015-09-30

農暦八月十八日。香港歴史館で日清日露戦争時の日本の軍事錦絵の展覧あるさうで、それに合はせ「紙上風雲」と題する豪華本も発行。まぁよく蒐集したわ、と関心するが何十枚も続けて眺めてゐても余程の好事家ぢゃなけりゃけして面白いものでもない。ではなぜこの展覧か、といへば錦絵を通じて実際の戦史とは異なる間違つた歴史が日本国民に広められたといふことへの学習が目的ださうで、それをいへば日清日露より太平洋戦争の方がもつとひどいのだが。この錦絵で日清日露を通じて歴史教育するなら国共内戦も自国の歴史でぜひお願ひしたいところ。Jack Daniel's Tennessee Honey贖ふ。酒苦手でも飲める=酒好きにはすぐ飽きる味。岩波の『図書』昨年の三月号、『世界』同十月号読む。
▼中国政府が香港特区政府の支持率上昇=政府の功績として支持率下落=米国の陰謀とするのと日本で株価上昇=アベノミクス、下落=中国リスクとするのはほゞ同じ発想なのではないか、と香港政治研究のK教授。
▼訪米中の晋三。「夏までに」と前回の訪米で宣つた安保法制も宿題の提出期限は少し遅れたが完成させたことで胸を張つての上洛。だが強行採決参院では特別委の鴻池議長の良心の呵責でまとまな採決を避け自民党の強行といふことで参院の矜持守つたといふ説もあり)で国民の印象悪い上に内容といへば公明党の所為で実質的な集団的自衛にならぬ骨抜き法案で米国側どころか国内も日米合同委員会関係省庁官僚や一部の財界からは「……ったく」な内容だが晋三は「できました!」なのが稚拙とはいへ哀れ。で国連での演説では華々しく常任理事国入りへ 意欲表明「世界の平和に貢献」ださうな。集団的自衛権のある、なしで「世界の平和に貢献」の意味が随分と違うのだが。どうせ最初から安保法制可決すれば米国が日本の常任理事国入りに協力だったのだろ。それにしても晋三の演説など聞く聴衆の少ないこと。記者会見では「シリア難民受け入れの可能性は?」と尋ねられ「難民受け入れは人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前にやるべきことがある、それは女性や高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手がある」と難民を移民に取り違へての珍回答(難民は受け入れぬがUSD8.1億拠出して経済支援、教育、保健医療での協力は積極的に行ひ解決に積極的に関与する……って湾岸戦争のときにカネだけ出して感謝されず、のトラウマと一緒ぢゃないか)。これをだうせ官房長官菅某なら 「総理はより大局的な見地からわが国における外国人受け入れの問題についてコメントしたもの、ご批判はあたらない」とか仏頂面で言ふのであらう。菅といへば御用テレビ(フジ)の番組で人気芸人の結婚でいて「この結婚を機に、ママさんたちが一緒に子供を産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれたらいいなと思っています、たくさん産んで下さい」と発言。仏頂面がたまにソフトなネタで発言したと思へばこれ。基本的に空気が読めない御仁。出産を未だに結婚とイコールにする発想で出産=国家貢献とは。やがて兵隊さんとなって、か。大切なのは出産、育児も個人の負担にならない社会の創造だろ、政府の仕事は、まったく。
▼安保法制の本質を示す首相の言葉がある。「時間が経てば、国民の理解は広がる」。言い換えれば、国民の理解がなくても、正しいと思うことものはやるという宣言だ。世界では、これを「独裁」と呼ぶ。「戦争法」という法の性格以前に、こんな独裁を許した戦後民主主義とは何だったのかをいま一度考えたい。(牧)……と田原牧記者(都新聞)。彼女のデスクメモにはいつも唸らされるが戦後民主主義についてはアタシは最近は「まんざらでもない」と思つてゐる。先ず一つは聖上のやうな体現を有せたことの幸運、もう一つは最近の民度の高さ(こちらは幸運ではなく努力の賜もの)。

憲法や法律にさう書いてないから「やってもいい」の晋三。これまで「やっていけないのが当たり前」のことは文書に明言されずとも良かつたが晋三の出現はさうした常識の想定外。だから内閣法制局NHKに介入、衆院の名目なき解散といつた、これまでの禁じ手も平気。こんな史上最大の非常識にだう対抗すれば良いのか、と宮台先生。

世界 2014年 10月号 [雑誌]

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