富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

我々は守るべき日本を創ってきたのか

fookpaktsuen2015-09-18

農暦八月初六。参院民主党提出の参院議長不信任決議案否決。晋三の問責決議案否決。この投票時に喪服姿の山本太郎が牛歩で数珠を手に合掌。衆院内閣不信任決議案否決。晩に参院鴻池祥肇委員長問責決議案否決。84年前の今日は満州事変。聖上もこの日が昭和の戦争の始まりと宣はれた。今日この法案通れるとしたら偶然とはいへそら恐ろしい。半夜三更より延会の参院本会議。発言時間制限動議否決。(毎日新聞絶好調なのだが)安保法案が壊したもの「安倍さん、これが「美しい国」ですか?」(こちら)が指摘してゐる。野党だつた自民党で復活狙ふ晋三が著書のなかで民主党批判で

政治主導という言葉で意に反する意見を無視し、与党のみの判断を他に独裁的に押し付ける……

言及してゐるが、まさに今の晋三がこれ。本当にロクでもない輩。安保関連法案審議。民主党福山哲郎君の演説。その最中の自民党三宅伸吾(元日経記者)や青木一彦らのヤジと嘲笑、「那珂湊の恥」山口ら公明党幹部の醜い笑ひ顔が不愉快。NHKの中継でカメラワークが見事。演説中に批判される敵をよく写す。自民党(千葉選出)の末端議員・石井某の「総理の期待に応えるためにも本法案の成立が必要であります」は全く意味不明(二軍選手に党代表しての演説させる自民党)。共産党小池晃君が安倍政権打倒と戦争法案反対に「あらゆる民主勢力との連合」言及。代々木をこゝまで覚悟させてしまつたとは、これはまさに戦後レジームからの脱却ではないかしら。憲法改正もかなり難しくなつたのだし。採決。牛歩の山本太郎君「アメリカと経団連にコントロールされた政治家は辞めろ!」と叫ぶ。安保関連法案成立。「戦後」の終はり。昨年七月一日の閣議決定憲法否定のクーデーター。あの日に関する拙日記「7月1日を「集団的自衛権の日」に! 」読む(こちら)。

立憲政治の否定といふ最悪の行為を晋三が如き三流政治家にさせたのだから日本の政治体制がいかに脆弱なものだつたか、言葉もなし。

あんなこと常識あれば絶対にできないことで、やはり晋三くらゐバカぢゃないとありゃできぬが*1、当然それをするには背後にプロデューサーと演出家ゐるわけで。寺島実郎氏にいはせれば晋三より晋三取り巻きの外交政策牽引する輩の経綸の智慧の浅さ、歴史認識の浅薄さ。冷戦終結で軍事、基地縮小予感した日米双方の現状肯定化に利害抱く外交・防衛官僚とその周辺の「日米安保マフィア」*2が指摘したのが「日米安保の片務性」で基地縮小回避のためのハードルとしての集団的自衛権、と寺島先生(世界8月号)。憲法改正避け解釈改憲のため複雑骨折おこし公明党との協議へて実質は現行憲法の個別的自衛権の枠組みでできることに収斂。自衛隊員のリスクも「これまでと変はらない」とされ存立危機事態の認定も「時の政府判断」とし立憲主義の議論誘発し憲法論争に。とんでもない迷走だが野党民主党の外交安保政策も自民党嗤へるものに非ぬ拙さ、と寺島先生は厳しい。安保法制と対米協調の形ばかりで「若者が「守るに値する国」と思える状況」も創れず、戦後70年「我々は守るべき日本を創ってきたのか」と。御意。それでも……と(勝手に前向きに総括してしまへば)晋三の「戦後レジームからの脱却」とは別に、自民党改憲試案の頃は国民の間にも憲法前向き改正はあり、といふ動きあり(それぢたい悪いことではない)国民的な政治的世論の高揚など全くない時代であつたのに、それが晋三の登場によつて「96条改憲」でそんな卑怯な!といふ覚醒あり解釈改憲違憲法案、立憲主義の否定……で今年になつてから老若男女、それまで高みの見物続けていた学者、(ふだんなら政治的発言禁忌の)芸能人からタレントまで広く国民的意識高揚あり*3晋三の不人気、安保改正早急といふ否定が多数に定着、今回は数の力で強引な立法化だつたが、丸山真男的には維新後の1880年代、大正デモクラシー終戦直後に続く第四の国民的「知的共同体」の出現なのかもしれない。丸山真男を出したのでさらに丸山的にいへば晋三内閣=超国家主義で、それを放置したのは日本社会の前近代性*4、その戦後=今回の安保立法では論戦中に健全なる「国民」が生まれ戦後に理想的国家を創りださう=健全なナショナリズム……といふ、さういふ希望か。終はりは始まりの始まり。畏友のラジオプロデューサーI氏曰く「法律は改正できるが、条約は変更できない、だから月末に決まるかも知れないTPPがどうなるかは注視したい」と。さう/\これがあつた。沖縄も、ある。

▼今更だが六月半ばに長谷部教授の参考人招致での違憲発言あたりから世論の変化見られ六月末に「マスコミを懲らしめる」発言くらゐ最後に安倍の「お友だち」メディア登場失せる。築地H君言ふ通り、かはりに前面に出てきたのが宏池会の面々。谷垣幹事長、岸田外相、中谷防衛相といずれもかつてはハト派として知られた政治家。鴻池だつて河野派。それが晋三の最も有能な子分と化すのだから。これが大問題。本来、戦後日本の保守本流で主流派だつた宏池会ブルジョワ自由主義が敵に同調なのだから。それに対して自民党で最も強力であつた田中派自民党割つて出て社会党と組み、今回はついに共産党が「人民戦線」に加はつたこと。まるで左翼扱ひのシールズ、民主党朝日新聞も元より左翼ではなくせいぜいブルジョア自由主義左派。樋口陽一先生もも左翼でも共産主義者でもなくドゴール左派(恩師のルネ・カピタンはドゴール政権で入閣)。よつてシールズから民主党朝日新聞、長谷部教授に保坂正康、陽一先生まで近代主義ブルジョア法秩序崩壊といふ危機では反応して当然。そこに共産党社民党の左派、さらに新左翼初等派まで与する。さう考へると宏池会自民党ハト派の崩壊は55年体制崩壊、自民→民主党の政権交替よりも重大なファクターなのかしら。
▼箍はどこまで外れるのか。五輪騒動をみても政治家や官僚は他人のカネ(税)をドブに捨て、誰も責任を取らない。カネばかりか、今度は生命まで差し出せという。葬式も税金で賄うのだろう。傍ら、人殺しの道具で金稼ぎしたい商人はせっせと献金している。警察は国会前で用心棒を演じている。(牧)

世界 2015年 08 月号 [雑誌]

世界 2015年 08 月号 [雑誌]

*1:かつて内閣が約束したこと(集団的自衛権の否定)を破るためには、より上位の規範に則ったふさわしい手続きによるものでなければならない。2014年7月1日の閣議決定で「戦後」は終わっていた、となる。立憲民主政から絶対民主政への移行。石川健治

*2:彼らにとつては1.7兆円拠出しても評価されなかつた湾岸戦争のトラウマ、中国の脅威といふ危機感、それに頼りないオバマアメリカへの失望感と強い日本といふ役割意識の高揚があるが、軍事の議論あつても外交のそれなく、国家危機の議論あつて国民にとつての守るべき国を創る議論がない。寺島実郎

*3:朝日新聞(夕刊)しりあがり寿「地球防衛家の人々」で安保法制にトーサンは反対、カーサンは容認できたのが最近、カーサンも容認という姿勢を見せなくなつた。

*4:民主党政権への不満あつたにせよ自民党が石破ならマダしも晋三をば二度目の総裁=首相候補としてゐて何故に自民党に安定的絶対多数与へ更に参院選でまで安部人気に踊らされたのか。