富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

鴻池祥肇

fookpaktsuen2015-09-17

農暦八月初五。睡眠四時間で朝三時半に寤める。岩波「世界」九月号と文藝春秋十月号読む。特集は「日本よ、中国を超克せよ」って相変はらず自虐的。エマニュエル=トッド先生のインタビューで「幻想の大国を恐れるな」なんてタイトルつけてゐるがトッド先生が日本に最も求められるのは中国を必要以上に恐れる必要もないが、それを踏まへての「自分をうまくコントロールする力」だと。あとは安保法案に関して「創価学会「亀裂」の深層」読んだくらゐであとはパラ/\と頁捲るばかり。夜明け。朝から予定された参院特別委の理事会は野党議員詰めかける本来の理事会の看板外し鴻池が待つ本来は特別委の開かれる第1委員会室に理事会看板掛け理事会と称し無理矢理に特別委開催開催を委員長職権で決定。姑息すぎ。参院特別委再開。鴻池は首相ら出席の総括質疑を行はぬと決め野党は鴻池不信任案動議提出。野党採決引延し始まる。香港の立法会も攻防で、こちらの場合は本当に野党席から物が飛んでくるのだが、野党議員がよく口にする「拉布」。ここ数年でよく聞く文句で政府側も野党がこれを口にすると多少動揺するので一体どんな手段に出ることなのか、と思つたら単純に英語の filibusterの翻訳で、長い演説や審議拒否で議会妨害や引延し。野党による拉布。逆に与党政府側が審議打ち切りで採決は「剪布」で先の衆院は剪布。「野党の妨害は非常に残念」と官房長官菅某。午後になり不信任案審議。否決。参院のネット中継は混雑でつながらず。そのまゝ参院特別委で安保関連法案可決。委員会室大混乱はかつての台湾立法院の如し。原則として然るべき理事、発言者以外は着座とし勝手に委員長席に近づいたり取り囲んだりしたら懲罰くらゐの規則でも作らないといけない。安保関連法案は17日午後4時半ごろ参院の特別委員会で採決が行われ……と朝日速報、4時半「ごろ」ってのがいゝよね、はっきりした時間がわからない犯罪っぽい。更に欲を言えば「採決が行われたらしい」にすればよりその雰囲気と現役新聞記者M氏。澳門英記がスヌーピーの月餅供してゐることを昨日知り中秋までの発売で香港に出店なく澳門に行くいとまもなく、さてだうしたものか、と思ひ澳門在住の知己に打診したところ直ぐに買ひに行つてくれセナド広場の英記で在庫3箱のうち2箱入手と連絡あり本日それが香港に運ばれ受領。感謝。晩のNHK NW9ではさすがに安保法政強行採決に反発する世論背景にかNHKの報道姿勢にもかなり政府与党のやり方に対して批判的。晩遅くに参院本会議で先ずは野党提出の議院運営委員長解任案否決。深夜に中谷防衛相問責決議案否決。
▼今日の注目は何といつても鴻池組鴻池忠治郎大伯父にもつ侠客筋の鴻池祥肇(善右衛門の鴻池財閥とは無関係の由)。安保法制舞台衆院に移つてから特別委では野党にも比較的理解深き姿勢見せてたのは参院良識の府たる矜持か、最終的には「どう採決するか」のための大芝居だつたのか与党内にも不明。昨夕からも無理な強行採決避ける姿勢に与党がイラ/\、今日の審議再開で委員長としての不信任動議に与党内から痺れ切らした与党提出か?と冗談が漏れたといふ。この動議否決され委員長席に戻り改めて総括質問に入るかと野党緩んだ隙に脚本通りで意表突く緊急の採決。野党議員に進行表奪ひ取られること想定し上着のポケットにはダミーの紙を入れ、それが漫画「ONE PEACE」歌舞伎公演のチラシだつたといふのだから……用意周到な上に憎らしい。これで深更、疲労困憊で議員宿舎に戻ると妙齢なご婦人ゐて「お帰りなさい、お疲れでしょ」「風呂だ、風呂が先だ!」で背中流して貰って「疲れてもあっちは別だぞ」と、にやり。風呂上がりに茶漬け啜ると「あら、ご飯粒が……」みたいな。さすがにすぐにソファで爆睡、高鼾もまた婦人が「可愛い人だこと」と微笑んで。
▼この人の気のきいた一言はアタシも真似できず敬服あるのみ。G_D_Greenberg先生。

  • 先の選挙で、消費税の増税をちょっとだけ延期するという政党に投票したら、あらら、とんでもない危険がぐんぐん近付いてきてしまった。
  • 必要なときに採用し、自分たちの下働きをさせて、必要なくなればすぐ解雇……安保法案とは要するに、自衛隊を米軍にとっての、派遣社員ならぬ「派遣兵士」にする法案である。しかもこの兵士に、給料を一銭も払わなくていい!
  • なんて次から次へと呟板に書き込みの筆致。

▼岩波「世界」九月号読む。特集は安保法案。米国主導の新国際安保体制づくりありき、の日本の集団的自衛権行使が米国主導で創られた憲法戦後民主主義で差し障り生じているという官邸にとってのジレンマ……まさにこれが戦後の日本。

  • 冷戦後の米国主導の世界システム、軍事と情報の産業一体化、軍隊・人道支援組織・復興開発請け負う企業の三位一体化、大規模なテロや戦争・紛争の必要性、日本もその商機に積極的に関与する必要性……だから集団的自衛権が必要。法案成立なら「制約」で自衛隊海外派遣に歯止めを。(谷口長世)
  • 抑止力など効かない挑戦国があること+「限定的な」集団的自衛権ではそれを禁じる場合と国際危機のリスクは同じ+憲法9条廃止したところで日米軍事同盟あれば「その分だけ」改憲の抑止効果は非常に弱い=集団的自衛権での抑止力向上はあり得ない。(栗崎周平)
  • 集団的自衛権は米ソなど軍事大国、多戦争国家の行使する権利で、その国に防衛頼む場合はともかく自らが防衛に駆けつける側になる意味なら軍事小国や平和主義国家には必要のない権利。(最上敏樹)→つまり安保法制は日本が軍事的に名誉ある地位につきたい、ということか。
  • 晋三の二枚舌は、アメリカに「まつらふ」ことによってA級戦犯としての追訴を免れ、日本国民を「まつろはせて」再軍備改憲の逆コースをひた走ろうとした岸信介にその原型がある。皇国日本の戦った戦争全てを自在自衛のための戦争と見なすのは「まつろはぬ」者たちを「まつろはす」ための討伐ないし外征は国を平定し、その安寧を守るために余儀なくされたものと考えるから。(中野晃一)

世界 2015年 09 月号 [雑誌]

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