富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

抗日勝利70周年記念祝賀

fookpaktsuen2015-09-03

農暦七月廿一日。午前2時すぎに窹めてしまひ𥧌れず輾転反側。朝六時半に空港。1年間ルクセンブルグに留学してゐた青年K君が留学終へ巴里から東京に帰国途中香港立ち寄り。バルナックライカ1台と50mmと35mmのレンズ2つK君に贈与。逸東邨行きのバスで馬湾涌の集落までお連れする。休日の朝早くで静かなのはいゝが早茶でもするつもりが茶楼も開いておらず逸東邨から東涌に戻り売店で朝粥と盅飯贖ひ東涌碼頭まで行き大澳行きの船を待ち朝食。船で大澳。大澳の町内を漫ろ歩き。蓮香酒家に早めに昼を飰す。13時の路線バスで䀚平。大仏と寳蓮寺参拝。ロープーウェイで東涌に下りバスで空港。夕方の便で羽田に戻るK君見送り。按摩に寄り帰宅。ratatouille を飰す。新聞に一面大の広告でBaccaratがドラえもん発売(54千円)と出てゐるがBaccaratは好きだしスヌーピーは持つてゐるがドラえもんのは違ふだろ。早寝。
▼東涌の集落を漫歩のうち家々は開放的で居間覗けるがテレビ中継は北京の抗日勝利記念の軍事パレードの中継ばかり流れる。今日もMilitary Parade Blueと呼ばれる青空←APEC Blueの経済から軍事の空に。首がいつも傾げてゐて少し倦怠感思はせるやうな習近平の表情。江沢民胡錦濤江沢民の演説の間、つまらなさうな表情の韓国とロシアの大統領。兵力30万人減員するといふが圧倒的な軍事力見せつけるためのパレード。中国は今日から三連休だといふのに北京の日本大使館や国内各地の総領事館は平常業務の由。東京新聞の「兵力30万人削減発言 軍縮演出 実態は効率化」といふ記事(こちら)で人民解放軍30万人削減と天安門楼上で演説した習近平氏の言葉に「広場に集まった約4万人は一瞬、動揺した表情を見せた」って……記者さん、あんたどうやって4万人の表情を俯瞰したの?
朝日新聞(異論のススメ)佐伯啓思「金融市場の乱高下 アベノミクスに欠けるもの」(こちら)要旨。
資本とはそれを元手にして利益を生み出す資金。資本主義とは元手となる資本をたえず増殖させる運動。この資本増殖が生活に役立つモノの生産やサービスの提供をもたらせば問題はないが、ただ金融市場を資本が回るだけで元手が増えるとすれば問題。有益なモノの生産へ向けた投資ではなく、株や為替の投機によって大きな利潤が得られる、これぞまさに最も手軽な「資本」主義。この手軽で即物的でむき出しの資本主義こそが健全な経済活動を破壊しかねない。
実際、今日の資本主義は、過剰な資本の供給によって、この種の危険に曝されている。しかも、過剰な資本は、金融自由化によって世界中の金融市場を駆け巡り、地球の裏側で生じたささいな出来事さえもが、自国の経済を攪乱しかねない。数年前のリーマン・ショックがその典型。
どうしてこういうことになったのか。今日の先進国では、どれほど新たな技術開発を行い、新製品を次々と市場へ送り出しても、さして大きな利益は得られないから。そこで中国などの新興国の市場を当てにするが新興国経済は十分に安定しておらず、先進国もたえず景気後退への不安を抱えることになり、また傾向的な成長率の低下に苛まれる。つまりグローバル市場は激しい競争をもたらすわりにはさして成果を生み出していない。
そこでどうするか。各国中央銀行は挙って自国通貨を金融市場へ供給し、景気を支えようとしてきたが、供給された貨幣は、長期的な研究開発や設備投資にまわって生産を活性化するというより、まずは金融商品へ向かって投機的利潤を生み出す。金融市場はきわめて活発化しても、さして実体経済はよくならない。それが極端になれば「根拠なき熱狂」というバブルになる。そしてバブルはいずれ弾け金融市場の混乱が実体経済を攪乱する。

われわれは今日こうした不安定性に直面している。本来はモノの生産を活性化しサービスを向上させ、流通を円滑にするはずの貨幣が、金融商品の間をかけめぐり、投機的な資本へと変身してしまう。本末転倒である。「資本」の増殖が、われわれの生活の実質と無関係に自己目的化してしまうのだ。

アベノミクスは、脱デフレと景気回復を掲げた「何でもあり」のいわば緊急措置。第1の矢である「異次元的金融緩和」は脱デフレに向けた強力なカンフル剤で一定の成果をあげたが過剰な貨幣供給齎らし投機資本に餌をばらまくという危険と隣り合わせ。日本の株式市場は強気な投機筋に煽られ値を上げ続け、それが景気を刺激したとしても「本当にわれわれの生活をよくしたのか」となれば地方都市を見ても簡単に頷けない。

アベノミクスは、脱デフレ、景気回復からさらに日本経済を力強い成長軌道に押し上げようとする。しかし、そもそも景気が十分に浮上しない最大の原因は、日本経済はすでに資本も生産能力も過剰になっている点にある。日本社会は、少子高齢化、人口減少へと向かっている。こうした社会においては、市場はさして拡張しない。つまり、モノをいくら生産しても、それを吸収するだけの十分な需要が発生しないのである。

いくら異次元の金融緩和によって資本を供給しても貨幣はもっぱら金融市場へ流れ日本経済全体がますますグローバルな金融市場の不安定性に巻き込まれ投機的資本の思惑に翻弄される。ただ闇雲に貨幣を供給せず、その貨幣をグローバルな金融市場の投機筋の餌にせず「その貨幣をグローバルな金融市場の投機筋から守ること」が大切。「異次元的に」供給される資金を、国内の長期的な産業基盤や生活基盤として国内で循環させることこそが重要。だが長期的な産業基盤や少子高齢化に向かう生活の基盤づくりは決して即効の利益を生み出さない。だからそれを市場競争に委ねるのは無理。政府が、=一定の将来ビジョンのもとで、その資本の行き先をある程度、指示することが必要。短期的な市場の成果主義ではなく長期的な公共政策こそ大切。そこで初めて異次元的な金融緩和も意味をもつ。われわれは一刻も早く貪欲で即物的な金融中心のグローバル資本主義から決別しなければならない。
……と佐伯先生。さすが保守とはかういふもの、といふ安定した保守の理論。敬服。
朝日新聞趙紫陽総書記の秘書だつた鮑彤氏(82)のインタビュー読む。以下、要旨。

  • 反腐敗が大きな業績であることは間違いが、注意すべきは摘発された幹部の数の多さが中国の制度の欠陥を示していること。現指導部は中国の制度への自信を唱えているが正しい制度があればこんなに腐敗官僚が生まれたはずがない。
  • (党幹部の収賄処分で裁判が非公開なのは)庶民に知らせてはまずい、知らせたら共産党の威信が崩れるという判断が働いたと見るべき。指導部は反腐敗の制度化を謳っているが、そのために必要なのは庶民による監視のはず。そしてその前提は庶民に真実を知らせること。一方で指導者の腐敗を告発した弁護士や、官僚の資産公開を訴えた人々が次々と拘束されている。庶民の権力監視を認めない限り腐敗問題の根本は何も解決しない。
  • 習近平に象徴される強いエリート意識について)この国の主人公は誰なのか、共産党が見失っているように見える。
  • 情報の公開こそが腐敗防止のカギ。趙紫陽の時代に改革試みたが天安門事件で頓挫。(天安門事件で)共産党は庶民の動きによって自分たちが握る特別な権利を失うことを恐れるようになった。しかし権利を失っても共産党が消滅するわけではない。国民党は台湾の民主化を認め、野党にもなったが政権奪回は正常なこと。それによって台湾は混乱に陥ったか?国民党は消滅したか?
  • 危機感を抱くことは悪いことではない。。70年代末に始まった改革開放政策にしても政治の混乱から抜け出し経済を立て直さなければならないという当時の指導層の危機感から始まった。今の指導部を見ていて感じるのは危機感が強いがゆえに自分たちを守る姿勢。
  • 今の共産党は庶民を信用していない。信用していないから恐れてその口をふさごうとする。その恐れによって言論やイデオロギー統制が生まれ結果的にものの見方を歪める。様々な層からなる13億の大国だから民主化できないというのは言い訳に過ぎない。人口も少なく教育程度も高い香港でも真の民主化を認めようとしない政権が中国全体の民主化を考えているとは思えない(←和訳での?意味不明:富柏村)。
  • 独裁体制の下では中国はいつまでも民主を学ぶことができない。政府が庶民を信じれば庶民は政府を信じる。共産党が真に恐れなければならないことは庶民から信用されなくなること。党にとって最も危険なことは庶民に批判されることではなく批判も含めた庶民の声に耳を傾けなくなることだ。

▼SCMPの戦争史記事(こちら)で7人の回顧談のうちマレーシア出身で製糖で成功し財閥築いたRobert Kuok(郭鶴年)と香港大学元校長のProf. Wang Gungwu(王赓武)いずれも十代の頃のまぁ利発聡明な顔立ち。さすが凡人でない相そのもの。