富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

日経が晋三を呼んでいる

農暦七月十八日。昨日の国会前「平成の安保」とにかく平静さ扱ふ読売や日経。日経はご丁寧にも一面で内閣支持率46%に回復と晋三ヨイショの上、2面で論説委員長芹川某「経済が首相を呼んでいる」と題して中道寄りが支持回復の道と余計なお節介。70年談話評価得た理由の一つは保守色をうすめ中道に寄った印象を与えた点だと芹川某宣ふが、そもそも先の戦争に関する首相談話たるもの単に一首相の人気とりで内容が易々と変はるやうな安っぽいものではないはずで、晋三の節操の無さを新聞はむしろ首相に叱るべきところ、さすが株屋相場師相手の「景気さへ良ければ」の稚拙なる発想、人気とりで中道に、と……呆れて言葉もなし。それほどカメレオンの如く変色できるのが政治姿勢なら願ひ下げ。しかも「保守色をうすめ中道」って晋三のこれは戦後の日本の重要な安全保障体制大幅に方向転換するもので保守=安保法制賛成、革新=反対に非ず。本来、戦後の日本のあり方の良さに重きを置き、それの安直なる体制変換求めるののが保守。さうした言葉の理解も出来ぬ輩が論説委員長とは見上げたもんだよ屋根屋の褌、上がっちゃいけないお米の相場……と言ひたいが米相場が上がるのを望むのが相場師、日経の類ひ。産経新聞は「静止振り切り鉄柵「決壊」、車道に流れ込む群衆……混乱する現場、警備からは悲痛な声」(こちら)ださうな(笑)、火消しに躍起といふ感じが痛い。それでもそんな市民の抗議も「なかったこと」にされてしまふ中共よりまだマシか。けしてデモ参加人数は多くない、とするが朝日が「警察関係者によると国会周辺だけで参加者は約3万3千人」という書き方はより正確かも。香港で蘋果日報は第2面で一面大の報道。マレーシアのKLでは首相収賄に抗議する大規模なデモ抗議あり、これに対してナジブ首相は「没上街者撐政府」街頭に繰り出さぬ声なき声と、どこの、いつの権力者も決まって言うことは同じ。KLの市民デモにはDr.マハティール元首相(90)が姿現すサプライズでゴッドファーザーぶり見せつける……が、そもそもこの人が子飼ひのアンワル氏への禅譲拒んだ結果の民主化停滞でナジブ登場だつたのに。香港の学校の始まりは明日九月朔日だが今日が月曜で夏休みモードも終はり世の中少し慌たゞしくなる。夕餉は麻婆茄子。NHKのNW9眺めると昨日の国会前につき少なくともNHKの良心で政府の安保法制に疑問呈す市民が少なくない、とくに女性たちの関心が強い、と。週間読書人八月十四日号特集「日本の戦後70年を問う」読む。私らは「戦後民主主義」と当たり前のやうに用ゐるが戦後民主主義と十把一絡げにするには政治学的には戦後の宮澤憲法学に始まり丸山眞男、高坂政治学吉本隆明……と民主主義巡る多様な言説があつたが、それらが忘却され(晋三の場合は最初から何も知らぬまゝ)良しにつけ悪しきにつけ単一的なイメージで戦後民主主義が語られ、それゆゑアンチとしての「戦後レジームからの脱却」なんて大それたことが晋三のやうな無知から発せられる。なぜ今もまだ戦後七十年なのか、戦後からの脱却はないのか?といふことの一つの答へとして憲法(とくに9条)が変はらない限り「戦後」は続く、と。なるほど悪いものではない。むしろ「戦争のない」戦後が続くのならいつまでも戦後でいい、と昭和の戦後、基本的人権、自由と平和のなかで育つてきた戦後の子としての私は思ふ。晋三らと戦後レジームからの脱却はまっぴら御免。
ホテルオークラ本館建直しのため閉館。畏友J君の父上がオークラのメンバーでJ君、A君と三人寄席で落語の晩に一室宛がひ泊めて貰つたのが私の初オークラ。山里での食事、カメリアでの朝食忘れられず。Z嬢(当時)とはカメリアでお茶とケーキが精一杯、香港に移り住んでから宿泊は二度ほど。やつとオークラのロビー歩いてゐても恥ずかしくない年齢になつたといふのにまことに残念。