富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

半日深圳

fookpaktsuen2015-07-22

農暦六月初七。未明に40mm超へる雨量。車軸流すやうな雨。昼前に時間合はせ家人乗車の落馬洲往きの電車に大埔墟から乗車。深圳入り。深圳は夜まで傘も要らぬほどの小雨模様。崗厦。連鎖の安天民北方餃子に飰す。(市民なき国の)市民中心まで歩く。途中でStandard Chartered Bankあり香港に口座あれば此処でも口座開設容易かしら?と、その必要は最近、大陸では偽造カードやデータ盗用頻発でネット通販等でクレジットカード(殊に海外カード)使用不可、国内主要銀行の口座引落しが主、そこで大陸に銀行口座がほしい。銀行の内装まですっかり香港と同じ、システム効率も良いし書類は全て中英表記……日本の銀行より進んでゐる、と関心してゐたら家人が「中国の山寨は精巧だから、もしかしてこの銀行じたいがニセモノだったりして」と物騒なことを口にする。Standard Chartered Bankだと思つたら、よく見るとSdantard Charteredだつたりして……(日本人は香港で「スタチャン」と読んでゐるが、後者だつたら「須田ちゃん」である)。口座開設まで45分くらゐ要るといはれたが中国に居住証明ないことで担当者が本部?に問い合はせに時間要したが1時間余で口座開設完了。ATMカードもくれる。一つ気になつたのは口座開設の書式で「米国居住か?」「米国公民か?」「グリーンカード所持か?」と米国に関する質問事項だけ3つあり、銀行口座開設でなぜ米国だけ慎重なのか、不思議。銀行出て歩いて市民中心。深圳音楽庁。スタインウェイショールームあり。どこか特約の楽器店なのか、スタインウェイの他、ボストンとエセックスのピアノがあるといふことは東京にもスタインウェイジャパン直営のショールームが天王洲だかにあるが此処はスタインウェイチャイナ直営なのか、それよりスタインウェイチャイナがあるのか、全くわからないが格調高いショールームで当然のように幼子が得意げにエリーゼのために弾いてゐたりせず敷居高く物見遊山客もゐない。大人なので堂々と入りピアノを一台ずつ家人と知ったかぶりで見て歩く。アップライトで48万元、ベビーグランドで75万元、コンサートピアノだと170万元と当然手が届かないのが職員は「どうぞよろしければ試奏を」と。触るのも怖い。チケットオフィスで11月の深圳交響楽団の演奏会のチケット入手。张胜量(牛牛)のピアノで勃拉姆斯の1番と拉赫玛尼诺夫の2番。普通ならどちらか1曲で、もう1曲はオケだけ、だらうが牛牛の若さゆゑ、かピアノ協奏曲2曲は聴き得だし何よりサントリーホールなど手がけた永田音響設計によるホールである、今まで機会なく今回は是非。ここで年末大晦日に維納交響楽団の新春コンサートあり。伯林のコンツェルトハウスで今年も例年通り年末年始は第九で、その日に深圳で演奏会出来るはずないのだが……清張や西村京太郎のミステリーか時差使つても無理(笑)、維納のどこの誰が来て演奏なのかしら。隣接の深圳書城。夏休みで澤山の若者、書店の床に座り込み読書。歩くには邪魔だが読書欲に敬服。それにしても証明の暗い書店。賣平凹『老西安』贖ふ。家人は音楽書店で独逸のSchott Musik社の楽譜が(版権はちゃんとしてゐるのかしら?)香港の価格の10分の1だと目の色変へて物色の結果、ハイドンソナタ集2冊入手。買ひ物すれば「谢谢!」と言はれ商品やおつりも両手で丁寧に渡すし、まるで台湾にゐるが如し。38系統の路線バスで市街見物しながら羅湖へ。まだ/\高層ビジネスビル建築ラッシュ。GDPはすでに香港抜いたといふ深圳だが東京でも見たことのない程のオフィスビル群に果たして深圳にそれほど商機あるのか?と疑ふが、とにかくビル建設が続くから。オフィス街出来ても街頭に人もあふれないし地下道もなければ地下鉄やバスなどラッシュにならないのも不思議。羅湖で商業城に買ひ物に行く家人と別れシャングリラホテルのバーChampsで一飲。ハイボール注文してコークハイ供されるのもご愛嬌。昔は英国トラッドのパブだつたがマネージャーがいかにも北米人で店内の音楽も雰囲気もそれなり。酒棚にRémy Silverといふ酒瓶あり Spirit made from Cognac & Vodka なんださうだが胡散臭い合成酒か?面白いので飲んでみる。まぁ単にコニャックにウオツカ混ぜた味なのは当たり前、これで一杯170元もチャージされてしまつた、家人来て「アホか」と叱られる。商業城も随分とシャッター下りてゐる店が多い由。間違へてコークハイ供した給仕が会計の際に「さっき外国人のスタッフに注文したのはどれ?」と確認されたのだが家人と日本語で話してゐる私である、このニュアンスは日本人でも外国人と対称すると日本人も「我々」になる感覚かしら、の一衣帯水。建設路北上して万菜屋に夕餉。家人は初。値段も香港に比べるとお手頃で洋食風メニューも凝つてゐて好きな食肆。羅湖を鉄道驛に向かひ歩いてゐても物乞ひの幼子も盲流もゐない。あの花売りの5、6歳の女の子たちも、もう大人よね、と家人。何人かは今でも花を賣つてゐるかもしれない。深圳火车站の書店で『知日』2冊入手。羅湖から一等車で45分爆睡のうち紅磡。隧道バスで帰宅。
憲法を「このまま存続すべき」が60%で改憲は32%(共同通信世論調査)。戦後の歩みの良点は「国の復興と経済的発展」が55%、「他国と戦争せず平和」が54%といふ結果。憲法改正について2004年から05年にかけ読売新聞試案(こちら)や自民党の第1次草案(こちら)出たことは戦後60年憲法も日本の現状に合はないのではないか、で環境権だの「加憲」の発想も含め憲法改正に世論が動いてゐたが今回は自民党の党是たる自主憲法制定を数の力で晋三に託した誤謬災ひし改憲に先立ち集団的自衛権などキナ臭い話出した所為で憲法や平和の重要性再認識されたか。晋三らにとつては身から出た錆とはまさにこれ。日中戦争侵略戦争といふ理解は49%で自衛が9%、41%がどちらとも言へない。「憲法変へる必要ない」人の88%が評価するのが戦争平和・平和主義。これを見れば櫻井よしこらは「戦後教育が左傾のため」と罵るが結果は結果、残念でした。日本が悪い方に進んでゐると考へる人は「どちらかといえば」含め52%で「良い方向」は46%と、アタシなど自分の考へが世論の多数と一緒になつたのなんて初めてのこと、と驚くばかり(晋三の考へがまさに国民的には少数意見)。それくらゐ日本の政情は末期的。
▼香港で80年代から90年代にかけハッピーバレーの(といつても今ではこのあたりも「銅羅湾」だが)黃泥涌道に女性用靴オーダーメードの店が9軒も並び賑はつたもの。その最後の一軒が閉業の由。そこは今ではThe Leighton Hill狙いの不動産屋が並び地産街……何とも。