富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

安保法案衆院通過

fookpaktsuen2015-07-16

農暦六月初一。快晴。安保法案衆院通過。東京新聞で田原牧デスクで書いてゐる(こち特デスクメモ)。

思えば、敗戦後間もなく旧軍の一群が厚生省援護局に潜り込み、特高公安警察に姿を変え、この20年は歴史修正主義集団が自民党の主柱を侵食した。そして現在を迎えている。その執念は穏やかさとは遠い。ヒトラーは「大衆は忘却力が大きい」と書いた。彼らの執念を上回る抵抗の意思が試されている。

で国会だが、自公の賛成多数で可決の際に民主、共産等退席のなか一人起立せぬ御仁あり村上誠一郎先生か?と思つたが痩せてゐる(さういふ冗談言つてゐる場合ぢゃないが)誰かと思へば今国会の座席表で見たら川端副議長、副議長なので民主党でも退場はせず、なるほど。で自民党で良心の呵責で欠席は村上誠一郎先生ともう一人ヤメ検の若狭“葛飾”勝先生。若狭先生、かぶりつきの一列目中央で欠席とは!立派。晋三バカだが自民党にこんな絶対安定多数与へた国民、殊に今回、安保法制には「反対」でも第二次安倍内閣発足で晋三支持だつたアナタ!の誤謬よ。都民でいへば都知事選で青島、石原のいずれにも一票投じた過去があり小泉郵政選挙で小泉支持、政権交代民主党支持、で2012年末の衆院選自民党応援した、さういふ時流に乗る(150万人くらゐゐさうな)アナタ!は猛省すべし。さういふ私も2012年12月26日の日乗(こちら)では

安倍再内閣成立。晋三にそれほど強力な政治力あるやうにも思へず、自民党も政権復帰となれば失敗許されず、そのときになぜ晋三なのか、が不思議。誰が背後で晋三を自民党の総裁=首相に推し上げたか。仮説だが「今回の自民党の政権復帰が最終的な到達点でないとしたら」は如何か。この機に首相任せるには意欲だけは人一倍の晋三が適任。失敗したら「また晋三がしくぢった」で済み、かりに上手くいっても二度目なら、ある程度の時期見計らひ有終で後進に禅譲も出来る。でフィクサー(誰かはわからぬが)或は総体としての<政治力>の最終的な目標は民主党も含めた政界の再編成かも。公明党もXデー控へ、いつまでも創価学会の党ではゐられず、Xデー以降狙ひ、かつての新進党での失敗があったが次は何らかの形で意欲的に政界再編成に吞まれるはず。一宗教団体の党から平等、人権、平和重視で集票狙ってくるのでせうね。

とすつかり高を括つてゐたのも事実。晋三は憶測以上に力をもち公明党も学会の信者呆れるほど自民党の腰巾着。当時の翌日(2012年12月27日)の信報社説の方が余っ程真っ当。

可以說,安倍設法擺脫衰退,不惜採取激進的貨幣政策,啟動日圓貶值強化出口,冀返回「伊弉冉景氣」般的日子。但很明顯,對上這一輪?跨七十個月的景氣,一則是外圍經濟快速發展,與此同時,美國經常收支出現巨額赤字,大量日本資金湧入美國,導致日圓貶值。如今此一時彼一時,歐美自顧不暇,催逼日圓貶值能否如願以償,實在留有問號。
如今安倍重掌權力,在日本萎靡不振下,採取政治與經濟的政策冒險行為,不僅令東亞地緣政治潛伏動盪隱憂;也令中日外交變局更形波譎雲詭,雙邊關係不易穩定。

こんな物騒な記念の日だが「歩道橋の魔術師」読んだことに触発され台湾が気になり書架から四方田犬彦「台湾の歓び」(岩波書店)救出、読了。私も台湾のことには、とくに地歴、映画等かなり詳しいつもりでゐるがさすが四犬はすごい。それにしても台北の萬華、龍山寺を「バッロク的な装飾」と私は感じられないし寺の屋根にまします剪黏(せんねん、画像参照)の装飾も、それがぶっとびレベルで豪華だと思つても美的価値をそこから見出せない。台湾の媽祖信仰は知つてゐるが興味持つて一年で最も重要な祭礼「進香」に参加しよう、といふ好奇心。

もしふたたび進香の機会が与えられたとすれば、夕暮れのなかを西螺に向かい、濁水渓に架けられた長い橋を渡るさいに、過去の記憶の噴出を体験するだろう。<わたし>という存在はこうして二重にも三重にも多層化し、個人的な時間から解き放たれた祖型的人間として、媽祖と向かいあうことになる。

かういふ感覚が生じることがうらやましい。この本にはエピソードも澤山。1960年代に漫画雑誌『ガロ』創刊当時、読者欄に投稿してきた一人の台湾人少年の話、台湾から日本へ定期購読の送金が難しいから講読料の代はりにパイナップルケーキを送りたい、と。映画『KANO』で「水」の効果。統率できない豪雨、野球の中断、嘉義中学の学生と喧嘩になる晩も雨(映画館で上演されてゐたのは台湾で初めて上演された上海の無声映画『桃花血涙記』で台湾語の弁士)、野球部監督の近藤が理解得られぬまゝ酔いつぶれ田んぼに落ちて朝を迎へるのも台風の晩、その不吉な妨害者としての「水」が八田與一の登場の頃から治水され豊かさの象徴となり嘉義市街のロータリーには噴水が完成=噴出する水は彼らの若いエネルギーの隠喩、「水」が歓喜の記号になる……となるほど確かに(素晴らしい映画論だが嘉義が「当時の田舎町嘉農」(P155)、嘉義中学が嘉農中学(P161)と誤記あり)。森川清治郎といふ、横浜監獄の看守をしてゐて台湾で巡査になつた人の話、個人的な意欲で村で劣悪な衛生環境や農業技術改善に取り組み私費で教師雇ひ識字教育、1902年の漁業税賦課で村人の竹ざるまで課税となり大旱魃で困窮してゐた村人に嘆願請はれ、上司に報告すると納税拒否扇動と誤解受け懲戒処分、村に戻り落胆して拳銃自殺といふ話……全く知らず。知らず、といへば今日まで侯孝賢監督が外省人だとは知らず、あの作風からし本省人だとずっと信じてゐた私。知らないこと多すぎ。わずか一年の台湾滞在で(これまでの映画関係での交流はあるにせよ)四方田犬彦のすごさ。(昨日、プロローグの筆致は写したが)エピローグもまた植物の話。台南の安平にて。

資料館の隣には巨大なガジュマルが何本も生えている。廃墟と化した家屋の内外に根を張り、屋根の上で誇らしげに茂っている。何十本もの幹がそこから分岐して、さながら蜘蛛の巣のようである。
ガジュマルには多くの種類がある。普通に見かけるのは正榕(雀榕)だが、他にも潅木で黄金榕があり、髭根を壁に這わせ吸いつく薜茘(せっし)のような種類もある。ガジュマルは気根を通して空中の水分を自在に吸収して、場所に応じて多様な形態をとるとともに、周囲を仕切って他の植物の生長を許さない。気根からはミルク状の液体を分泌するため、昆虫が集まる。気根が重なり合い、やがて板根を形成する。わたしは台南のいたるところでその巨木を見かけた。だが、とりわけ安平のような広々とした場所では、樹木の威容がことのほか目立って見える。一本のガジュマルの老木のわきに若い芽が出ているのを、わたしは目敏く見つけ出した。

私も去年の春、安平に遊びこの廃墟も訪れてゐる(こちら)。この廃墟も訪れてゐるのだが、これだけ詳細に綴つてゐるやうな日乗には、その記載もなければガジュマルといふ樹木の名前も知らなかつたとは。

自民党のNo.2が、この漫画太郎の場合、天性といふこともあるが、この軽口。晋三のほうが「まだ国民の理解が進んでいないのも事実だ」と本音吐露のほうがまだマシか。武田茂夫先生(法政大)が東京新聞のコラムで書いているのは、この安保法制は具体的な必要性に応じて法案提起されたのではなく「中国への漠然とした恐怖や軍事大国への回帰願望が推進力であつた」わけで、だから定義さへ難しい「事態」羅列となり政府答弁はすれば混乱まねく。

法案は行政権に開戦の大幅な裁量を与えることになり、戦争などの例外状態では国民主権は否定され真の主権者たる国家が憲法を停止できると説いたCシュミット(ナチス協力のドイツ憲法学者)の亡霊が呼び出されることになろう。昨年の解釈改憲とは国家主権による憲法停止の予行演習だったのだ。(略)政権中枢の政治家らは日本の負の歴史を直視できない「非弱なナショナリスト」であり、長期の国家戦略がなく、ホルムズ海峡の機雷やリスクのない米軍後方支援などの非現実的な装丁を弄ぶ素人の軍事オタクでもある。

安藤忠雄センセやつと記者会見でコメント発表。コンペでハディド案選んだ責任はあるがコストについて免責、と弁明。東京新聞が審査委の過程について興味深い記事あり。一次審査で11作品に絞られ二次審査で各委員が1〜3位に推す作品のみで投票、豪州のリチャードソンが4票、ザハ=ハディドと妹島和世が各3票で次点となり、この3作品のみでの再投票ではザハ4票、残り2作品は3票となつたが二位、三位票も含めた得票をポイント化すると3作品とも19点で並び選考が難航。取りまとめ求められた安藤センセが「圧倒的(に良い)」とリチャードソンかザハに決めることを提案=理由示さず妹島案を除外。「委員長の判断で」といふ声上がりセンセがザハ案に最終決定の由。一部の委員から「景観として異物挿入された感は歪めない」、コスト面で否定的な意見もあつたといふ。そこでハディド案選んだのだから責任重大だろ。
台湾の歓び

台湾の歓び