富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

抑止力は隣組かよ

fookpaktsuen2015-07-07

農暦五月廿二日。小暑。母校の男子校か争議で校長ら講堂で釈明の最中、その講堂通り抜けやうと階下に降りたら抜け出せず、そこに隠れてゐた虐められ引きこもりの下級生に抜け道教へられ……なんて変な夢見て目が覚めたら未だ半夜三更。二度寝したが今度は水泳チーム合宿中のホテルのプールにiPhone忘れ悪ガキたちに盗まれた夢から朝三時に起きる。岩波『世界』七月号読了。夕方ジムのトレッドミルで5km程走り帰宅してカレーライス飰す。
蘋果日報一面「港股大時代」はR大学のK教授(香港政治)の説明を借りれば

上海株を買い支えるために香港から大陸の政府系ファンドの金が大量に上海に注ぎ込まれ、香港株は大暴落というお話。民主化案の否決後、中国政府は香港の経済と市民生活に集中すると言っているが、大陸の経済が不調になれば、相互依存と言うよりも、むしろゼロサムの関係になってしまうのではないか?

と。一国二制度以前に香港経済が完ぺきに中国経済に呑み込まれてゐるといふこと。しかも市場ではなく中共の匙加減一つで香港市場の上下高低。
▼晋三が自民党のネット番組カフェスタに出演し安保法案必要性につき抑止力を町内会に例へ説明。

一般家庭でも戸締りをしっかりしていれば泥棒や強盗が入らない。町内会でお互いに協力し隣のお宅にもし泥棒が入ったら、すぐに警察に連絡する、そういう助け合いができている町内は犯罪が少ない。これが抑止力だ。

この集団安全保障=町内会の見立ては外務官僚が晋三のレベルに合はせ説明したもので、晋三本人「これはわかりやすい」と(笑)。隣宅は韓国なのか、豪州は隣家には遠すぎる、米国は隣家なのか、いや警察なのか。さらに「いざというときのために作っておけば安心だ、抑止力になる」って、それぢゃ悪徳リフォーム会社の宣伝並み。
鈴木邦男先生が語る保守と右翼について(朝日新聞)。昔は右翼も左翼も保守を嫌った。右翼は右からの革命、保守はいろいろな矛盾も含めて現状を認めるだけだ、と。自分から保守と言う人はいなかったし悪いイメージの言葉だった。福田恆存曰く保守とは本来個人の生活の問題でありイデオロギーとして人に強制すれば反動になる。保守のイメージの変化は民主党政権の失敗で政治に夢や理想を語ることは間違い、左翼は犯罪的という雰囲気が強まった。逆に中韓敵視し軍備増強、憲法改正も「自分は右翼」とは言えず保守を名乗る。但し今「保守」名乗る多くは「明治維新以降の大日本帝国の実像に戻りたい」人たちで邦男先生は「中国朝鮮の文化も受け入れてきた数千年にわたる日本の歴史全体を保守するべき」と。憲法改正は時間をかけてやるべき話。沖縄米軍基地解消も目指すべきだが安倍政権の向く方向は間違い。安倍政権の特徴は「よそに敵を作るところ」で「憲法のせいで日本がまともな国家になれなかった」という理屈。これは「一番悪いやつを打倒さえすれば幸せになれる」という左翼的な論理(だから晋三は革新なのだ)。自分に誇るべきものがないから日本に生まれたことだけを誇りにする。だから「日本は正義の戦争をした」「日本のおかげで東南アジアの国々が独立した」と平気で言う。負け戦を勝ったように言えば自分は国家と一体となり強くなった錯覚を持つ。「東南アジアは日本のおかげで独立した」と思い上がり、確かにインドネシアでは「日本のおかげで独立した」と言う人もいたが「ありがたい言葉だがあなたたちの力で独立したのだ、私たちは迷惑をかけて申し訳ない」と言うのが日本人として当然の謙虚さ、と邦男先生。
▼希臘財政危機EU主導の緊縮改革案受け入れ国民投票で否決。この提案を「脅し」だと理解。希臘のためなのか、といふと実はEUのためで金融資本のための希臘救済で今後も希臘それに労役提供だと思へば拒否で当然、と財政危機でもテラスで酒を飲み笑顔で語り合ふ人々見てゐるとさすが歴史と伝統の長い国は違ふと思ふ。
池澤夏樹「死にかけの三権分立、行政独裁への道粛々と」(朝日新聞)。「自転車乗りのヘルメットのような」新国立競技場、国は都に建設費負担請ひ都は根拠のなき金出せぬ、と言ふ。国は法律作り都に支出強ひる案出たが憲法九十五条*1あり。一九九七年の駐留軍用地特措法改正(国は地主の意思無視し民有地を米軍用地として永久借用のそれ)の時も池澤はこれが憲法九十五条に違反では?と考へた。改正案に確かに「沖縄にのみ適用」とは書いてゐないが事実上、適用場所=民有地強奪は沖縄のみ(本土の軍用地はどこももとは公用地)。更に一九七二年沖縄返還に際して時限立法で制定の「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」でも憲法95条での住民投票行はれず。今の辺野古も一緒。

憲法とは本来国民を国の圧政から守るためのものである。一地方を犠牲にして他が利を得てはいけない。個人の権利を守ると同じように地方の権利も守る。それが機能しないのは日本国の司法府が憲法判断を逃げているからだ。

一九九七年の段階で九十五条は死に今は九条が死にさう。小選挙区制は民意反映せず国民の1/4の支持もなき自民党公明党と組み絶対多数、議員の多くは党の方針に逆らへぬ若手陣笠で国会はヤジと手続きの機関に堕す。行政府独裁。晋三が集団的自衛権審議前に米国で法案成立約束に国会は内閣不信任動議も出せず。場合によつては解散・総選挙だが国会は行政追認の大政翼賛会化。

既に司法なく、今また立法なし。
日本は三権分立で運営される民主主義国家から行政独裁へと、途上ならぬ途下の道を粛々と歩んでいる。三脚のはずが一脚では立てない、主権在民という地面に穴を穿たないかぎり。

そこまで来てやつと理性働き出し憲法学者三名揃つての違憲論で潮目少し変はる。世論調査では晋三の説明不充分だと思ふ国民が過半数公明党も困惑。学者の意見や国民の声で強行採決が阻めるか、それはそれでこの国の成熟を示すものだが三権分立の方はだう修理すればいいのか?と池澤夏樹
伊東豊雄の語る諏訪湖(日経夕刊こころの玉手箱)。伊東の友人で建築史家の藤森照信が伊東の建築の「絶対的な水平感」は諏訪湖畔で育まれた感性と評した由。宇宙と交信できるのでは?と思ふほど神秘的な星空や澄み切った高地の空気が染み込んでゐるのかも、と伊東本人。



友人のスガさんの家に強盗が入ったら「電話で『安倍さん助けて。うちに来て一緒に戦ってよ』と言われても私は家まで行って助けることはできない」のは日本の存立が脅かされる「存立危機事態」には当たらないから。一方で「安倍は生意気なやつだから今度殴ってやる」といふ不良がゐて友達のアソウさんと一緒に帰りる道で3人ぐらい不良が出てきていきなりアソウさんに殴りかかつたら、私もアソウさんを守る、これは集団的自衛権。アホもこゝまでいくと頼もしい。晋三が出ていつたら「お前が生意気だからいけねーんだよ」と余計ボコ/\にされるだけだろ。

*1:「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。