富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

邦人保護ってか?要らねぇよ

fookpaktsuen2015-02-01

農暦十二月十三日。曇。朝のニュースで「イスラム国」で日本人捕虜の男性が斬首された映像流れてゐると知る。早朝だつたのでネットで検索すると生々しい画像がそこに(数時間後にはかなり見られなくなつてゐた)。その映像よりも「イスラム国」による「日本政府へのメッセージ」のほうがずっとインパクト強烈。
You, like your foolish allies in the Satanic coalition, have yet to understand that we, by Allah's grace, are an Islamic Caliphate with authority and power, an entire army thirsty for your blood. Abe, because of your reckless decision to take part in an un-winnable war, this knife will not only slaughter Kenji, but will also carry on and cause carnage wherever your people are found. So let the nightmare for Japan begin.
と。イスラム国の手法をば別にすればテキストとしては、このメッセージに書かれてゐることがけして突飛と思へないのは私だけかしら。NHK日曜討論は各党幹事長レベルが鳩首凝議、残虐なテロ行為は断じて許せないといふ点では自民から共産まで異論なし、残虐といへば米国のアフガン征伐やイスラエルのガサ攻撃も同じなのだが、テロが許せないのは国家が唯一合法化された暴力装置だからで、それ以外の暴力装置としてのテロは断じて認められぬのは明白、だがその「テロに負けない、戦ふ」がいつの間にか挙国一致が怖い。べつにテロと戦はんでもえゝやん。G.D.Greenberg先生が呟板で「安倍がやろうとしている難民支援は「人道支援」ではない」と言ふのは「本来、人道支援に敵も味方もない」はずなのに晋三は「これはイスラム国と戦ふ国々への支援だ」って、難民支援を「テロとの戦ひ」に位置付けて大見得を切つて見せた、これはイスラム国から見れば宣戦布告、と。御意。付和雷同と言ふと叱られるがマスコミの同じやうな論調のなかFT紙が冷静に
The immediate political reaction was muted, but Japan’s government had to bat away questions about why it had located its crisis response headquarters in Jordan ― an active member of the US-led coalition against Isis ― instead of Turkey.
と明らかに日本政府の対応の瑕疵を指摘した上で
It highlighted tensions between Prime Minister Shinzo Abe’s desire to revise Japan’s pacifist constitution, allowing for a more proactive national defence, and opponents who argue such interference is what puts Japanese citizens at risk.
と分析してゐる点に溜飲下がる。そして気になるのが海外での邦人保護。NHK日曜討論でも次世代の党の某が「テロに対する抑止力としての邦人保護」なんて意味不明なこと宣つてゐたし晋三もイスラム国のやうな状況が出現すると自衛隊による積極的な邦人保護も必要で法整備必要*1と言葉踊るが、そも/\在外邦人なんて自分の意思で勝手に海外にゐるのに何故に政府が保護せんとあかんねん、と私は思ふ。これは予想以上に一般論にはならないらしい。道徳論的に在外で本人がさう思ふかだうかは自由だが「国家は自国民保護の責任がある」といふ意見。だが、これまでの歴史で国家がそれを口実にどれだけ侵略などしてきたか、ロクなことをしないと思へば海外でまで国家権力の行使する「国民の保護」がなぜ通用するのか、私にはわからない。ネットでさらっと見た感じでは海外居住の論者のほうが自己責任志向、邦人保護不要で、少なくても「私たちを危険から守ってください」とは思つてゐないやうだ(私自身ある顔本の書き込みで自己責任に言及したら或る人に「人間のクズ」扱いされた)。私もかりに日中間で戦争になつたとしても香港の空港から日本政府が遣つた邦人脱出用の最後の自衛隊機に乗る気は一切ないだらう。パスポートには「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助をあたえられるよう、関係の諸官に要請する」と、その程度。その程度の依頼で十分なのでは。朝からそんなこと考えてゐたら、これはおそらく311のときと同じで、それまでの世論が右か左か、保守か確信か、でそれなりに区分できたのに311は原発問題と「福島をだう扱ふか」で左右、保守革新とは別に賛否あるのと同様、海外での事故責任と政府による保護にはかなり異なつた考へ←おそらく妥協の余地なし、があるのだな……なんて思ひながら日曜から頭痛いのも困るので今年に入つて初のジョギングで5km走る←元旦に長洲島10Kで途中で脱落して以来のランである。午後遅くZ嬢とMTRで調景嶺。調景嶺といへば陸の孤島で此処に昔は国民党の老兵たちの部落があつてねぇ双十節になると青天白日旗が……って、さういふ昔話はもう何度も書いたので止めよう、MTR站から直結のHK Design Instituteは実用性より見た目の設計の奇抜さで税金の無駄使ひと非難もされ1階から高層階(7階)への屋外エスカレーターもかなり危険だが、此処で戦後日本の商業ポスター展(こちら)あり参観。時代だねぇ、戦後の。これを見ても日本に元気のあつた時代……と懐古モード。観塘から路線バスで久々に九龍城。いつものコースで食材買ひ回る。九龍城市街の大厦にいきなり「毛泽东思想万岁」ですって。南貨•新三陽の猫は店内にちゃんと「猫宅」作つてもらひ快適さう。タイ料理の金蘭花で早めの夕食。路線バスで香港島に爆睡のうちに還る。
憲法改正賛成は衆議院議員の84%で有権者での33%と大きな乖離(朝日新聞と東大の調査)。風が吹けば桶屋が儲かる、で実際に憲法改正が必要か、より議員だから必要と思つてゐるのだらう、大きな勘違ひ、といふか、それくらゐしか仕事の目標もないのか。

*1:このレトリックこそショックドクトリン(惨事便乗型の政治)と山口二郎先生。囚はれた同胞を救へぬと多くの良心的な人々が無力感覚える状況につけ込み首相は偽薬を売り込んでゐるやうなもの、この偽薬たち悪く実際に使用せば問題はさらに悪化、それでも薬の量が足りぬと大量の薬が投入され人々も感覚が麻痺で、同胞救ふにはこの薬を使ふしかないと興奮。歴史振り返れば、この薬の大量投与で戦争起きた例は山ほどあり。現実に自衛隊をば中東に遣つても人質を力づくで奪還するなど不可能。悪質な詐欺しの手法。人質事件をテコに自衛隊の行動ルール変へるなんてすり替えを許してはならない、野党もメディアも怯むな、と二郎さん。