富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

朝日は「低所得者」がお好き?

fookpaktsuen2014-10-23

農暦九月晦日霜降。昼前に香港中文大学。そこのReserch Centre for Comparative Japanese Studies(比較日本學研究中心)の開幕記念行事あり先日この日乗で苦言呈してをいてなんだが四半世紀昔の関係者といふことで末席を汚す。学部学科だと講義中心になるのでリサーチセンター出来ることで海外や他大学との共同研究や分際分野の研究など比較的柔軟的に対応できる、といふメリットがあるといふ。いずれにせよどの学部、学科とてかうしたリサーチセンター設けたいが授業料収入もなければ大学も渋チンなので強力な外部スポンサーが必要で、それがつけば大学本部側は「どうぞ」となる。日本研究学科には日系企業のタニマチがついたから出来たが地理学科や文化人類学には無理な話。簡単な式典のあと哈佛大學のAndrew Gordon教授による“Making Sense of Japan’s History of Lost Decades”といふ記念講演あり。1990年代からの失われた20年は未だ日本の現代史に組み入れるには尚早だが、としつつ緒論のやうな形で特徴的な点、それ以前の日本社会の特性や問題点との関連などについて。ゴードン博士は確か日本の労使関係史など専門だが、近年の日本の契約社員化や派遣など非正規雇用の広がり、年金など社会保障、自殺(とくに中年以降の男性)、少子化……などとにかくネガティヴな問題ばかり山積みで、それは高度成長期からバブルにかけての“Japan as No.1”的な日本称賛の時から評価がシフトしてゐる……ってゴードン教授には失礼だが、それはアタシでもわかる。講演のあとのQ&Aで「アメリカにも同様の問題があるが」とコメントもあつたが米国の場合はウソでもIT化でもグローバル経済の中でも米国産業が主力であつたりかなりポジティヴな点があるのに対して日本は褒めようとすると最近、誰のスピーチでも「コスプレ、アニメ」のCool Japanで、それぢゃダメだらう。何を学問として「日本」を研究するのか、できるのか、アタシにはさっぱりわからない。午後、二日続けて中環のCSL 1010へ。昨日夕方、突然、iPhoneでネットワークにつながらぬ支障あり。銀行に行くまではメール受信したりしてゐたし銀行のラウンジでは客用のWiFiで繋がってゐたが銀行出ると不通。銀行に戻るとWiFiで繋がる。電話とSMSは使へるし音楽も聴ける。リセットしても駄目。中環のCSL 1010に行くと成金的重厚趣味のラウンジのソファで係員と並んで座つてのやりとりがだうも慣れないのだが確かにおかしい、とSIMカード取り替へてみますか、とやつてみると問題なく作動。SIMカードの不良といふことで一件落着……のはずが今朝また同じ症状。で再訪。昨夕とは別の担当者が「あ、容量オーバーですね」と先方のノートブックで顧客データ見て指摘あり。一ヶ月の容量が最小の1GBで契約してゐるのだが、それが使用過多で1GBに達しSMSでメッセージ入つてゐたのだが100MB単位で購入せぬといけぬらしい。28日が毎月の更新なので100MBでHK$28だから、それで大丈夫でせう、と。原因は解決したが「それより動画なんて携帯で見てゐないしネット上で対戦型ゲームもしてゐないのだけど……」と言ふと係員君「最近はFacebookとか動画投稿があると自分が見てるつもりなくても勝手に始まりますからね、動画が動きっぱなしで容量を浪費してゐたり。Youtubeが開いてゐたりと」と的確な回答(Youtubeは昔それに懲りてアプリぢたい消してゐたが)。動画の下載止められないの?と尋ねたら「今ところダメですね」と。うーん、困ったもの。晩に陋宅で参鶏湯飰す。
朝日新聞の社説「香港の対話、問われる中国の態度」で「財界人が多数を占める指名委に選ばれる長官候補者に低所得者の声は届かないという問題提起」といふ指摘あり。九月三日の社説でも「貧富の差拡大し貧困層ら「持たざる者」の不満が行政選挙普選実施、民主化の声に重なっている」なんて記述があつたが、なぜ朝日新聞が今回のこの民主化運動をそこまで貧困層によるもの、とするのか、その意図がわからぬ。今更、革命は無産階級が起こす、でもないでせうに。或いは朝日新聞から見ると中産階級低所得者層に映るのか。香港の地元紙や国際紙の論調を見ても今回の運動を貧困が起因としている論調は(私の読んでゐる中には)朝日のほかには見当たらず。「財界人が多数を占める指名委に選ばれる長官候補者に一般市民の声は届かないという問題提起」でいゝのだが。朝日新聞の40年来の愛読者として築地にこれを質したが、今回も「今回の民主化運動では学生や比較的豊かな層が運動の主体に見えますが、実はその奥に低所得者の存在があるのです」と、また「透視しろ」と言はれるのかしらw。敢へて「低所得者」というキーワードに拘れば、行政長官CY梁が行政長官選挙の候補者指名で「住民指名」制度導入すると「有権者のマジョリティは低所得者なので選挙を低所得者が主導することになる」とワケのわからないこと言ってしまい顰蹙をかつてゐるが、それが載った(例へば)20日のFT紙の記事“Hong Kong ‘lucky’ China has not stopped protests, says CY Leung” (こちら)には
“If it’s entirely a numbers game – numeric representation – then obviously you’d be talking to half the people in Hong Kong [that] earn less than US$1,800 a month,” he said in reference to the median per capita wage. “You would end up with that kind of politics and policies.”
His comments are likely to anger those in Hong Kong who argue its system of government favours the rich. Hong Kong suffers from the highest inequality in the developed world, with one in five residents living in poverty, according to charity Feeding Hong Kong. Mr Leung admitted that the government needed to do more to fix the problems facing the poor such as a lack of social mobility and the chronic shortage of housing, which he said was “not acceptable”.
とあり、これはあくまで測量梁の発言では官商勾結に不満持つ市民の反発を更に買ふだけ(His comments are likely to anger those in Hong Kong who argue its system of government favours the rich)と忠告してゐるもので「低所得者の声が届かない」といふやうな所得格差での限定的問題について述べてはゐない。→ちなみにこのご意見については翌朝、朝日新聞から「お寄せいただいたご意見は担当部へ伝えました。今後の紙面づくりの参考にさせていただきます。」と返事あり。具体的な記事の正誤についての問合せは真摯に答へるが朝日の論調に対する批判はいち/\反論説明もしないわね、たゞ今回は論調以前の「認識に誤解あり」の問題だと思ふが。