富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

いとしき大地に頬づえはつかない

fookpaktsuen2014-10-12

農暦九月十九日。晴。風も心地よく半年ぶり?いや、もっと久しぶりで裏山に入り一時間走る。ジムに寄り帰宅してうどん煮て食し午睡。Z嬢と西灣河の電影資料館。New Japanese Cinema in 1980’sといふシリーズで東陽一監督(1934〜)の1979年の映画『もう頬づえはつかない』見る。香港では主演の桃井かおりの胸が映りゆるい性交シーンあることこで成人指定。当時の高校生には年上の桃井かおりが女子大生演じることに違和感感じなかつたが今になつてみると「世代の幼稚化」もあるが当時の桃井かおりが大人すぎる。香港の客には大学生が、それも早稲田の学生が『ぴあ』の編集部ならまだしも美容室やイトーヨーカドー、彼氏が吉野家でバイトするのは「大学生がなぜ?」だらう。当時は桃井かおりばかり見てゐたので相手役が奥田瑛二森本レオ*1なのも今回思い出して「さうだったの」だが、何よりも今回の収穫は桃井かおりの住むアパートの大家で加茂さくら演じる美容師の旦那役の伊丹十三、やはりすごい役者。直接の筋とは関係ないのだが、この映画はレオ、瑛二、十三それに桃井かおりの父まで出てくる男はすべてダメ男ばかりだが髪結ひの亭主らしさも格別、唯一それなりの人生観、存在感を見せてゐる。そんな男性に対して女性は気丈夫で女子大生の桃井かおりもそんな女になつてゆくから当時この映画が若い女性に爆発的に人気を得たのも納得。だが男性の否定しか根本になく、若者も何するでもなく男女問はず日本人全般「なにもない時代」の幕開けのやうな映画と今になつて思ふ。桃井かおりはデータ見直してみるとテレビデビュー作である1971年のNTV『花は花よめ』での半玉役(金太郎)で見てゐたわけで、その後も太陽にほえろ!ショーケン傷だらけの天使俺たちの旅、前略おふくろ様とヒットドラマ続き『もう頬づえ』の前年の『浮浪雲』では、あの個性でスタンス築いてゐたしブレイクで『もう頬づえ』の年には『ちょっとマイウェイ』で八千草薫の妹役。映画は『もう頬づえ』のあと『ぴあ』で探して堀切菖蒲園の三本立て館で1973年の映画「エロスは甘き香り」見たのも懐かしい思ひ出。一旦帰宅。遅い午睡。西灣河の景福茶樓に夕餉。蒸肉餅と鹹魚ナントカ豆腐煲。晩のテレビニュースで行政長官測量梁のインタビュー流れてゐたが余りの倦怠感とげっそりが驚くほど。催涙弾の使用は現場の責任者の判断によるもので必要最小限の使用であつたものと信じ、それ以上のコメント控へる、と弁明、司会が「催涙弾の使用中止の決定は?」と突っ込むと言葉濁す。再び電影資料館。柳町光男監督の『さらば愛しき大地』見る。アタシにとつては郷土映画(笑)。パンフレットに對白は日語で英語の字幕あり、と出てゐるが對白は茨城弁でアタシですら所々英語の字幕の助け借りる(笑)。茨城でも鹿行(ろっこう)地方(茨城県東南部の昔の鹿島郡と行方(なめかた)郡)で言葉が更に汚いのかもしれないが映画での茨城弁は実際以上になんだか所謂「東北のズーズー弁」←実在しない、が茨城弁と一緒になつてゐる嫌ひあり(パンフには「日本東北茨城縣」とあり)。1982年で映画で、時代設定は少し前の日本列島改造での鹿島臨海工業地帯が舞台で、トラック運転手の根津甚八と女房の山口美也子、愛人が秋吉久美子エビジョンイルと同じ潮来町出身の柳町監督で、水戸一高に通つてゐたので根津は愛人(秋吉)との娘を連れ(映画の中で唯一幸せな場面だが)水戸に来て伊勢甚でパートで買ひ物し(懐かしい紙袋の意匠)、偕楽園、そして千波湖畔のレイクランドで遊び(1985年?に閉園してゐるので貴重な映像)大洗海岸で茹で蟹を貪り食ふシーンがいゝ。今では映画、舞台から遠ざかつてゐる根津甚八の好演、シャブ中になつてからの眼だけでも凄い。柳町監督は1979年の北区舞台にした『十九歳の地図』(1979年)は普段は映画で感動しないアタシが本間優二に本当に意識が被り続けて二度見は稀。寡作な監督だが、この『さらば』に続く1985年の『火まつり』も中上作品で欣也と喜和子だから文句なし。それが5年後のジョン=ローン主演『チャイナシャドー』で何が起きてしまつたのか……香港でのシーンでリージェントホテル(現インターコンチ)の場面が印象に残ること以外は敢へて言及は避けたいところ。
▼元立法會議長で中人代香港代表、全人代常委でもある范徐麗泰オバサンが民主化運動について「民主的な闘争で市民生活に悪影響を及ぼすならば民主独裁である」と批判。おい/\。民主主義にも欠陥あるのは承知、だが現実にどの制度よりもマシだから民主主義を採択なわけで民主独裁はまだ一党独裁よりマシだろ。

*1:中学1年のときに同じクラスで仲良かつた女子ヨシナリさんが森本レオがステキだといふのがピンとこなかつたが、この作品ではあのキャラが女性の母性本能を引きつけるのだと思つた。