富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

酒五升

fookpaktsuen2014-08-08

農暦七月十三日。Z嬢と朝七時すぎに香港空港。CX548便で東京(羽田)へ。初めてプレミアムエコノミー席。斜め掛けのCに比べれば前向いて坐れ小柄な私らには席の幅も充分。機内食はだうせロクに食べないのでYの機内食で充分。今回はこのクラスの最前列、足長席である上にこの列だけはフットレストもあり。羽田からモノレールで浜松町。タクシーで麻布鳥居坂国際文化会館。下榻。Z嬢に香港でDVD購入依頼してゐた映画業界のF嬢待ち受けでDVDお渡し。お礼に、と浅草亀十のどら焼きいたゞく。客室に入り早速お茶を点てどら焼き頬張る。夕方出街。鳥居坂を丁度、港区のコミュニティバス走つて来て飛び乗ると東京タワー経由で神谷町。銀座線で日本橋高島屋丸善で暇つぶし。朝日酒造が営む「越州日本橋店。かつて香港に駐在された三氏、T嬢、先週末に来港されてたダブルK嬢と会食。酒豪揃ひで洗心に始まり越乃かぎろひ、勝保、朝日山の大吟醸、参乃越州を五升吞む。麻布狸坂にお住まひのK嬢送り鳥居坂までタクシーで戻る。
文化服装学院の小池千枝学院長の追悼記事(昨日の朝日夕刊)で高田賢三が回顧談の中で1964年にニコルの松田光弘と一緒に渡仏した時の話、フランスへの船旅で「どこへ寄港しても貧しいけれど楽しそうで色鮮やかな民族衣装があつた」と語つてゐるのだが「まだ人民服姿ばかりの香港」と……香港で人民服はないだらう。
中教審が「道徳」の教科への引き上げで答申。指導項目に「公正」や「誠実」、評価は数値は馴染まない、として指導要録に記述欄設けるといふ。人の心を教育で支配する怖さ。中島京子が朝日に寄稿してゐるのだが小説「小さいおうち」で昭和十年といふのは、文化的には円熟期で、都会の市民層には教養も分別もあり平和主義的な傾向もあつた、と。しかし戦争や侵略、軍国主義にに確かに日本は陥つていくのだが、美しい風景や音楽や美術、文学も円熟した文化に接し毎日を丁寧に生きる当時の人々は、実はさうした国の動きに無知、無関心、批判力がなく一方的な宣伝に簡単に騙される主体性の無さもある。戦争はどこか遠い土地の出来事。今の日本の政治や世界への無関心もそれに近いのではないか、と中島京子。今の日本は民主主義国家できちんと情報も伝へられる中で国民が主権者としてまともな選択をすれば世の中はそんなにはおかしな方向にはいかぬはず、それなのに多くの有権者が選挙で棄権するなかで明らかに自分自身を苦しめることになる政策や法律が国会を通過しても、結果的にそれを支持したことになると気づかず、さうしたなかで毒が身体慣らすやうに「秘密保護法」など受け入れてしまふのではないか、と。「平和な日常は必ずしも戦争の非日常性と相反するものではなく気味悪くも同居してしまえるのだ」と教えるのが歴史。集団的自衛権では晋三のやり方に国民の8割余が充分に検討が尽くされてゐない、と感じるだけの良心はあるが、「小さいおうち」の時代と違つて自分たちが主権者なのだから選挙に行き自分の考へに近い候補者に投票すればよく、関心をもつ状態を日常化させることが大切、と当たり前のことだが当たり前のことが蔑ろにされてゐるのだから。中島京子憲法12条をあげる。

この憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。