富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

甘牌燒鵝

fookpaktsuen2014-08-07

農暦七月十二日。立秋。本日は十年ぶりで養和病院の歯科へ。数日前に長崎の甘古呂餅を一口いたゞいたら奥歯の銀のカバー外れてしまひ、こゝ十年お世話になつてゐる陋宅近隣のT歯科医に電話すると今月下旬だと言はれ養和に電話すると今日の昼前で良いといふ。折角だから十年ぶりに歯のクリーニングもしませう。誰かご指名の医師は?といふので、まさか銀のカバーが外れました、で御大L医師の指名など失礼で「誰でも良い」と今日往つてみると通された診察室の名前はL御大とある。「やぁ久しぶり」と張りのある低音で十年ぶんは年とられたがヤクザ顔から艾未未のやうな哲学的風貌となつたL御大登場。ヤニ臭いのだけは変はらず。最初に看護婦が一時間余かけて丁寧にクリーニング。歯茎に刺激は痛いが、この看護婦が王菲のやうな声でなぜかチャイコフスキーが好きなのかしら?いくつかのフレーズをハミングしながら、の声が心地良い。要不要の多少はあるがこまめに治療検討カ所のチェック、接写のやうなレンズでの撮影、で御大再登場で銀のカバーつけ十年ぶりに歯全体のパノラマレントゲン写真まで正味二時間半。最後に、そのつきっきりで施術してくれた看護婦から写真渡され、どの歯が何処が問題で治療の必要性の多少、金額など詳しく説明あり。歯科の待合室はソファの他にライティングディスクもありメールなど少し仕事させてもらつてから病院内の餐庁へ。お昼の外来は凡そセットで68ドルとけして安くないが、これは「それだけ払ふ方に限定」か。日本の病院食堂では考へられないセンスの、鶏肉それも皮付きのロースト細きり入りの米粉。病院だから塩分控へ目で、これが美味。その足で三ヶ月に一回の湾仔の公立Peel診療所。専科は今日はとくに空いてゐて受付から血圧、血糖値の検査、診察、薬受取まで30分きっかり。お見事。一種類だけ公立病院で供さぬ(HK$45には含まれない)血糖関係の処方薬(ジャヌビア)購ひに湾仔の処方薬局に寄つたらヘネシー道の向かひ側に甘牌燒鵝。今週月曜に飰した甘飯館営む甘崇軒氏の弟、崇轅氏が燒鵝だけで勝負に挑んだのが、つまり祖父の甘穗莩氏が廣源西街の大牌檔で燒鵝売り始め評判となつて今日の𨉷記になつた、その先祖返りになる食肆が此処。折角ここまで来て食べぬわけにはいかぬので燒鵝褚粉いたゞく。美味。昔の𨉷記にゐた老給仕が矍鑠と働く姿。先代の遺徳偲び退休してゐた先達たちが応援か。散髪。
▼北角に茅台酒売る専門店が出来たのは五、六年前かしら。なぜ北角なの?と怪訝に思へたが客筋は香港人にあらず(だいたい白酒系は飲まないだらう)大陸からの田舎漢観光客。彼らが国産の酒を何故香港で買ふか、といへば国内には偽物多いからで香港で仕入れた茅台酒を接待、宴会に供すため。その大陸客相手に「本物の大陸産」茅台酒売る店が、いつの間にか鉄観音茶の専門店に変身してゐた。もはや香港で茅台酒仕入れるやうな威勢のいゝ大陸客は減つたのかしら。で中国茶。これも偽物が少なくないといふが茅台酒の利鞘に比べると商売としてはだうかしら。陋宅にも貰つた茅台酒が3本あるが、やはり自宅で開けやうといふ気にならず。町中で路上には茅台酒五糧液の瓶買ひ〼といふオヤジがゐて空瓶を香港で回収し大陸で売れるのは本物の瓶に偽酒を注ぎ売る詐欺のため。飲まずに封したまゝの茅台酒など、その瓶買ひに渡すと中の酒が劣化してゐたりすると面倒なので、その場で下水溝にじゃーっと流され、つまり中身より空瓶の方が大切。