富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ミハイル=プレトニョフのピアノ復活

fookpaktsuen2014-05-21

農暦四月廿三日。小満。午前中も思ひきり降つたが昼から晴れ間のぞく。もう何週間ぶりの晴れ間かしら。晩に尖沙咀。池記麺家に入つたら単品での注文受け付けず何かとセットメニューで客単価増狙ひ。雲呑麺と芥蘭でHK$53には驚いた。香港文化中心。ミハイル=プレトニョフのピアノリサイタル。暫く前に朝日新聞で「9年ぶりの鍵盤」といふ記事(吉田純子)は

「ピアニストというより一人の芸術家でありたい」と2007年から最近まで公の場では一切ピアノを弾かなかった……

って2010年の「あの事件があって」のこともあるのだが記事では一切「ピアニストというより少年たちにバドミントンの楽しさ教える一人のコーチでありたかった」パタヤ騒動でのプレトニョフ容疑者の醜聞には触れず(当たり前か……)。ピアノはShigeru Kawaiが今のお気にらしい(こちら)。音が大変丸みを帯びてゐてシューベルトソナタ4番イ短調(D537)のときはちょっと物足りない気がしたが続くソナタ13番イ長調(D664)はまぁプレトニョフさんの技巧、この曲への思ひ入れに河合滋=ピアノがまぁよく合ふこと。Z嬢と「うまいねぇ」と、うっとり。中入り後はバッハのイギリス組曲。形式美、形式美……のこの曲は文化中心に据ゑられてゐるスタンヱイのほうが良いはず。前半のシューベルトの世界から引き剥がされるやうにバッハ。今晩の最後はスクリャービンの24のプレリュードでアタシはスクリャービンがわかるやうになるにはアト50年は必要。アンコールに「1曲だけ」とショパンノクターン20番。ショパンノクターンといふと最近はフジ子=ヘミングみたいな「これでもか」の印象強いが、まぁ枯れた感じをプレトニョフ師が何とも柔らかに優しく奏でること(まさに魔法の指)。ロシア政府の働きかけとタイ政府の超法規的措置なければプレトニョフ容疑者は今も懲役刑でタイで囚人だつたと思ふと「誰よりも上手なピアノ」といふ事実は法をも超へるのか……と複雑。確かにこの人がゐなければロシアナショナル管弦楽団だつて成立しないのだから。会場でこのピアニストにこのオケで指揮がロストロポーヴィチラフマニノフプロコフィエフの、いずれも3番合わせたCD(2003年録音の独グラムフォン)購ふ。