富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

严惩暴恐犯罪,保障人民安全!てかっ?

農暦二月初二。「維人血洗昆明火車站27死 疆獨集團跨省施襲109人傷」と朝刊の見出し踊るは昨晩の昆明火車站前、新疆ウイグル人集団によると見られる無差別殺傷事件。このテの疆独暴力活動、その報復の弾圧は増大。中国のGDPの伸びを不安定さが超へた臨界点に近づくばかり。久々の休日。机まわりの整理してゐるうちに晝となる。北角渣華道街市。食堂「住家菜」に昼餉。店内のテレビで晝のニュースは昆明の事件の続報。それを眺める客が「 癡線!」とテロリスト非難するが同じやうに新疆では漢族の官憲により新疆人が命失つたり、圧政に苦しみ抑圧されてゐるか、は全く気にもしないかしら。続いてのテレビニュースは香港での言論弾圧に抗議する市民デモだが昆明の無差別殺人に怒つた女は、こちらには全く無関心。そんなもの。北角の渣華道と琴行街の角の雑居ビル地下に大陸ツアー客専用のレストランあり。此処で晝、夜とツアーバスが集結するので渣華道の渋滞は深刻。この雑居ビル地下にあるのは盈通閣といふ食肆で、かなり低価格で決まりきつた広東料理?出すらしく格安ツアーが御用達。まぁ客の田舎漢ぶりは物凄い。どんな接待を受けてゐるのかしら。帰宅してモスカテル一杯飲んだら睡魔に襲はれ気づいたら早晩。怠惰な一日。もう季節外れ近いホウレン草の鍋で豚しゃぶ。食後の記憶相変はらず朦朧。
▼経済学者の伊東光晴先生といへばアタシが岩波の『世界』読み始めたころには、すでに理論経済学の大家だつたが1927年生まれの先生はまだ第一線。岩波『世界』三月号で「人口減少下の経済学」で晋三のアベノミクスにおける現状認識の誤謬を見事に指摘。
日本の「株価の上昇」と「為替の円安へのシフト」は金融緩和というアベノミクス第一の矢によって生じたものではないこと。

  • 利子率低下への期待は投資を増加させることはない。現状の低金利を見よ。
  • 物価上昇を予想する多くの人は資産価値が上がって消費支出増やすのではなく、生活防衛のために支出を切り詰めている。
  • 日銀の大量貨幣供給は戦時経済でのmonetization、つまり政府の債務を貨幣に変えることにすぎない。
  • 15年間続いた不況はウソで2002年からリーマンショックまで好況があったこと。
  • 安倍首相就任のときはすでに日本経済は緩やかな上昇過程にあり、かならずしも不況ではなかった。
  • 現状を不況と決めつけることにより上昇過程を示しだした景気を自らの政策の成果とする政治家のしたたかさ。
  • 民間投資の増加→経済成長→税収増加で財政欠陥は解決せず。八十年代末のバブル、十年前の好景気でも財政欠陥あり。
  • 適正な経済成長率よりも現実の経済成長率が大きいことは現実の有効需要の増加が適正なものより大きいことを意味し、操業度が上がり景気は拡大。逆に現実成長率が適正な経済成長率以下になる場合は、たとえ成長していても不況感が強まり投資は減少し経済は更に不況感を増す。

……と分析の上、自然成長率とは人口の増加率であり、日本の経済問題がこゝにあること。それは間違ひない。だが伊東先生ですら、これをだう打開するか、となると「成熟社会に見合った政策」とか「人口減少社会に軟着陸するための英知」といふ抽象的なことしか提示できず。
▼2020年五輪に向け、また低能な都市開発が続くであらう東京について建築家の槇文彦氏曰く

東京の穏やかさは貴重な財産で(略)東京に限らず日本の都市、文化にはある種の優しさが存在している。(略)日本は倫敦や伯林のような整然とした町並みはもっていません。ただ、細かいところの気配り……例えば清潔さ、標識など案内の丁寧さ、それに単に人を集めて流すというだけではない工夫がされているスペースが多く、街を住みやすくしている。必ずしも「美観」が一番大事ではなくて、やはりそこに住んでいる人が楽しさや歓びを見いだせることが大事なのではないか。

このくらゐのゆとりが都市開発にはやはり大切なはず。槇大人曰く「現在は巨大なディヴェロップメントカンパニーと、その資本の力が目立っていますが、もう少し小さな、地域に根差したディヴェロッパー、そういうものが必要な時代になってきている」と。御意。(以上、岩波『世界』三月号。

世界 2014年 03月号 [雑誌]

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