富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

思想、晋三の自由

fookpaktsuen2014-02-22

農暦正月廿三日。曇。土曜だがひっそりとした官邸でご執務。曾地の冬季五輪に大した興味もなく話題に殆どついていつてゐないが浅田真央選手のフィギアスケートのSPなるプログラムでの不出来は森嘉朗発言で知り録画映像でフリーの演技見たが、さすがの運痴のアタシでもその演技には胸を打たれるものあり。夕方、中環站でZ嬢と待合せ荃湾に往く。最近、荃湾ではいつものコースで民豐粉麺で餃子購ひ正宗山西刀削面皇に飰す。荃湾、ふと気になり始めると「の」多し。New Town Mallは「新の城」だし寿司のテイクアウトは「新の鮮」等等。いっそのこと「荃の湾」は如何かしら。荃湾大會堂。連日の香港芸術節で今晩はJohn O’Conorのピアノリサイタル。「演奏者の意向で音響効果を優先し会場内の空調=冷房は控えめにしてあります、予めご諒承ください」と張り紙あり。音響では香港でもトップクラスの小屋だが老朽化した空調システムの音がピアノリサイタルでは気になるところ。とくにステージ上部のエアコンが、なぜそこにダクトが並ぶのかも不思議な設計だが音は気になる。愛蘭出身のJohn O’Conor(1947〜)はベートーベンの冠ついたコンクールで若いときに優勝して、それ以来ベートーベン弾きとして著名。今晩の演目はピアノソナタばかり8番・悲愴、14番・月光、中入り後は17番・テンペストと21番・ワルトシュタインといふ、おそらく誰でも聴いたことあるベートーベンのソナタの名曲集。会場は大入り満員。声楽やヴァイオリン弾きなどに比べピアニストと指揮者は引退が許されない過酷さ、などと中村紘子のエッセイなどでよく書かれてゐるが本当にジャズや落語なら多少のトチリも許容で円熟だの老練だのと言はれ済むところ、ピアニストは、とくにベートーベンのソナタなどとなると一音のミスタッチでも目立ち、やたら大事件のやうに思はれるので難儀。オコーナーさんもミスタッチ気にならない、といへば噓になる散見で、途中、左右の音が乱れたり、同じパッセージを1つ余計に繰り返してしまつたり、も、あり。ふと秀和さんのホロヴィッツに対する「ひびの入った骨董品」といふ発言は(あの演奏ぢたいをアタシはテレビで見てゐて「ひびの入った」だとは一つも思はなかつたが)かういふ時に出てくるのかしら、と考へたりする(Z嬢も演奏会のあと同じことを思つてゐた、と)。テンペストの3楽章やワルトシュタインの1楽章では体力が果たしてもつのだろうか、などと余計なお世話で心配になつたり。だが復活してアンコールはエコセーズとエリーゼのために。優しい笑顔の素敵なオコーナーさん。会場はけして冷房が足りず暑いなんて思はなかつたが、眠りに落ちやすい室温なのか、2列目で見てゐたが、まぁ隣りの席の子どもも静かだがよく熟睡するわ、最前列でも睡眠薬飲んだのでは?くらゐに睡魔に襲はれる客ずらりと並び、これもご愛嬌。楽章の途中で拍手したり五月蝿かつたりするよか、よっぽどいゝが。帰宅して三更に岩波『図書』昨年十月号読む。地味な冊子で書店に配られてゐたのを昔はとき/\手にする程度だつたが読んでみると下手な総合誌より内容充実で今ではわざ/\定期購読。といつても一冊百円だかで送料程度。この号も深谷勝己「歴史のかたち」に始まり大江健三郎、粕谷元、池澤夏樹佐伯泰英、青柳いずみこ……と書き手もずらりと並ぶ。赤川次郎が「禁じられた大人の遊び」といふ文章書いてゐるが赤川の作品一切読んだこともないが恐らく娯楽的な作品多いはずだが、この「禁じられた」は骨太の時事評論。映画「禁じられた遊び」の話から始まり「自由、平等、博愛」掲げるフランスがヴィシー政権では「労働、家庭、祖国」を謳ひ、これがそのまま晋三の「美しい日本」に重なる、と指摘。ヒトラーの、第一次世界大戦後のドイツで経済苦境に苦しむ国民の不満吸収で人気高め暴力への恐怖で人々黙らせたのがアベノミクス掲げる晋三よく似てゐる、とまで言及。昨年の衆院選挙のとき晋三の選挙応援演説中に晋三への疑問書いたプラカード持つてゐた女性を警察が取り囲みプラカード取り上げ詰問した事件あつたが、この女性は警察に教へたはずもない勤務先にまでこの件が告げられ、この件はマスコミでも小さくしか報道されなかつたが赤川次郎曰くこれこそ晋三の政権の素顔さらした出来事でもっと問題にすべきだつた、と。御意。もしこれが野党党首への疑問記したプラカードだつたら警察は取り締まつてゐたか、と。憲法の保障する思想信条の自由を警察が自ら否定したもの。……ふと思つたが「思想、晋三の自由」だね、こりゃ。日本国憲法第19条「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」は改憲

首相及び晋三の自由は、これを侵してはならない。

になるのかしら。たゞナチスの時代と今の大きな違ひは今は世界がナチスの時代知つてゐること。だから世界は晋三らの手口を許容できないこと。赤川さんもう一つ重大だ、と指摘するのは福島の核禍での汚染水の膨大な流出に何の手も打てぬ無責任な晋三の姿勢。

海がどんなに広くても限りなく放射能を出し続ける原発を浄化してはくれない。この現実を無視して他国への原発を売り込むのは正に「禁じられた遊び」と言うしかない。

赤川次郎。御意。