富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2014-02-17

農暦一月十八日。朝の気温が摂氏16度くらゐまで上がり濃霧。やっと風邪の諸症状から抜け出す。抗生物質ってすごい。その服用でこれでまた身体の本質的な体力がまた少し弱くなつたのかしら。昼にFCCでフィナンシャルタイムズのAsia EditorであるDavid Pilling記者の昼餉講演拝聴。題して“Abenomics or Abegeddon?”といふ些か週刊現代的(笑)なもので先月15日のFT紙の記事“This will be a crunch year for the Japanese economy”(こちら)によるもの。日本のGDPとか成長率とか見ると先進国のなかでかなり弱つて見えるが労働人口年齢一人あたりのGDPであるとか、さまざまな指数で見るとけして劣らず、企業の資金備蓄や箪笥預金(冷蔵庫で例へてゐたが)など含みで考えると、これが市場に出れば(それが出ないのが問題なのだが)日本の体力はかなりのもので、老齢化と労働力は問題だが人口減少ぢたいは国家面積や英国やドイツなど先進国と比べ現在でも人口が多すぎるくらゐ。アベノミクスがアベゲドンに変貌するとしたらハイパーインフレ金利上昇、市場に対する財政政策の優越(Fiscal Dominanceってさういふこと?)、海外への資本逃避や何よりアベノミクスがポシャること(Fizzle Out)など危険要素もあるが、いずれにせよ日本の(腐っても鯛、の)経済力、技術力などあれば、このまゝ推移して悪くなる要因もない、といふやうな見方。もっと思ひきつた女性と外国人材の受け入れが必要なのは言ふまでもなし。そも/\アベノミクスがやたら脚光浴びるが民主党政権の晩期にはすでに経済好転の兆しが見えてゐたこと。さう/\。エコノミスト誌(最新号)の“The English empire”も必読(こちら)。日記も日本語で書いてゐる場合ではない加茂。午後、某セミナーで末席汚す。早晩に帰宅して回復記念にBaccaratのローハングラスでハイボールいたゞく。素敵な黄金色と蔦模様に思はずうっとり。暫し飲むこと忘れる。お酒に合わせ音楽聴きたくなり、やはりドビッシーの前奏曲かしら、と思ひつゝ敢へてグールドでベートーベンのピアノ協奏曲通し。これが実に合ふ……なんて言つてゐても二杯目には「柿の種」登場で思ひっきりベタに日本的。寝るまでずっと音楽を聴く。信報(今日)の劉偉霖氏の音楽評でシフ先生が
1784年莫扎特寫了六首鋼琴協奏曲,佔他原創二十三首鋼琴協奏曲的四分一。寫這麼多並非偶然,那年莫扎特終於憑彈琴在維也納成名,彈的就是自己創作的協奏曲,自己兼任指揮。席夫(Andras Schiff)為薩爾茲堡莫扎特周(Mozartwoche Salzburg)編了一套「莫扎特1784年」的節目,除了那六首協奏曲,尚有管樂五重奏、弦樂四重奏、鋼琴奏鳴曲、鋼琴變奏曲及小提琴奏鳴曲各一首。
なんてとんでもない音楽会されたことを識る(こちらこちら)。あゝ本当に聴きたい。
▼記録的な大雪。関東内陸部から信州にかけ大変なことに。日本より香港の新聞(蘋果日報)の方がずっと詳しい報道。相変らず救助救援など初期対応の悪い日本。こんな時こそ首相は「最高の責任者は私だ。除雪は私が責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける。審判を受けるのは防災担当大臣ではない。私だ!」と「美しい日本」のため日夜陣頭指揮か、と思つたら
15日【午前】公邸で過ごす。【午後】2時25分、報道各社のインタビュー。31分、ソチ冬季五輪のフィギュアスケート男子で金メダルを獲得した羽生結弦選手を電話で祝福。54分、東京・富ヶ谷の自宅。
16日【午前】東京・富ヶ谷の自宅で過ごす。【午後】5時49分、東京・赤坂の天ぷら料理店「楽亭」。支援者らと食事。8時5分、自宅。
といふ。しかも羽生君へ祝福が「美しいたたずまいはさすが日本男児だ」ですって。嗚呼。ところで普通、自宅で過ごすときって「来客なし」っていち/\言ふかね。首相動静で「来客なし」と記者クラブに言はれると逆に絶対にお忍びで誰か来てるだろ、と疑ふのはアタシだけかしら。
毎日新聞山田孝男さんがNHK経営委員舌禍でこれも興味深い分析を披露。百田某のあれは経営委員が都知事選応援で特定候補応援の上に政治的立場むき出しで他候補を「人間のクズ」と宣つた上で「プライベートで問題ない」とする「たわいなさに驚く」。一報、長谷川某女の野村秋介故人讃美の文章は憲法とメディア軽視、神懸かり的(笑)で百田某の都知事選応援より問題視される向きもあるが寄稿は経営委員就任前で「批判に対してミもフタもない反論をしているわけはない」と。確かに。そして当今の言論状況ではNHK、朝日、毎日に対する批判も憲法懐疑も珍しくないので憲法観、メディア観だけで委員失格宣言しようとしても受容されないのが(悲しいかな)現実、と。確かにさういふ現実にアタシたちはゐる。
三津五郎が一昨日、半年ぶりに舞踊で舞台復帰(国立劇場)。母は大雪のなかそれを見てきたが大和屋演出の男衆廿人からの舞台が良かつたといふ。帰りは無料バスが出て雪に難儀せず、と。歌舞伎といへば国立の三月歌舞伎公演で時蔵が「切られお富」に初役の由(都新聞)。「切られ与三」(与話情浮名横櫛=よわなさけうきなのよこぐし)の裏バージョンの「切られお富」(處女翫浮名横櫛=むすめごのみうきなのよこぐし)で三代目が得意にした演目でも舞台にかゝるのは少ないとはいへ時蔵が「切られ与三」でもお富演じたのが僅か八回だといふのに驚いた。時蔵本人は「切られ」で「お富を八回も演じて」と言つてゐるが。坂東彌十郎の蝙蝠安、これが見てみたい。