農暦十月廿五日。早晩に帰宅するとすつかり日暮れの廊下に掛けた短冊が、蟻の、夏の短冊のまゝだつたことに今更気づく。掛けかへたのが
雁のこゑ滝見草履のしめりかな
恐らく祖父の句会仲間だらう方の句、滝見草履?なんて聞いたことないが、きつと温泉かどこかで近くの瀧でも見に行つた時にさらり、と詠んだ句で、同行の輩にはわかる光景かしら。俳号(順風?)は祖父と違ふが短冊に柔らかな筆致は祖父によるものか。「草」のまさに草書もいゝが「見」をこゝまでくずせるか……おそらく短冊を手にしてさっと書き流すと「見」の一画目が着地しなかた、酔つてゐたか。それもまた風情あり。祖父は書を能くした人で祖父が書くと「生誕」といふ字もこんな姿となる。夕餉は豆腐と豚肉のチゲ。シャルドネ(Saint Clair 11年)がチゲに合ふ。晩に摂氏十五度くらゐまで冷える。
▼新聞による事実公表の認識の差が興味深い。都知事猪瀬某の特洲会五千万借用疑惑で猪瀬某が嘘っぽい借用証公開で見せた証書、朝日新聞は猪瀬某の個人事務所の住所暈したが都新聞は「東京都港区西麻布2-24-37」とそのまゝ。まぁグーグル地図に表示されるほどのオフィスイノセ(左の写真)なので隠しやうもない、と思ふが。またHIV感染血液輸血の出来事では朝日は「男性同性愛者」が検査目的で献血、とはっきり書いてゐるが都新聞はこの男性が「感染リスクのある性的接触を持ったていた」と書くに留めてゐる。猪瀬某の事務所住所など調べようと思へば公開されたもので容易なのだから個人情報ともいへず、後者では男性同性愛への偏見の増長考慮と思ふと朝日より都が見識あり、か。