富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ハルキムラカミ短編『ドライブ・マイ・カー』一読

fookpaktsuen2013-11-12

農暦十月十日。雨。朝の気温摂氏21度。寒っ。フィリピン襲つた台風被害について先週末から新聞報道見てゐると遠き米国や英国で被害の状況がどれだけ大きく、詳細に伝へられてゐるか、それに比べ日本の記事の扱いがどれだけ小さいか、の温度差に驚くばかり。それが日本の人的、金的援助も遅々とすることの原因なのだろうが。晩にハヤシライス飰す。文藝春秋十二月号読む。ハルキムラカミの短編小説『ドライブ・マイ・カー』一読したが凄すぎて言葉もなし。どうしてこんな小説が書けるのか驚きでアタシの拙筆ではその驚きをとても表現できず。なんてことなのかしら。これはいつたい何なのかしら。

これまで女性が運転する車に何度も乗ったが、家福の目からすれば彼女たちの運転ぶりは……

といふ書き出しで、主人公がフツーに鈴木さんなら苗字だとわかるが「家福の目」が何か「家が幸せである人から見た場合の目」といふ意味だと思つてしまつたくらゐ相変らず波長合はず。文藝春秋といへば十一月も未読で積んであつたのを思ひ出してパラ/\と捲る。東京五輪勝ち取つた元首相森さんの日記面白い。三笠宮の彬子はんもブエノスアイレスに行つてゐたさうだが宮内庁が招致活動と一線と画すように」の圧力でせっかく来たのに招致に直接関はれなかつたことは森的には「せっかくお見えになられたのだから、もっと自由に招致活動をしていただきたかった」と。おい/\……。さらに森日記はクウェートのアハマド殿下がどれだけ尽力してくれたか、北朝鮮IOC委員が結果発表前に「おめでとう」と言つたとか、暴言癖ある慎太郎に比べ「何も知らない猪瀬知事で正解だった。自分の力でやったと思い込んでいるところが可愛らしいけれど、彼が英語でスピーチしたところで招致レースには大した影響はない」と言ひたい放題。いずれにせよ森君も含めこのレベルで世の中動いてゐると思ふと情けないやら、これでゝのだ〜!か。
▼香港でも日本製のノンアルコール麦酒発売。350mlで価格がHK$20って、500mlのサントリープレミアムモルツより高い由。発泡酒も第三の麦酒も飲んだことなきアタシは果報者。
▼道徳の評価教科化。「自然や崇高なものとのかかわり」なんて、どう評価するのか、と識者呆れたところで、もはや晋三率ひるロクでもない日本では驚くほどのことでなし。それでも道徳の教科書の編集者が言ふ「『崇高なもの』は抽象的なので子どもが体験に基づいて振り返ることが難しく、個人差も大きい。畏敬の念を抱くか、どう評価するかも難しいのでは」は正論だし本田由紀(東大)の「記述式とはいえ、多様性の尊重や子どもの内面の事由を損なうことになる。何が良い生き方かを政府が決め、教師が子どもを裁くことになれば、憲法19条の思想良心の自由にも抵触するのではないか」は正論。道徳教育で「いじめ」なくなるやうな浅はかな発想が晋三の教育再生実行会議の提言だが内藤朝雄(明大)は、皆との同調が強く求められる環境では、子どもの内面の善悪の評価で寧ろ「悪い」とされた子へのいじめが正当化されたりしないか、と疑ふ。……以上、今日の日経。どうせなら児童の「愛国心」とか「忠誠心」とか、さういふ項目で堂々と評価して愛国教育でも徹底すれば晋三政府らしいのに。また文藝春秋十二月号では文藝評論家の浜崎洋介も晋三が「教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家をつくることだ。そして教育の再興は国家の任である」と『美しい国へ』で書いてゐること取り上げ「注意すべきは、子供の「志」は各人各様であり、それを「価値」のレベルで一元化することはできない」とし福田恆存の「保守派はその態度によつて人を納得させるべきであつて、イデオロギーによつて承服させるべきではないし、またそんなことは出来ぬはずである」と言ふ言葉から「この「けじめ」が弁えられなくなった時、「保守派」は、むしろ「イデオロギー」をかざす「革新派」に煮てしまうことを知るべきである」と指摘。晋三がすでに保守派などではなくイデオロギーかざす平成維新の革新派であることは明らかなのだが。むしろアタシなど自分がいかに保守派か、と思ふばかり。