富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

藤野可織「爪と目」

fookpaktsuen2013-08-14

陰暦七月初八。深夜に台風は八號警報に。未明に嵐のやうな風雨となり早朝には大雨もあつたが隠定。それでも警報発令中で本日は朝から自宅待機。彼方のマンション屋上に設けられたレヂャー用テントが昨晩はかなり風に煽られてゐたが今朝見ると飛んで無くなつてゐる。ネット速度がかなり遅々とするのは皆さんマンションで自宅待機でネット見てゐるからなのかしら。先日、実家から運んできた色紙と短冊を額にかける。何気なく「鮎」の書き手を見たら青邨と読め落款も確かめたら前田青邨。今までまったく気づかず。「蟻」の短冊は鷹尾祥風といふ水戸の日本画家。午後二時前後に台風警報のシグナルが8から3になる、と事前予告あり三號になると「すわ出社」と突然の通勤ラッシュになるので陋宅の窓から見下ろすとミニバスは已に動いてゐるやうで13:40に陋宅出てミニバスに乗るとラジオから警報降格8→3の報せ。北角碼頭で14時定刻の63系統のバスに乗る。八號警報だと地下鉄の間引き運行除き交通機関が止まつてゐるのに警報緩和で一斉に動き出すのが(天文台の予告もきちんとしてきたからだが)じつに見事、とかね/\思つてゐたが蘋果日報で九龍巴士の運転手たちが警報解除に向け八號警報のなか出勤し九龍湾の車庫近くのレストランで一同に会しての飲茶での隨時候命とは……(写真)敬服。早晩に久々にジムに寄ると今日は突然の休日になつてしまつた人たちで盛況。晩に豚の排骨肉と冬瓜の鍋。食後、貧血気味で目眩あり二更向へる前に早寝。文藝春秋九月号読む。
芥川賞受賞の藤野可織「爪と目」を数頁だけ読む。もと/\つまらない小説嫌ひ、小説読まなくても生きていけるので芥川賞はほんと苦手。小説の書き出しが

はじめてあなたと関係を持った日、帰り際になって父は「きみとは結婚できない」と言った。あなたは驚いて「はあ」と返した。

……とこの一文だけでアタシは「わからない」。二人称小説は面倒だが冒頭の「はじめてあなたと関係を持った」で「私があなたと」だと思ひ、「父」が出てくるので「あなた」が私の家でも来たのか、と想像するが父が「きみとは結婚できない」と言ふので、ここで「えっ……」と、父が「あなた」と結婚できない?、この「あなた」は私とだけでなく父とも関係があったのか、しかも女性作家の二人称小説で文体も女性っぽいので、つまり自分の彼と父が同性愛だったのか、なんて小説だ、これはもしかすると筒井康隆よりもはちゃめちゃで面白いのか!とまで考へたが、すべて誤解。本当に困つたものだが、冒頭の一文は
「あなたが父と」はじめて関係を持った日、帰り際になって父は「きみとは結婚できない」と言った。あなたは驚いて「はあ」と返した。
なのである。わざと読者誤解させたかつたのか←そんなはずもない、たゞ文章にかういふ曖昧さがあるだけか……センスない私にはまったくわからない。
▼晋三宣ふ集団的自衛権につき十二日のNステで小泉〜麻生まで官房副長官補(安保政策担当)の柳沢協二氏が「今は、集団的自衛権の行使を認める必要性はない」と発言したさうで、これは96条改憲での改憲派小林節先生の発言同様にかなり影響力あり(「世に倦む日々」こちらより)。やはり憲法改正集団的自衛権となると、それなりに抑止力的なものが働くのかしら。原発もさうあつてもらひたい。抑止力といへば文藝春秋九月号もヘン。巻頭でいきなり中野剛志「安倍首相よ、新自由主義に反逆せよ」と新自由主義批判、中国もバブルと格差拡大で新自由主義の最大の犠牲者、日米同盟空洞化を挙げ憲法改正急ぐな、と。まあ常識的な指摘だが「文藝春秋だと思ふと」画期的。しかも、いつも誰彼言ひたい放題なのに、この記事に限り(本稿は筆者個人の見解です)と断りつき(笑)。菊池寛文藝春秋の社論ではない、と。さう言はれると余計さう思へるから。それに続き「安倍長期政権への公開質問状」で櫻井よしこ中西輝政は親衛隊的だが、河野太郎古市憲寿松本憲一、保阪正康鈴木邦男小林節らに苦言まで呈させ更に中曽根大勲位がロンヤス時代回顧のおまけつき。文藝春秋が晋三から距離を置いてゐるのは何故かしら。何かバイアスがかかつてゐない? 信報八月十三日の社説は「亢奮刺激效力減 安倍神話受考驗」
形勢演變至今,「安倍神話」正面臨巨大考驗。央行貨幣政策通過資產傳導機制刺激經濟,對企業產生紒加投資的「托賓Q效應」,看來成效也有限。如此形勢,不排除央行在下半年加大貨幣寛鬆的力度,但這樣一來,「安倍經濟學」失敗對國內外的衝擊,後果更為嚴重。
國基會日前便警告,日本如果不能重新平衡經濟紒長的來源,加強消費對經濟的拉動作用,很可能導致國內劇烈而持久的紒長放緩。如今二季度紒速放緩,缺乏結構改革的及時支撐,「安倍經濟學」的亢奮性刺激效力明顯遞減,也使政策失敗風險有加速發酵之憂。
と晋三アベノミクスへの警告。日経さんも同じ経済紙ならこれくらゐの冷静な指摘ができればいゝのだが。経済紙=好景気になるやう市場を促す新聞と勘違ひしてゐるから。経済紙といへばFT紙の“A gaffe-prone Japan is a danger to peace in Asia”(Gideon Rachmanによる12日の評論、こちら)。
Japan’s public diplomacy hovers between the ludicrous and the sinister. In recent months, the country has specialised in foreign policy gaffes that seem designed to give maximum offence to its Asian neighbours while causing maximum embarrassment to its western allies.
と晋三をもはや迷惑者扱ひ。その晋三を囃す日本に対する大きな失望感が“gaffe”である。こゝまで書かれてゐることすら知らぬは日本ばかり。それでもこれだけ囲ひこまれて晋三はこのまゝ萎えてくれるのかしら。アベノミクスにもかゝはるネタだが経済紙ではないが紐育時報(十三日)で経済学者のPaul Krugman教授の“Milton Friedman, unperson”(こちら)も面白い。
Now, I don’t want to put Friedman on a pedestal. In fact, I’d argue that the experience of the past 15 years, first in Japan and now across the Western world, shows that Keynes was right and Friedman was wrong about the ability of unaided monetary policy to fight depressions. The truth is that we Americans need a more activist government than Friedman was willing to countenance.
池澤夏樹氏の「名誉ある敗北」朝日新聞八月七日(こちら

福島第一の崩壊は東京電力という会社にとって究極の恥であったはずだ。しかし東電はもちろん、一蓮托生でやってきた財界も自民党も恬然として恥じることを知らない。今から原発を海外に売るのは真珠湾の作戦計画を売るようなものだ。当初は勝っているように見えても最後には放射性廃棄物の山に埋もれて負ける。これからの衰退の中で名誉ある敗北を認めることができるだろうか。安倍政権のふるまいと選挙の結果を見て思うのは、我々があまりにも欺瞞に慣れてしまったということである。

▼最近アタシが香港の政治的状況に言及せぬのは測量梁&土共対反対派の対立がもはや泥仕合的様相となつてゐるから。行政長官と立法會の全面普選実施要求はわかるが、そこから「佔領中環」の動きが出てきたあたり、愛国教育反対の中学生らが反政府運動となつたあたりから、アタシは着いていけない。十三日の林行止專欄「正邪蛙噪亂視聽 眾情激盪難太平」(こちら)で林行止氏の言及に溜飲下がる思ひ。
筆者並不完全同意「佔中」團隊在「真」普選方面的見解,然而,這類「思想執拗」,不會打亂筆者對其發起人力爭良好選舉制度的摯誠立意,硬說他們存心搞亂香港,是邪惡力量,那明顯是污衊。「出聲」一方有若干學者對政改的看法,筆者認為有見地,值得思考、因應,甚至吸納;可是,他們如此聯合起來以「正方」自居攻擊「邪方」,那是有失公道亦予人以不講理的印象。

文藝春秋 2013年 09月号 [雑誌]

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